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過ち



『ずっと、好きだったんだよ?』

『……』

『私じゃ、ダメ?お姉ちゃんよりも、私!!』


 それは、結婚式前夜。

 独身最後にハメ外す、バチェラーパーティーを楽しんでいる彼をムリヤリ呼び出した。

 私の切羽詰った様子に、彼は慌てて駆けつけてきた。

 最後の足掻き。

 幼なじみだった彼への、一途で、なけなしな純情で、思いの丈をぶつけた。

 けれど、


『ゴメン、』


 彼はそう言って深々と頭を下げた。

 そう言われるのは解っていた。

 だから、謝れるのが、辛かった。

 なのに、


『一度だけで、いいから……』


 私は、彼を誘惑した。

 彼は初めての私を壊れ物でも扱うかのように優しくしてくれた。

 それは甘美で、けれど……。


『……っあ』

『ミホ……』


 どこまでも切ない、優しさだった。

 翌日、私は笑顔で二人を祝福した。

 けれど、心では、泣いていた。

 報われなかった、一途な初恋。

 私はそれから一週間後、実家から出て行った。



     ◇



「……んっ」


 気がついたら、ベッドの中にいた。

 気だるい体を身じろぎさせて、ベッド脇の棚にあるデジタル時計に手を伸ばそうとしたら、


「っ!」


 私の腹部を圧迫する感触に、思わず驚きの声が出そうになった。

 上手く働かない頭で整理できず、咄嗟に頭を後ろに向けたら、


「……」


 静かに寝息をたてる、義兄の姿。

 上体を少し起こしているから浮き上がった掛け布団の隙間からのぞくのは、一糸纏わぬ体と、私を抱きとめる腕。

 こみ上げてきたのは、


「ふっ……」


 かつて味わった、途方もない切なさ。

 時や、状況は違えど、


「う、ぁっ……」


 流す涙の意味は同じだった。



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