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負け悪役貴族に転生した俺は推しキャラである師匠を攻略したい  作者: えん@雑記


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第88話 その意地ぐらいは通らせてあげましょうか

 ザックを背負い急いで屋敷まで戻ったわけだが、トトが帰ってきてなかった。

 それよりもまずは、ザックの意識を覚醒させたほうがいいだろう。



「って事で師匠!」

「突然小僧を背負ってしてきたドアホウに親指を突き付けられてもなのじゃ。気絶なのじゃ?」



 気絶したザックを師匠に診せながら事の経緯を話す。

 ザックは客間のソファーに寝かされて師匠がその気道を確保したりして確認している。


 少しうらやましい。



「とりあえず俺がわるいんじゃなくて……」

「ほうなのじゃ」

「いきなりトトの事を嫌いって言ったザックがですね」

「ふむなのじゃ」

「で。俺はしょうがなく愛の鉄拳を」

「のじゃ」



 師匠ののじゃ3連発だ。



「…………はい。俺が悪いです」

「のじゃ、しかいっておらんのじゃ……わっかいなのじゃ。好きなトトのためにウソをついた」

「まぁ師匠は年食ってますもんね」

「本当ドアホウ、ワラワじゃなかったら殴り殺されるのじゃぞ」



 俺だって師匠じゃなかったら言わない。



「まぁ直ぐに目覚めるじゃろ」



 倒れているザックの見て師匠はそう言ってくれた。

 これで何があったら俺の責任だ……あぶないあぶない。



「で、師匠トトは何所に?」

「ワラワに聞いた所で……詳しい奴に聞いた方がいいじゃろな」



 てっきり屋敷に帰っていると思ったのに、いないようだ。

 様子を見に来ているメイドに聞いても知らないらしいし。



「おーい! ザック起きてくれー……トト場所を」



 俺はザックの顔をペチペチと叩く。

 


「ト……トト……トト!? オレ、オレは!?」

「あっ起きた」

「起こしたじゃろ」



 師匠の冷静な意見はとりあえず置いておく。



「っ!? ……トトはどこだ」



 実は寝たふりだったんじゃ? って思うほどすんなり起きたザックはあたりを見回す。

 屋敷の一室なのを確かめたのかトトの事を探しているが、当然いない。



「いや俺達も今来た所だし、まだいない。悲しい時にとかに隠れる場所とか場所知ってる?」

「……廃坑の奥だ」

「廃坑?」

「オレのミラーゴーレム……アレが出る場所は廃坑の奥がダンジョンと繋がっていて……オレが最初にゴーレムを操って2人で……」



 2人でナニを!

 そんな場所で幼馴染が2人間違いが起きないはずはない。



「将来を誓ったとかなのじゃ?」

「そ、それは……」

「ならあああああああああんんんんんんんんんんんんん」



 うわっ!?

 突然の叫び声に俺は心臓が飛び出るかと思った。

 客間の入り口にいるのは先ほどトトの居場所を聞いたメイドと、ディエ爺さん。

 ディエ爺さんの手にはカバンが握られていて聴診器などはみ出ている。



「あ、ディエ爺さん丁度よかった。トトの花婿見つかったわ」

「本人同士が好きであればよかったはずじゃの」



 俺と師匠が依頼を終えようとすると、ディエ爺さんは口をふがふがする。



「ならんならんならんならんのじゃ! ザックが忠実なのは当たり前、前領主様を殺すような事をした罪人を領主様の旦那にならん!!」

「じゃぁ、ワラワが前に推した雑貨屋のせがれにするのじゃ?」

「あんなもん豚と同じじゃ!」

「じゃぁ俺が紹介した、バーのママは?」

「そっちは女性!! …………それも多少はありであるがトト様に男性を」



 前に魔女みたいな人物ならいいな。っていってただろ!



「とにかく! ザックお前はここにいたまえ、このディエがトト様を救い出しますぞお。廃坑の小部屋……懐かしいですな!」



 ディエ爺さんはカバンを床に置いたまま廊下を走っていった。

 置いたカバンから大きな注射器などがみえ、浣〇プレイに使えそうだなってつい思ってしまう。

 俺はそれを持って空気を入れてははき出す運動を数回繰り返して手遊びする。



「さて……ザック行こうか」

「ど、どこに……」

「トトの場所」



 俺が立ち上がると師匠は座りなおした。



「まっそれがいいじゃろな。手はいるのじゃ?」

「ミラーゴーレムぐらいでしたら」

「じゃっ大丈夫じゃろな」



 師匠はサボる気だ。

 まぁ俺も少人数のほうがいいし、ザックを無理やり立たせた。



「オレは……」

「ザックよ、今頑張らないとワラワは本当に道具屋の豚をトトにくっつけるのじゃよ。アレの趣味はいたいけな少女を拘束するのが趣味と言っておったな」



 俺と趣味が合いそうだ。

 最も俺の場合はいたいけな師匠限定になるけど。



「あっ師匠、まだ何も言ってないのに杖出さないでもらます?」

「ん…………で、ザックよ」

「オレが行く」

「まっそれがいいよね。近道は?」

「ある」



 ――

 ――――



 俺とザックは館をでて森の中を走る。

 ザックが言うには廃坑の奥には地下ダンジョンと繋がって封鎖された場所があるのだと。

 封鎖されている一部の場所から入っては小さい頃にトトと遊んだ場所がある。


 ディエ爺さんによく怒られて連れ戻された。というのを手短に話してくれた。



「ディエさんは街はずれの廃坑出入り口から入ると思う、オレとトトはその手前の廃坑の入り口からよく……」



 トトが走るのを辞めたのは俺と師匠が襲われた森の近く。

 不自然に穴が開いている場所だった。



「ここ?」

「ああ……ここからはオレ一人で」



 ザックはそういうと廃坑の中へ消えていく。



「それは駄目でしょ」



 別に物語の主人公になったつもりはないが、元負け役悪役令息としての意地もある。

 どんな? と言われるとわからん……。



「ってかこのダンジョンのMAPなんて覚えてねえぞおお!!」



 最初から三差路。

 右はさらに2つに分かれていて先が見えない。

 左は直ぐに崩れていて先がない。



「ザーック!」



 叫んでみても反応がない。

 右に進むか。

 壁沿いに進めばいつかはゴールに……いやゴールなんてないのかこれ。



「トトーー!!」



 反応がない。



「うああああああザックうううう!」

「ぬおおおお! 領主様ああああ!」



 俺の耳に2人の悲鳴が聞こえた。

 必死で声の方向を確かめる。

 駄目だ、声が反響してまったくわからん。


 こんな事なら師匠連れてくればよかった……思わず帰るのも手なのか? と途方にくれる。

 ほら足にゴーレムだってまとわりつくし。


 俺の足に手のひらぐらいのゴーレムが当たった、俺はそれを足でける。

 紙をもったゴーレムは壁に当たるも起き上がり外に行こうとした。



「紙……?」



 チビゴーレムから紙をひったくると真っ赤な血の付いた紙だ。



「ザックか!?」



 チビゴーレムはパタパタと紙を取り戻そうとしている。



「俺を案内しろ!」



 チビゴーレムを離すとくるっと逆回転して廃坑の方へ戻っていく。

 ちょっとかわいいし、欲しい。

 めちゃくさ足の遅いチビゴーレムの後をついて行く。


 少し大きな広場につくと本棚やベッドがある。

 それに大きな穴がありザックが穴に顔を入れて手を伸ばしているのが見えた。



「ザック!」

「あ、あんたか!? 応援は間に合ったか」

「応援?」

「ああ、あの紙の文字は酒場のマスターに頼んだ緊急用の文字だ」



 あーあれって血文字だったのか。



「ええっと……俺一人」

「な、なんだと……」



 なんだと。を生で聞いてしまった。



「ザックううううう!!」

「ザック! 離すでないぞ!?」



 トトとディエ爺さんの声が聞こえた。

 ザックの手の先に2人が見えた。



 どういう流れは知らないが、どういう状況かは把握した。

 ザックの両手にトトとディエ爺さんがそれぞれ掴んでいる。

 ザックは持ち上げる力がない。

 大きな穴で場所は反対側。

 ザックはチビゴーレムを使って助けを呼んだ。


 俺はその紙を捨てた。



「ごめん!」

「うああああこのセクハラ魔人! なんでベル一人なんだよ!? あの姉さんならよかったのに」

「なんと! クロウベル様!? このトト様にセクハラですぞ!? ここから出たら覚えて置いてください!」

「よし。ザック! ディエ爺さんの手を離せ! 今ならコイツを落とせば全部丸く収まる!」



 ザックは信じられないものを見る目で俺を見て来た。



「ぬおおおおお死にたくないいいいい!」

「ザック!? いや私を離せ!? ディエは私の父の代わりになってくれた人だ」

「トト様!? ええいザック。このワシの手を離せ!」



 熱い展開だ。



「ほら、ザックディエ爺さんも手を離せって」



 ザックはまたも信じられないものを見る目で俺を見ている。



「で。出来るか……トト……すまない。オレはトトが好きだ……」

「ザック……私もだよ!」



 ディエ爺さんが空気をよんで黙る。



「ディエさん。オレを庇ってくれてありがとうございました」

「ザックよ……」

「そこのあんた! 2人を頼む!」



 ザックは思いっきり立ち上がった。

 その反動で2人は穴の淵からでると、ザックは力尽きたように穴に落ちて行った。



「ザックウウウウウウウ私も一緒にいいいい!」



 トトがせっかく助かったのにザックの体を掴んで一緒に落ちて行った。



「なっ! トト様ああああああ! ザックよおおおおおおお!!! ワシが悪かったあああ、ぬおおおおおおお!」



 ディエ爺さんは涙を流して地面を叩く。

 2人は死んだ。

 何とも後味の悪い話である。



「と、言うわけです師匠」



 背後にいた師匠にパコンっと頭を叩かれた。

 仕方がない。



「水球あああああああああああああああああ!!」



 俺は全力で叫んだ。

 何度も言うけど魔法はイメージと思う、師匠もそう言っていたし。

 俺がこうも魔法が上手いのは最初から魔法の形がわかるから。とも。


 穴いっぱいにウォーターボールを唱えたそりゃもう洪水ぐらいに。別にどんなに穴が開いていても集中豪雨以上に水をいれてやればいい。


 ほら地下街だって排水間に合わなくてたまったりするでしょ?

 抱き合った2人がげほげほと穴から流れて来た。

 師匠が2人の手をとり穴から助け出すと、俺も魔法を唱え終わる。先ほどまでの水がウソのように消えた。



 ぽかーんとした3人は俺と師匠を見て放心状態になっている。

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>ザックを肩車にして急いで屋敷まで戻ったわけだが、トトが帰ってきてなかった。 >「突然小僧を肩車してきたドアホウに親指を突き付けられてもなのじゃ。気絶なのじゃ?」 気絶した男性を律儀に?肩車して街中を…
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