66:お茶会対策会議
本日は三話更新となります。
こちらは二話目です。
ご注意ください。
「お疲れ様でございます。ミーメ様、ヘルムス様」
「準備ありがとうございます。グレイシア様」
「グレイシア嬢もお疲れ様です」
ワタシとヘルムス様が王城内にあるワタシの部屋へ戻ってくると、そこでは既にグレイシア様の手によってお茶会の準備が整えられていた。
その事に礼を言いつつ、ワタシとヘルムス様は着席。
グレイシア様も着席して、茶を一口飲んでから話が始まる事になった。
「さて、それでは近日開催される正妃様、側妃様連名での主催となるお茶会についての対策会議。開始でございます」
「はい」
どう考えても大変緊張する事が決定している茶会についての会議が。
「まず初めに。今回の茶会の目的ですが、王城側としては様々な目的を持っての開催となります」
「ワタシとの顔合わせ以外にも目的がある。と言う事ですか」
「その通りです。ミーメ様の人となりを知りたいと言う正妃様方の希望もございますし、ミーメ様以外に招かれている方と話し合うための場を設けたいと言うのもございます」
「なるほど」
当然と言えば当然なのかもしれないが。
貴族が開くお茶会と言うのは、単純にお茶とお菓子とお喋りを楽しむだけではなく、情報収集の場であったり、夫が進めている事業を広めたり調整する場であったり、様々な意図と目的を持って開かれるものであるらしい。
「ですが、王城は王城。正妃様は正妃様。ミーメ様はミーメ様と言う事で、ミーメ様がご自身の目的以外を気にされる必要は現状ではございません。ミーメ様は礼を失さず、適度に相槌を打ち、約束を結ばず、無難に過ごされれば、それで十分でございます」
「そうなのですか? ヘルムス様」
「私もグレイシア嬢の言う通りだと思います。ミーメ嬢にとって今回のお茶会は、初めての公式の場でのお茶会になります。無理をする必要は何処にもないでしょう。今後親しく付き合う方を見定めようにも、今回は小規模なもので、人数が足りませんし」
「なるほど」
今回のワタシは情報収集される側の立場である。
なので、グレイシア様の言う通りに無難に過ごせばいいらしい。
それで、相手の方から勝手に評価してくれるようだ。
で、評価が低ければ次はもう呼ばれないし、評価が高ければまた呼んでもらえるようになる、と。
「まあ、あの方たちがミーメ様を付き合う価値無しと判断する可能性は天地がひっくり返ってもございませんが」
「同感です。正妃殿下たちはミーメ嬢の秘密こそ知りませんが、十代前半で第二属性に至ったのは誰の目にも明らか。そんな人物の重要性を理解できない人間は今回のお茶会には居ないでしょう」
「はぁ。そうなのですか?」
ただ、グレイシア様とヘルムス様に言わせれば、評価が低くなることは既にあり得ないらしい。
本当にお茶会の参加者としてあり得ない行動をしなければ、問題ないと言うのは……過分な評価ではないかと思えてしまうな。
「そう言えば小規模と言っていましたが、具体的にはどなたが参加されるのですか?」
「わたくしが調べた限りでは……正妃であるマリーグレー様、側妃であるクローバ様、宮廷魔術師長の妻でもあるユフィール様、わたくし、ミーメ様、後は宰相夫人に、三公爵家の王都駐在官の夫人。以上でございます。仮に飛び入りでの参加があっても、参加者のどなたかのお子様くらいなものでしょう」
「なるほ……ん?」
ワタシはグレイシア様の言葉を聞きつつ、指折りして人数を数える。
合計で九人。これがお茶会として小規模であるかどうかについては、知識が足りないのでワタシには分からない。
ただ、一つ気付いてしまったことがある。
「あの、このお茶会。一般的に見て、錚々たる身分の方々が参加される、王国内最高峰のお茶会。と言うものなのでは?」
参加者がヤバい。
王族か、公爵か、武か文のトップしか居ない気がする。
ワタシとグレイシア様だけ浮いてしまっている気がする。
「いいえ。規模が小規模ですし、公爵夫人ではなく王都駐在官の夫人ですので、最高峰ではございません」
「そう……」
「王国上層部の代理人が一通り揃っていると言う事で、内々で話し合うにはとても都合が良い場である事は否定いたしませんが」
「ひゅっ」
そして、このヤバい場を利用して、上層部での取り決めは先んじて色々と進むらしい。
なんかこう、高位貴族だからこそのヤバさを感じる。
「ご安心くださいミーメ様。此度の場において、最も身分が低いのは間違いなくわたくしですので。婚約者も居ない、ただの宮廷魔術師が居るのですから、ヘルムス様と婚約を結ばれている上に実はトリニティアイである宮廷魔術師のミーメ様が居る事は何もおかしな事ではありません」
「えーっと、その……御迷惑をおかけいたします」
「いえ。お構いなくでございます。それがわたくしの役目でございますので」
ワタシはグレイシア様に頭を下げる。
グレイシア様が参加をするのは、ワタシをサポートする為であり、本来なら参加する必要はなかったはず。
なので、少なからず迷惑をかけている事になると思って頭を下げたのだが、気にしなくていいと言われてしまった。
うん、グレイシア様に迷惑をかけないためにも、お茶会はしっかりとこなそうと思う。
なおこれは余談となるが。
ワタシがトリニティアイである事を公表している場合、主催は王家のままであるが、一番にもてなされる人間はワタシになってしまうらしい。
トリニティアイの権威と言うのはそれほどに強力なので……。
うん、やっぱり出来る限り秘匿する方向でいいと思う。
「さて、お茶会そのものの過ごし方については先に述べた通りでございますし、礼儀作法については日頃学んでいただいているので問題はございませんが。お茶会に参加するに当たっては他にも気にする事がございます」
「はい」
話を続けよう。
今回のお茶会は参加者を見て貰えれば分かる通り、男子禁制のお茶会となる。
なので、ヘルムス様ではなくグレイシア様がワタシを手助けしてくれるし、王城が用意する使用人たちも全員メイドとなる予定だそうだ。
そこについては既に分かっている事なので問題ない。
「衣装ですね」
「その通りでございます。とは言え、こちらにつきましては……」
「ええ。私の方で正妃様の要望に沿うような物を用意してありますので、安心してください」
「はい。ワタシも確認してあります」
「ようございます」
衣装についても問題は無い。
先日のヘルムス様とのデートと言う名の仕事の際に測定してもらい、準備を始めた衣装については、その後も調整を重ねて、無事に完成したのを確認している。
装飾品についても同様だ。
「後は常駐の魔術や魔道具についてですが……。ミーメ様が本気で隠蔽されれば、誰も見抜けませんので、これは気にしても仕方がない事でございますね」
「一応、解除できるものは解除しますし、魔道具の所持も控えるつもりですが……」
「それで大丈夫でございます」
魔術や魔道具については、お茶会なので不穏な魔術や魔道具は控えるのが当然の事となる。
具体的に言えば、最低限の防御と解毒の魔道具以外は持ち込まないのがマナーであるらしい。
まあ、これについてはグレイシア様の言う通り、ワタシがその気になってしまえば、どうとでもなってしまうのだけど。
もっと言えば、防御も解毒も自前の常駐魔術ですら一般的には規格外の物なので……はい。
うん、バレないようにきちんと隠しておこうか。
「最後に手土産についてでございます」
「初めて会う方とのお茶会なら必須。との事でしたね」
「その通りでございます」
最後に手土産についてだが……。
正直なところ、これが一番難しい話となる。
なにせだ。
「グロリベス森林深層に生息する魔物の肉では当然駄目ですよね」
「勿論駄目でございます」
「お茶会ですからねぇ」
ワタシの能力を最も簡単に示せるであろう、魔物の肉を持っていくのでは駄目なのだから。
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