荒事 その②(VSマージスケルトン)
誘い出される様です
リーナが私達に船の中への侵入を進めた理由には一つの理由がある。
それは入口付近に必ずある魔物除けの効果を利用する為である。
他のクラスの船舶ならいざ知れず、ガレオンタイプの船ともなれば、
地上にある村や街同様に要所要所に魔物除けの刻印やら術式が組まれているのだ。
だから船外からの侵入口である入口兼出口付近には魔物は近付かない。
本来は生者を護る為のそれらの術式は船内に発生した魔物を外部に逃さない為の
魔術的な蓋となっている。
(だから甲板にいた連中はそこに生じた隙間等から滲み出る方法位しか取れないんじゃろうな。)
「カタカタカタ・・・。」
何処からともなく先人達の遺産に守られし乱入者達をあざ笑うかの様に
彼らの『笑い声』が聞こえてくる。
地上の物とは違い簡易な術式の障壁では有効範囲もたかが知れているのだ。
有効範囲から出た瞬間に彼らはまた立ち塞がるだろう。その仮の住処を守る為に。
一息付きつつミィナ達が装備を整えなおしていく。甲板に居た時は素手に近かったからのぅ。
「ギギギギギ。」耳障りな音と共に暗がりから死者がのっそりと
姿を現し魔物除けの有効範囲と思われるより外側の所にピタリ。と立ち止まった。
ボロボロなフードを纏ったそれは折れた杖を握りしめている。
「マージスケルトン・・・。」アンヌやミィナ達が緊張した面持ちで身構える。
それはかつてこの船に乗っていたであろう魔術師のなれの果て。
呪文を唱えるでもなく突っ立っているソレは障壁の有効範囲内に居る私達を
窪んだ眼孔で見回していた様であったが、やがて地の底から響く様な『声』で詠唱を始めた。
(あれは・・・火炎系かの?いずれにせよ、ここから退かなければ障壁の発生源たる
術式が破壊されかねない。やむをえんが向こうの策に乗るしか無いようじゃな。)
「ちぃっ!」真っ先にマージスケルトンに襲い掛かろうとしたキィーロの前に
脇から出てきたスケルトンが2体剣を振るいつつ立ち塞がった。今度のは剣だけでなく盾も持っている。
彼らのぼろっちぃ剣なら幾ら魔力を纏わせていたとしても竜人なら蚊に刺された程にも
ならんじゃろうに律儀にも斬撃を避けたのは多分『付与』効果を恐れたんじゃろう。
ちなみにこのPT、正式な回復師がおらんかったりする。
決してミィナ達の根回しが悪かったりした訳では無い。
召喚師な卵な連中が3人も寄り集まってるせいなのかほぼ不要なんじゃよなぁ。
付与魔法の類いは持ってなくてもミラの火炎玉ブレスでほぼ事足りるじゃろうしな。
船内を火の海にする訳にはいかんが向こうも避けにくいのは確か。
アンヌは渋るじゃろうがかつて豹な男子のケインがやってみせた様に
協力属性剣で戦う事も可能じゃろうがあれはあくまで切り札の一つと考えていた方が良いじゃろな。
さて、こやつらはどうしてくれようか。
障壁とかって入口付近だけでなくて全体を覆えばいいんじゃない?とか思われるかも知れませんが動態状態にあった船とかでは出入り口付近しか覆えないという事で。限られた空間ならブロック単位に区切った方が何かあった時に対処しやすいよね?という理念みたいなものが働いた結果でもあります。




