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トリニティアイ -転生平民魔術師の王城勤務-  作者: 栗木下
3:第二属性の魔術師たち

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65/91

65:『闇軍の魔女』のお仕事

明けましておめでとうございます。

と言うわけで、本日は三話更新でございます。

こちらは一話目となります。

 ワタシことミーメ・アンカーズは転生者である。


 7歳の時に王都近くで魔物を狩る狩人として活動を始めた。

 そして早々に、ただ魔物を狩って肉を売るのではなく、その骨や肝から魔道具を作るようになった。

 12歳の時にいつものように魔道具を売ろうとしたら、公爵家の三男で年上かつ属性違いの魔術師に一週間だけ魔術を教える事になった。

 そして今は16歳。その一週間教えただけの人物の手によってワタシは王城に勤める事になり、あれよあれよと言う間に宮廷魔術師『闇軍の魔女』になると共に、自称弟子は婚約者になってしまった。


 自称弟子が婚約者になってしまったことは、まあ良いとして。

 ワタシが宮廷魔術師になって、早くも一月ほどの時間が経とうとしている。

 まだまだ仕事に慣れたとは言い難く、それどころか宮廷魔術師と言う地位の都合上、顔を出すべき場所が積み重なっていっているのが現状。

 ワタシが今居る場所も、そんな顔を出すべき場所の一つであった。


「デフォール男爵! 聞こえているか! 我が名は『焔槍の魔術師』ジャン・フォン・ベリンリン! 宮廷魔術師だ!!」

 と言うわけで、今現在。

 ワタシは王都の貴族街の中でも割と外れの方にある一軒家の前にて、ジャン様、ヘルムス様の二人と共に並んで立っていた。

 なお、ワタシの背後には兵士が何人も並んでいる。


「……。男爵にしては豪華な屋敷ですね」

「デフォール男爵は先代までは子爵でした。ただ、その先代が問題を起こして降格。けれど家の繋がりや生活水準は子爵の物を保とうとしていたようですね」

「だから犯罪を?」

「そのようです。一時の苦渋を飲めなかったのでしょう」

 鉄柵で出来た門の向こうには、男爵にしては広めの前庭とお金のかかった屋敷が広がっている。

 そんな屋敷のバルコニーから一人の男性が出て来る。

 その顔は明らかに怒り狂っている様子で、こちらの事を両の目で睨みつけてきている。


「デフォール男爵! 貴方には横領、贈収賄、背任、脱税、その他様々な嫌疑がかかっている! 大人しく我らに従い捕縛されるのであれば手荒な真似はしないが、そうでないのなら、相応の措置を取らせてもらおう!」

「黙れぇ! 何が宮廷魔術師だ! 所詮は普通の人より多少魔術が使えるだけの人間! そのような者が生粋の貴族である我がデフォール男爵家に指図しようなど、侮辱以外の何物でもないわ!!」

「デフォール男爵! 我々は陛下のご指示に従ってこの場に居るのだ! 捕縛の命令書にもこの通り、陛下の名が刻まれている! それを見てなお侮辱と申すのか! そうであれば、我々も手荒な手段を用いる他なくなるぞ!」

 ジャン様とデフォール男爵が言い争っている。

 いや、デフォール男爵が一方的に喚いていると言った方が実情としては正しそうか。


「ちなみにデフォール男爵の罪状には、希少素材倉庫の件、先日の私の誘拐事件への関与も含まれています。ヤーラカス子爵家との繋がりも昔からのものですね」

「つまり、真っ黒と言う事ですね」

「そう言う事になります」

 ヘルムス様とワタシは、そんな言い合いを眺めつつ、どんな家なのかの説明を受け続ける。


 なお、こうしてワタシたちが眺め、ジャン様が捕縛の為の手続きを踏んでいる中、デフォール男爵家の屋敷内でも少なくない動きが起きているのを、ワタシは属性感知の応用で捉えている。

 具体的に述べるのなら、屋敷の玄関ホールに武器らしきものを持った男たちが十数人集められていて、合図と共に屋敷の外に飛び出せるようにしている。


「ええい! かくなる上は力尽くよ! 者どもかかれぇ! こやつらをねじ伏せる事で、我が血路を切り開くのだ!」

「「「おおおおおぉぉぉぉぉっ!!」」」

 と言うわけで、暴漢、ゴロツキ、チンピラ……まあ、呼び名は何でもよいのだが、デフォール男爵の屋敷から前庭へと十数人の男が飛び出してくる。

 その手には斧、槍、剣、短剣と言った武器が握られており、革製の軽微な物だが防具も身に着けていて、一部に至っては魔術によって自己強化を施している者も居る。

 デフォール男爵も魔術による攻撃をワタシたちに加えるつもりなのだろう。水の球を幾つか自分の近くに浮かべている。


「ではミーメ嬢」

「頼んだわ。ミーメ嬢」

「分かりました。来い、闇人間ナイトメアバージョン」

「「「!?」」」

 そんなデフォール男爵とその部下たちに向けて、ワタシの足元から現れた闇人間たちが襲い掛かっていく。


「な、なんだこい……ふにゃ……」

「攻撃が効か……ねにゃ……」

「ば、化け物だ……げにゃ……」

 真正面から飛びかかり、斧や剣で叩かれようが、槍や短剣で刺されようが、気にした様子も見せずに反撃のパンチをデフォール男爵の部下の頭部に当てていく。

 ただそれだけで……それこそ指先が少し掠っただけでも、デフォール男爵の部下たちはその場で崩れ落ち、寝息を立て始める。

 その異様な姿に恐怖したデフォール男爵当人と部下の一部は慌てて逃げ出そうとするが、もう遅い。

 普通の人間をはるかに超える身体能力で闇人間は走り、跳び、そして頭部に優しくタッチするだけで、触れた相手を眠らせていく。

 こうして、デフォール男爵たちの制圧はあっけなく完了したのだった。


「ではこのまま屋内の制圧作業に入ります」

「おう。頼んだわ。いやー、ミーメ嬢が居ると俺っちは楽でいいわ」

「本当ですね。これなら私の役目は犯罪者たちを運ぶだけで済みそうです」

 そして、そのまま闇人間たちは壁をすり抜ける形で屋内へと侵入。

 家宰や使用人、夫人と言った、デフォール男爵家の関係者を次々に眠らせていくと共に、この後兵士たちが入る時に証拠集めが楽になるよう、屋敷内のあらゆる錠を外し、隠し通路や扉の類も明らかにしておく。

 『闇』、『人間』、『万能鍵』の三属性を相手に閉所で逃げ隠れする事など不可能であると、見せつけていく。


「ーーーーー~~~~~!?」

「うわなんだ!?」

「寝言!? いや、ビックリしたな……」

 と、ここで最初に眠らせた男が突如騒ぎ出したため、兵士たちによってすぐさま抑えられる。

 が、騒いだ男の目は瞑ったままであり、直ぐに寝息を立て始めている。

 つまりは眠ったままである。


「ところでミーメ嬢。眠った犯罪者が時々呻いているようですが、アレは?」

「今回の闇人間には、触れた相手を眠らせて悪夢を見せる効果を持たせてあるので、その作用だと思います。ちなみに森の中で大量の魔物に追われる夢を最低一時間は見る感じですね」

「……。素直に眠らせても良かったかもしれませんね」

「かもしれませんが、兵士の方々も眠った犯罪者をヘルムス様の船に突き立てるだけでは仕事の甲斐が無いかと思いまして」

「まあ、それはそうかもしれませんが」

 要するに、良くない夢を見せる事までワタシの魔術の範疇と言う事である。

 犯罪者相手なので、多少は消耗させておいた方が、後の取り調べも楽になる事だろう。


 ちなみに、ワタシの背後ではヘルムス様が作り出した、粘性を持った水によって構築された船に、両手両足を縛られた状態の犯罪者たちが、下半身が水の中へ埋まるように収容されていっている。

 その光景も、見る人によっては中々に悪夢的なものではないかと個人的には思うところだが……閑話休題。


「ただ今回は『闇軍の魔女』ミーメの仕事ぶりが王都の民の目に広く映る機会であったので、もう少し見た目を考えても良かったかな、と。そう思っただけです」

「なるほど。それはそうかもしれませんね。ただ今更ですし……ワタシはドラゴンを狩って宮廷魔術師になった女ですので、恐ろしい力を持っている事を見せつける方が先かと」

「そうですね。では今回はそう言う事にしておきましょうか」

 実のところ、この程度の人数相手なら宮廷魔術師なんて一人でも充分であった。

 なのにワタシとヘルムス様が付いてきたのは、王城の外にも宮廷魔術師『闇軍の魔女』ミーメの名と姿を知らしめるための王城側の策だった。

 こうする事で、ワタシとヘルムス様が婚約者である事をアピールしつつ、ワタシが宮廷魔術師に相応しい実力者である事も示し、王都の治安向上と綱紀粛正を図るそうだ。

 流石は王城と言ったところである。


「ジャン。後始末は頼んだぞ」

「おう。俺っちに任せておいてくれ」

「ではミーメ嬢。私と一緒に」

「はい。王城まで戻りましょうか」

 と言うわけで、屋敷内部に居た人間が一通りヘルムス様の船の中に収容されたことで、この場でのワタシとヘルムス様のお仕事は完了。

 この場をジャン様に任せて、ワタシたちは一足先に王城へと戻る事にした。


 出来る限り早急に話し合いたい仕事が他にもあるからである。

01/02誤字訂正

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― 新着の感想 ―
明けましておめでとうございます。本年も楽しみにしております。 この出オチ男爵、ここで仮に撃退できたとして、今後やっていけると思っていたのでしょうか… 対人戦闘および屋内制圧戦において、ミーメ嬢の属…
あけましておめでとうございます。今年も執筆が適度に進む平穏な環境でありますように。 ---- >王との治安向上と綱紀粛正を図るそうだ。 → 王都 かと思われます。 ---- お仕事ご苦労さまですと言…
あけましておめでとうございます。今年もよろしく、体調を崩さないように程度に頑張ってください。
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