表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

理由




 それは突然の交通事故だった。

 大型トラックが、歩道を歩く姉に向かって突っ込んできたとの事。

 道路にブレーキ跡がない事から、運転手が居眠りしていたことがわかった。

 姉は、即死。

 状態は、とても口に出来ないと、義兄はソファに深く腰を降ろして頭を抱えて呟いた。

 私はキッチンのコンロにかけていたケルトが沸く音に気付いて、静かに立ち上がる。

 私が離れるのに気付いたのか、彼は私がマグカップに継いだ緑茶を持って戻るまでは俯いたまま黙っていた。


「熱いから、ゆっくり飲んで」

「……」


 私が彼の前にある白いローテーブルに膝ついてマグカップを置くと、それをちらりと見て「ありがと」と呟いた。


「ネネは?」

「……実家に預けてきた。お義父さんとお義母さんは、」

「寝込んでるでしょ。父さん達、姉さん溺愛してたから」


 私は苦笑して、膝立てていた脚を崩して、フローリングの上に腰を降ろした。

 実家とは疎遠状態。

 ある出来事をきっかけに、私は単身家を飛び出して以来、ずっと1人で生きていた。

 その出来事とは、


「それでここには……!?」

「……」

「義兄さんっ!!」


 突然身を乗り出して、私の体を抱きすくめる。

 私は咄嗟に押しのけようと両手で必死に胸板を押すも、


「やだっ、放し……」


 そこは男、弱っていても、かなわない。

 私は俯いてなけなしの力で抵抗したが、


「……っ」

「っ!」


 ムリだ。


「ミホ……っ」


 そんな泣き声で、名前呼ばれたら、


「……」

「……んっ」


 拒むなんて、できないよ……。

 私はじっとただ見つめてくる義兄の、


「んっ、ふぅっ」


 震える唇を黙って受け入れた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ