第90話 ナナの村
十分途方に暮れた後俺は動くことにした。
このままこの部屋にいても餓死をするだけだし、本当現実? って嫌になる。
ゲームであれば別に何年も食べなくても死なないのになぁと。
「壊れたのは仕方がない。ぜええったいいに俺のせいじゃない。そもそも誰かが無理に使ったから壊れたのだ。正常に使えば壊れないはず」
知らないけどさ。
壊れた転移の門の欠片を投げ捨てる、部屋はやっぱり地下にあって階段を上がると大草原が広がっている。
「草」
思わず日本にいた頃のネット用語がでるぐらいの草原だ。
「たしか、この転移の扉は海を越えて帝国領……俺のいた王国領とは違い……違い……?」
本当は王国と帝国の違いがあるんだろうけど、基本的な違いがわらかない。
王国は古い体質があり次期王はやっぱり血縁。
帝国もそれは同じなきもするが絶対はない、実力があれば王にすらなれる。という弱肉強食な部分と自由差があるぐらいかな?
物語後半であれば試作型飛空艇ジークハルトを手に入れる事も出来る。
「ぐらいかな……まぁ俺にとっては記憶に入れるぐらいでいいとして師匠をどうやって見つけるかだ」
フェーン山脈で待つか、探しに行くか。
この世界で師匠を見つけるだなんて砂場で金平糖を探すようなものだ。帰ってくるとは思うが帰ってくる保証はない。
「きゃああああああああああ誰かあああああ」
少女の声が草原に響く。
草原から抜けると、踏みつぶされた道。
食べられてる馬。
足を怪我した濃い青髪の少女…………胸が少しあるから女の子だよな。これで男だったら俺はもうお手上げだ。
あと馬を食べているボブゴブリンが3体。
この世界にもゴブリンはちゃんといる。
俺が読んだ資料としては、好物はニンゲンの女。肉は上手いし子供を増やせる。
そうゴブリンにはメスがいない。
他種族のメスに色々して子供を作る。
「まぁ……大変だね」
俺が横眼で見て素通りしようとすると、後頭部に痛みが走った。
足元を見ると大きなクルミである。
お前はリスか! と少女をみると俺の顔を見てにらんでいる。
「た、助けてよ!」
俺だって助けてもいいよ。
「いや、普通の人間がボブゴブリンに勝てると思う?」
「ニシエの大草原から出て来た人間なんだもんこれぐらいいけるわよね!? 美少女がピーされる寸前なのよ!?」
「それだけあれば逃げれるだろうに……なんだったらボブゴブリンはもう食事終えて君に興味ないみたいだよ」
俺の忠告通りボブゴブリンは馬で満足して骨を口に入れては欠伸をしている。
それもあって別に助けなくてもいいかなって素通りしたのだ。
後……絶対の正義マンでもないしそれよりも今は次の村に行きたいかなぁって。
「で、でもピーされる!」
「いやボブゴブリンにだって好みあると思うよ」
俺の言葉が通じたのか、ボブゴブリンの3匹は少女を上から下になめるようにして首を振る。
いくらボブゴブリンでもお子様には興味ないらしい。
「ほら」
「あーもう! 何でもいいから倒してよ! 冒険者でしょ!!」
「それが冒険者でもないんだよなぁ」
「…………じゃぁなんなのよ」
「しいて言えば愛の異邦人」
決まった。
愛はもちろん師匠にかけて、異邦人は俺の事。
「だっさ」
………………酷い。
「ああ、そう。じゃっそういう事で俺はナナの村に行くから」
そこまで言われて助ける奴もいない。
「え! アタシそこに行く予定なの! 絶対に特だから助けてよ!」
「え、まじ?」
「まじのマジ! これでも鍛冶職人で出張で来てるのよ! ほら助手って事で待遇アップ確実!」
なぜ助手にされないといけない。
「ことわ……あれ。もしかして禁忌の職人メーリス?」
「うがああ! 何も禁忌何ておこしてませんっ!」
「ああ、そうか」
まだか。
のちに飛空艇開発の基礎を立ち上げ、その他にも魔石を使った銃や魔法使いでないのに魔法のような武器を開発することからそう呼ばれる女性である。
「仕方がない……『水竜』」
右手で簡易的な竜を書くようにする。
無詠唱でも出せなくはないが最近はこっちの方がイメージが付きやすく強さも増えた。
ネッシー型の水竜がでると長い首をグインと回す。
「ふえ…………ま、魔法使いなの!?」
「それが魔法使いってわけでも……愛の異邦人」
「それ、ださいわよ」
俺は水竜を消して歩き出す。
後に飛空艇は開発されるわけだから、どうせここでしなないだろ……いや死なないよね。
少し不安になると、背後から怒鳴り声と後頭部に何発も痛みが走る。
全部クルミでお前はリスか!
「助けてってばあ、かっこいい。そうかっこいいわよ! …………人によっては」
はぁ……仕方がない。
「一言多い。『水竜』」
もう一度水竜を出してボブゴブリンと戦わせた。
――
――――
大草原から出た道の端。
その端でメーリスが地面に吐しゃ物を出している。吐しゃ物とは可愛くいっただけでゲロだ。
「エロロロロロロロロロロロロ」
全部出し切ったのかハンカチで口を拭くと俺を見上げている。
「悪魔ね」
「ひどくない!?」
「だってあんなにグロイとか聞いてないわよ……」
先ほどの事を思い出す。
水竜はボブゴブリンを丸のみするとその中で溺死させようとした。
他の仲間が気付いた時には俺も戦闘態勢に入っている。
残った一人の首を切断できるが不安だったがアンジェからもらった剣で横一線したら飛んで行った。
何か叫ぶボブゴブリン。
ちらっと水竜たんのほうをみると……と。溶けてる!?
思った事と違って俺は驚いた。
その溶けかたがまだ何というかリアルで皮や骨など内臓もみえる。
残った1匹を見ると全力で首を振っている。
だろうな……俺も別に無駄な戦いはしたくはない。
俺はわざとらしく大きな声を出す。
「うおおおお!」
ビクっとしたボブゴブリンの足元にこけたふりして剣を刺した。
ちらっとボブゴブリンを見る……これ以上迷惑かける事がなければニゲロと口パクだ。
と、言う事があったわけだが。
そのグロイ部分を全部見ていたメーリスは胃の中の物を出していたのだ。
「出し切ったか……?」
「お、おかげ様でっ!」
「助けないほうがよかったか?」
「全然よ。こんな場所でボブゴブリンなんて流石帝国ね」
「あー共和国アシ出身だもんな」
「はえっ!? アタシ出身国いったっけ? 初対面……よね? それとも知らない間にファンが出来るぐらいに」
「………………」
うん、言ってないし聞いてない。
ゲームやっていればわかるんだしさぁ……共和国アシ出身って。
「方言がちょっとでてたかな」
「マジでっ!」
適当に言って乗り切る事にした。
「とにかく、この街道をいけばナナの村なんだな?」
「方言を指摘されると少し恥ずかしいわね……そうと思うわよ村で使う農具と武器を見て欲しいって冒険者ギルドからの依頼だし……それよりもさ」
急に色っぽい声を出してくる。
「何か食べ物ない?」
「無い」
「いや、冗談はよしてよ。近くの村から5日もかかるのよ、食べ物ぐらいあるでしょ。アタシのは馬と一緒に……意地悪しないでさ」
「意地悪じゃなくて本気でない……」
「まじ?」
「…………実は俺も食料を盗られて。村まであと何日だ」
「2日……」
まだそんなにあるのか!
やばいな。




