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負け悪役貴族に転生した俺は推しキャラである師匠を攻略したい  作者: えん@雑記


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第82話 トト・トールは武人である

 森の中腹から少し手前に戻ると貴族用の馬車が沢山並んでいた。

 その中の1台に招かれて馬車に乗る。

 俺と師匠と爺さんの3人だ。


 他の馬車は空のようでその理由は魔物を運んでいた馬車と、なんでも腕のいい魔物使いがいるらしく、その手配により俺達を襲わせた。だってさ。



「なんで魔物に襲わせたんだ……」

「もちろん本物のメルギナス様かを確認するためです。大魔女メルギナス様はこれぐらいの魔物などゴミのようなものです。無事切り抜けられるのであれば本物と思いまして」



 無茶苦茶な。

 俺がそう思うのは、仮にだよ? 俺達が魔女じゃなかった一般冒険者の場合死んでいた。って、とこになるんだけど。

 師匠の方を見ると俺とは反対に機嫌はよさそうだ。



「面倒な事は全部自称弟子のドアホウに任せる……案外良い方法かもしれんのじゃ」

「メルギナス師匠……聞こえてますよっと」

「っと、ドアホウわざわざ名前で呼ぶなのじゃ。そこの老人よ、ワラワの事をどこで知ったか知らぬのじゃが、面倒事が起きる前にメルと呼べ」

「はっ! メルギナス様に従います」



 さっそく従ってないじゃん。

 さすがの師匠も呆れ顔だ。




「で爺さんの名前は?」

「はは! ディエと申します。かの有名な魔女メルギナス様……いえメル様のお弟子様であられるクロウベル様。この度は我が主君トト様の願いを聞いてくださるとして――」

「長い……」

「は?」

「そのトト様ってのがわからんけど、結婚? そんなの好きにすればいいじゃん」

「メルギナ……メル様の弟子のクロウベル様でしたな。メル様、クロウベル様は少しオツムのほうが弱いようで」



 酷い限りだ。

 面と向かって馬鹿と呼ばれるとは。

 依頼断っても良いんだけど、師匠が俺に振ったからなぁ。



「問題点を聞かせてくれ」

「それはトト様に会ってからのほうがいいでしょう」

「話にならん」



 実家にいたカール爺さんを思い出す。

 意地になったら何を言っても聞いてくれない。

 ゴールダンの領地に入ったのだろう、馬車や人が増えて来た。


 俺の記憶ではゴールダンは特に変哲もない大型都市だ。

 もちろん小さいクエストはあるし、近くにレア素材が取れるダンジョンもあるがこれといって特徴がない。


 武器防具も聖都タルタンと代り映えがしないし、周りの雑魚敵もちょっと強くなったかな? 程度。


 俺が住んでいた『フユーン』と違い《《悪役貴族》》や《《悪役令息》》特有のイベントもない。


 貴族も住んではいるとは思うが、ゲームではかかわりがないし、しいて言えば少し離れた場所にあるゴールダン共同墓地、そこに転移の門があるのでワープ出来るぐらい。


 そこの領主が困ってる! と言われても全く思い当たる節は無いのだ。



「見えてきましたぞ!」

「うわー貧相な壁」

「な、なにを! あれこそゴールダンを守る。鉄壁の壁です! 貧相に見えるのは周りに魔物がいない証拠、すなわち平和! これもそれもトト様のお力でございます」



 力説するディエ爺さんはふんぞり返って椅子に座りなおした。

 馬車はそのまま検問も受けず街中に入り領主の館に入って行く。


 大きな屋敷で庭も広い。

 玄関前に馬車が横付けするとメイドに召使いが100人以上ずらっと並ぶ。



「でっか」

「ふっふっふっふ、そうでございましょう。これもトト様。いえトール家の力でございます! さぁどうぞお降りになさってください」



 ディエ爺さんが馬車から降りると俺達をうながしてきた。

 俺が降りて師匠が降りると玄関の前にいた少年がズガズガとこちらに向かってくる。


 髪の色はきらめくグリーン。

 子供から少年……青年になりかけのフレッシュさがある。

 顔つきは、イケメンの部類に入るだろう、いいな生まれ持っての美少年は羨ましい限りだ。


「ディエ!」

「これはトト様!」

「この方が魔女か!?」

「ぶっは」



 全く隠してない情報に俺は思わずせき込んだ。

 顔を上げ周りのメイドや召使いをみると顔が引きつっているの人もいるが、直立不動で表情を変えない人が多い。



「これはこれは、ワラワは魔法使いメル。魔女ではなくて残念だったのじゃ、トト様」

「トトでいい。ディエどういう事だ? お前は魔女を連れてくるっていったな?」

「トト様。お部屋でお話しましょう」



 ディエ爺さんが手を数回叩くとメイドや召使いが一斉に動き出した。



「ディエ! ここでは私が主人だ!」

「ええ、わかっています。ディエ爺はそのために身を粉にしてます」

「…………客間に連れて行けばいいのか? こっちだ。魔法使いメルと……君は?」

「その弟子のクロウベルです」

「そうか、クロウベルもついて来い」



 んまぁずいぶんと生意気そうな少年だ事。

 屋敷に入っていくつかの角を曲がると客間についた。

 客間といってもパーティー会場みたいに広い。

 ソファーが5つ。20人は立食できそうなテーブルなど俺の家とは場違いなぐらいに広い。



「せまい客間ですまないな。さぁディエ! 話を聞かせて貰おう。私の《《武術》》はどちらから学べばいいんだい?」



 ん? 武術?

 俺はディエ爺さんから、トト様の結婚相手を探してくれって言われていた気がする。



「けっ――」



 俺が結婚じゃ? って言おうとするとディエ爺さんが大きな声でさえぎって来た。



「けっこうな事ですな! さすがはトト様やる気十分でございます。今回はこちらのクロウベル様がトト様の先生というわけです」

「いや、ディエ爺さん……俺はこのトトのけっこ――」

「決行日は何時からしましょうかトト様! 今夜はお二人に休んでもらって」



 いやだから、結婚! 婚約の話を。



「そうか、そうだね。そうしよう……所でザックはどこかな……」

「トト様。魔物使いにも気を使うとは、ザックでしたら今頃は酒場でしょうな」

「そ、そうか。じゃぁ会えないな……い、いや! では失礼するよ」



 トトが客間から出て行った。

 俺は直ぐにディエ爺さんを見る。



「おい!」

「いやはや……はて……」

「今から帰っても良いんだぞ?」

「そ、それは困ります。メ、メル様!」

「ん? ワラワは今回は部外者なのじゃ、そもそもいきなり魔物をぶつけてくるような奴は好きじゃないのじゃ」



 ごもっとも。



「そ、そこを何とか! トト様はもう16歳。本来であれば結婚もされているでしょうが未だに独身。それもこれも数年前にトト様のお父上がお亡くなりになり突然に領主になってそれ所では……トト様本人は現在結婚を考えておらず……その領地を思うあまり武術の方に目覚められ……魔女メルギナス様でしたら何とか……もしくはトト様の伴侶になって貰ってもトール家は安泰です」

「何が安泰だ。師匠は俺と……けっ」



 俺と結婚するんだよ! って言葉が出ない。

 気恥ずかしい。

 師匠の方を見ると細めで俺を見ている。



「その俺と一緒になれたならなぁって……てへ」

「ドアホウ、いい年して『てへぺろ』気持ち悪いのじゃハッキリ言ったらどうじゃ?」

「そ、そうですか。師匠、俺と結婚しましょう」

「断るのじゃ。所でディエよ、と言う事は結婚や婚約はアレの望む願いではないのじゃ?」



 何この仕打ち。

 告白しろ! って言われたからしたら振られたでござる。



「そうなのですが、このままでは仮にトト様に何かあった場合トール家は無くなってしまいます」

「あー…………面倒よね貴族問題」



 普通の貴族であれば、その子供を複数人作る。

 そのせいで生活は圧迫して圧迫を回避するには金も要る。

 金は一定しか入ってこないで、色々副収入を考えるという貴族と言えと結構つらいのだ。


 まぁ俺はその家を出たけど。

 元貴族としてちょっと考える事は出来る。



「無くなって困る事もないじゃろうに……貴族なら沢山いるじゃろ」

「さすが師匠ドストレート」

「なりませぬ!! メルギナス様! いいですが!? トール家がいるからこそゴールダンがあるのです! ここでトール家の血筋を途絶える事は駄目なのです!!」



 ディエ爺さんがふがふがしながら熱弁する。



「て、いってもなぁ……結婚相手探すんでしょ? もう冒険者ギルドにでも頼んだら……どんな相手探すかもわからんし」

「そこなのです! クロウベル様メル様。お2人にはトト様の好みを聞いてもらいたい。どうも屋敷の人間が聞くとトト様にばれてしまって……お2人であれば武術も強い、どうがどうが!」



 うーん面倒だ。



「面倒じゃな」

「師匠と同意見」

「………………わかりました。このディエ爺の命。魔女であれば生贄がいると聞いた事があります。トト様申し訳ございません。いざっ!」



 ディエ爺さんが突然切腹しそうになる。

 俺はそれを後ろから止めた。



「待て待て待て、何もしないとは……ねぇ師匠」

「ワラワは生贄なんていらんのじゃ……ワラワ達も忙しいしのう」

「で、では一月、一月の間だけでも!!」



 俺と師匠はため息をつきながら顔を見合わせた。

 


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