3/11
2-1
今となっては昔のことになりますが、あるお方に歌の詠み方を指導してくれと頼まれましたので、私のわずかばかりの知識をもって書いたことがございました。
と言ってもたいしたことなど書いてはおりません。
思うままに私見を書き綴ったような見苦しきものでございます。
※
和歌の道というのは簡単なようでも意外と奥深いもので、それを極めることのできる人など幾人もいないことでしょう。
そのうちの一人、昔、貫之と言う人は歌の心に通じていました。
その詠む歌は素晴らしく、素直な言葉の力にてその面白き様を伝え、餘情妖艷(回りくどい言い回しや過剰な装飾表現)な歌を詠みませんでした。