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プロローグ
両親が私を産んでくれた事は感謝している。
子供は自分を産んでくれる親を選ぶ事は出来ない。
そのために苦しみ、問題を抱え、時には悲劇を生む親子の話はTVのニュースでよく聞く。
でも私はこの家に、この家族に産まれてきてよかったと思っている。私はこの家と家族が大好きだ。
ただ一点を除けば――。
世の中に完全なものなんてないことは知っている。しかし、唯一と言ってもいい欠点をこんな形で与えるなんて、神様はなんて意地悪なんだろう。
私が家族に対する唯一の不満点であり許せないところ――。それは私にこの名前をつけたことである。
「次はー、御徒町ー御徒町。都営大江戸線はお乗換えです」
これが私の名前だ。