荒事 その③ (VSマージスケルトンその弐)
一進一退のその訳は
キィーロが持って来ていた剣を構えなおす。
「竜・迫・剣。」そう呟くと自らの竜気を剣に纏わせていく。
魔法剣とは異なり竜の気を纏わせた剣技は竜族固有のスキル扱いではあるが
MPを使用する事には変わらない。
私の尻尾剣での斬撃と同じ様な理屈で振るわれるので剣の硬度や切れ味を任意で
調整出来得るというのがあのスキルの最大の強みではあるがな。
その竜気で覆われた剣と前衛の2体のスケルトン達の剣がキンキンと何度も打合わされる。
全力でやれば前衛の2体は簡単に纏めてバラバラに出来そうなもんなんじゃが
その後方では障壁壊しを狙っていた様に詠唱していたマージスケルトンが術式を組み替えなおし中。
(元々誘い出す為の偽の詠唱じゃろうが、本式の物でもあるのでいちいち対象を変更しないと
暴発して自爆の可能性もあるのだからこれはしょうがないんじゃよな。)
下手に突っ込んだらあ奴らなら平然と自爆するじゃろうしキィーロもうっかり踏み込めないのだ。
因みに彼らが火系の呪文を使っても船自体には何ら影響を及ぼさない。
同調魔力とでもいうのか、効果は発揮するのにダメージの範囲が限定されるんじゃと。
これは普通の迷宮でも同じ事。よっぽど突飛なのや全力での詠唱のでもなければ
当たった周囲が焦げる程度で時間が立てばその焦げも消えていく。
対象限定の『自己再生』みたいなもんが働いているらしいからがの。
「ギャルオゥ!」キィーロの退避行動の合間を縫ってミラの火炎球ブレスがスケルトンを襲う。
ボフン!盾を構えつつ剣を振り下ろしたばっかの体制のそ奴にブレスが直撃した。
リーナがぐぬぬぬ。という顔付きでその当たったスケルトンをみやる。
当たった衝撃で一瞬バラけそうになったそ奴が次の瞬間には元通りの形態に戻ったからじゃな。
「やっぱ火力抑えてると一撃じゃ無理だわ・・・」と悔しそう。
そりゃまぁ相手の腹ん中みたいな所で最大火力出して一緒に心中とか洒落にならんからのぅ・・・
その両脇ではアンヌとミィナがそれぞれ得物を構えてる。今回彼女らの武器は棘付きこん棒じゃ。
ブスブスと小さい煙を上げているのとは別なスケルトンがキィーロの回避に誘われて
前につんのめって来た所を3人がかりで凹ってる。
ドカバシゲシバキ!!何か『ギャーー!?』とか涙目のスケルトンの悲鳴が背後から
聞こえてくる気がするけど ワタシハ シラナイ キイテナイ・・・
「!火炎呪文が来るぞ!!回避するんだ!」キィーロが冷静に叫ぶ。
どうやらマージスケルトンが術式を詠唱し終わったらしく、ゴゥ!と一抱えもありそうな火炎球が
彼女ら目掛けて放たれたがパッと散る彼女らの足元で復元しようともがいてたスケルトンに着弾する。
「ドッコーン!」ちょっと派手な音と共にスケルトンが砕け散り霞となって四散した。
(おぃおぃ。やっぱし味方も敵も見境い無しなのかの。)
ムフン。と何故か誇らしげに胸を張るマージスケルトンに突っ込みを入れつつ次の手を考える。
残り1体となったとはいえ前衛のスケルトンをまず先にぶっ倒さないとな。
向こうもこちらも集団戦。うっかり踏み込んだせいでPT全滅なんて洒落になりませんでしょうしね。まだ戦闘シーンは続きます。




