村のクエスト凱旋所にて
村のクエスト凱旋所のおじさん視点です
今日は見慣れない旅姿の女の子が村のクエスト凱旋所にやって来た。
凱旋所に入って来た時は大分草臥れたマントを羽織っていたので直ぐには分からなかったが
顔が見える様に肩まで脱いだフード部から現れた幼めの女の子は焦げ耳の犬ヒトの様である。
タビーさんち所に来た留学生の子かな?とも思ったけど、まだ夏だし時期的にも早い。
しかも何か幼すぎる感じもする。将来学びに来る所へ下見に来たのかな?
それにしても良く村か町か何かから遠出の許可が出たなぁ?とは思ったけれども
成長度合いは個人差があるしあえて口には出さないでおく。
クエストの凱旋所に来たという事は旅費に窮したか単なる迷子の可能性も捨て切れないし。
「初めまして。旅の途中でちょっとこの村に立ち寄った者なのですが、
こちらで倒した魔物とかは買い取って貰えますかの?」
とその子はややはにかみながら尋ねて来た。・・・何か語尾がおかしい気もするからやっぱり留学生か?
「おや、お嬢ちゃん、何処から来たか知らんが、何か身分を証明する物はないかね?」
と何時もの様に営業スマイルで一応聞いてみる。
「まぁ無くても買い取りは出来るけど、ちょっと買取価格が下がっちゃうんだ。」
一瞬困った様な顔をしたその子は懐をゴソガサやっていたが、
「すみません、これでも証明になりますですかの?」と魔力カードを引っ張り出した。
あれ。この魔力カード簡易版か?確か何処かで見た様な・・・
「ん。どれどれ、ちょっと貸してごらん。」と手を出すと案外あっさりと渡して寄越す。
拾ったり奪ったりして不正に使おうとする者ならば何食わぬ顔をしていてもおかしくはない。
しかし一般には知られていないが魔力カードには持ち主以外が使う様な事態に備えて
本人測定用の機能が仕込まれている。これを店内の魔力カード用水晶に翳すと・・・
龍凰学園の紋章とカードを持っていた子がこのカードの持ち主である事を示す青い色が灯った。
『なーんだ、これ学園で使われてる簡易版の魔力カードだったのか。見た覚えがある筈だよ。
幼く見えても学生さんだったんだな。それなら一安心だな』
身なりといい、多分何かで正式な魔力カードを無くしてしまい、再発行して貰う為に苦労している
苦学生の一人なのだろうと結論付けた。意外と高いからなぁ、魔力カード。
因みにこれが拾った物だったり貸し出されたものだと黄色、奪った物であれば赤が灯る。
もし正式な持ち主が死んでいる場合には手続きをしてない限り点灯しないのですぐ分かる仕組みだ。
「カードは会計が終わるまで預からせて貰うよ?で、今日は何を持って来てくれたのかな?」
とにこやかに応対する事に。
街から来たばかりではそんなに獲物は期待しないでおこう。
多分隙を付いて持ち物を売りに来たソラですが早々に犬耳扱いです。そりゃまぁ狐ヒトの女の子がソロで獲物売りに来る事なんてそうそうない事でしょうけどね。




