第56話 ライトニングフルバースト
誰も前に出ないので俺が何とかするしかない。
条件を確認しよう。
1、自称女神の邪神イズーミは湖に落とした物を拾ってくれる精霊。
2、正直に答えると価値を上げた品物などをくれる。
3、嘘は付けない仕様となっている。
4、本人しかわからない記憶なども取ったり得る事が出来る。
5、クウガが捕まっており正直物にはクウガを取り戻す事が出来る。
こんなものか。
「じゃぁ俺が」
「待つのじゃ」
俺が行こうとすると師匠がその行動を止める。
「なんでしょう」
「小声で話すのじゃ。アレの正体は精霊で間違いないのじゃ?」
「え。まぁ多分そうでしょう。女神と言ってますけど、それこそ本物の女神にでも堕とされた悪い精霊なんじゃないですかね?」
「ん、仮にドアホウが駄目な場合二週目……いや二週目が始まったとしてもあの小僧を普通に助け出す事はむりじゃろな……ふむなのじゃ」
でしょうね。
俺でもそう思う、アリシア、クィルは正直者でしたたかなミーティアもダメ、知恵を絞ったノラでさえ完敗だ。
残った俺が駄目であれば乳でか師匠しか残らない。
「な、なんじゃ突然見つめてなのじゃ」
「いえ、いつもきれいだなって」
「こ、こんな時に言う事なのじゃ! で、何を投げるのじゃ」
ポケットの中には大事な物が入っている。
正直これは泉に投げたくないし失いたくはない、でも俺が幸せに暮らすにはしょうがないのだ。
「見せてみるのじゃ」
「え。嫌ですけど」
「…………」
「…………ドアホウの事じゃからワラワの私物をもって来たとおもうのじゃが?」
うお! 鋭い。
「へ、へへへへへへへんな推理しないで貰いますか? アリシア、ノラ! 師匠をちょっと遠くにやってくれる!?」
「やっぱり何をもって来たのじゃ。言いから見せるのじゃ!」
半ギレの師匠が俺の手をポケットから無理やり出した。
俺がこっそりもって来た宝物がみんなの前に出される。
「うげ。変態ちゃん……」
「いや、うんクロー兄さんならそうだと思ったよ?」
「はぁこいつは……おい、ドアホウ説明しろなのじゃ!」
説明しろもなにもない。
俺が持っているのは使い古した黒いブラジャーだから。
マナ・ワールド基準でカップ数は書いてないがIカップはあるブラジャー。それもパット無しの優れもの。
「俺のささやかな宝物です!」
キメ顔をすると俺の脳天めがけて師匠の攻撃が繰り出される、それをぎりぎりでかわすと地面に大きな穴が開いた。
「うわーすごーい。それが君のちょっと大事な物なの? 早く入れていいよ」
邪神イズーミは興味津々で俺に催促してくるが、俺だって早く事を終わらせたい。
「俺だって投げ入れたいがっ!」
師匠がブラを握っては引っ張っている。
「ドアホウふざけるなのじゃ! どこの世界にワラワの下着を、ってかタンスには鍵をかけてあったじゃろか!」
「もちろん壊しました! パンツじゃないだけいいじゃないですかっ!」
「別な物に別なのを持ってこい奴じゃ」
「赤とかのほうがよかったですか?」
師匠の事を思って一番ボロボロなのを吟味したんだけど、もう少し新しいほうがよかったか。
色も黒以外に赤、白、青もあった。
「もしかして黒はお気に入りの色だったとか」
「違うわドアホウ!!」
「ええっと……漫才はいいから早く入れてくれる? 貴方だったら正解選んでくれる気がするのよね」
俺は師匠と師匠のブラを引っ張り合う。
「うおおおおおおおおおお!」
「んなあああああああああ!!」
やむえん。
大岡越前の策だ。
大岡越前といえば江戸時代の裁判官みたいな人で、一人の子供を両方から引っ張って奪い取った方が子供を得るとか、そんな話だった気がする。
片方は財産目当ての女性。
もう片方は愛情たっぷりの女性。
どうしても子供の幸せを願った愛情たっぷりの女性が一瞬子供の手を引く力をゆるめたのだ、すると子供の財産だけを狙っていた悪い母親は尻もちをつく、その隙に手に蹴りをいれて手を子供を奪い取るのだ。
まぁ何かと言うと両方で引っ張りあった時、片方が力を抜くとその反動で引っ張っている方は転ぶのだ。
「スッ」
「のああああ!?」
師匠が転んだ。
黒いブラから手が離れた瞬間おれは走ってそれを邪神イズーミに手渡した。
「何このブラでっかっ」
邪神イズーミが一言感想をいうと湖から出てる他の手がブラを掴み沈んでいく。
「さぁ何でも来い! 俺は絶対に師匠の黒くて使い古したでっけえいい匂いがするブラを選ぶ!!」
「うわっ……変態ちゃん匂い嗅いだの?」
ミーティアがドンびいているが当たり前だ。
「いやだって、師匠のブラじゃ無かったらこまるから嗅ぐよ?」
「くろうベル……うワっ」
「ええっと……」
クィルが俺を見てアリシアが一歩引いた。
「いや、だから本人のか確認するのにっ! あっぶね師匠。無言で攻撃はやめて」
「ちっ」
「はーい、ご注目ー」
邪神イズーミが注目を促すように喋りだす。
「じゃぁ言うわね。貴方が落としたのは『使い古した黒いブラジャー』それとも、今隣の人が付けていた『赤いブラジャー』かしら」
「のじゃあああ!?」
え。
俺は横にいる師匠をみる、胸の部分を抑えて俺から距離を取る。
「え? も、もう一度」
「いいわよ、貴方が落としたのは『黒いブラジャー』ですか? それとも『脱ぎたてのブラジャー』」
「ぬ――」
「ライトニングバーストおおおお!」
俺の真横に電撃が落ちた。
砂浜が黒く焦げる。
「ドアホウわかってるじゃろな! ワラワのブラを盗られてまでの奴じゃぞ! 絶対に黒を選べ選ぶんじゃよな! ドアホウ絶対に大丈夫っていっていたじゃろ!」
「も、もちろんです。こんなの目をつぶっても大丈夫です」
実際に目をつぶる。
黒いブラジャーは右。
絶対に右を指さす。
「みだいいいいいいりいいいいい!」
「ハイ没収」
「このドアホウなのじゃあ!」
師匠が叫ぶと俺にドンドンと近寄ってくる、ノーブラなのに。
いつもより胸が大きく揺れてる気がするのは気のせいじゃないだろう。
「どうする気なんじゃ! この――」
「師匠その胸がこぼれそうです」
「っ!」
俺から一歩ひいて深呼吸をし始めた。
俺と邪神イズーミを見てもう一度「どうするのじゃ?」とピキピキしながら話してくる。
「いや、本当にすみません……もう一つ作戦があって」
「ドアホウ今度はパンツとかいうんじゃないのじゃ? そして今度はワラワの脱ぎたてパンツ? ふざけるなよ?」
本気で怒って来てる。
「それは無いんですけど、一応師匠の協力が必要で」
「…………ワラワの下着とか私物ではない?」
「無いです」
俺が師匠に言いきると、周りの空気も先ほどよりもやわらいでくる。
「先生、クロウ君なら何とかするようなきがする……普段変なんだけどウソは言わないし」
「ま、まぁミーティアちゃんも守ってもらったしー」
アリシアとミーティアは俺に期待をしてくれた。
「くろうベル。がんばれ」
「うーん、ボクは嫌な予感しないけど……解決するには頼るしかないようなきがする」
クィルも応援してくれて、ノラは保留な構え。
「どーするのー? この美少年貰っていい? 女神であるイズーミの願いもかなえて欲しいけど、逆に100年ぐらい見つめていたい気分もあるのよね」
邪神のくせに催促までしてくる。
「わかったのじゃ。ドアホウ何をすればいい?」
「あっじゃぁこっちに」
師匠と一緒に湖の前に行く。
俺は師匠にだけ聞こえるように小声で話す「師匠いいですか? 合図したらしゃがんで下さい、おれが魔法を唱えて一撃でアイツを倒します」
「のわっ! で、できるのじゃ?」
「安心してください」
湖の上でふよふよふよーっと邪神は余裕そうだ。
「決まった?」
「ああ、決まった。俺はこれから最も大事な物を湖に入れる、師匠はそのアシストだ!」
「ふむふむ、いいわよ何だすのかしら」
「師匠今です! しゃがんで!」
師匠は俺が言ったとおりに湖前にしゃがんだ。俺はその背中を思いっきり突き飛ばした。
「のじゃ!?」
コロンと転んだ師匠が、湖の浮かんでいる手に飲まれて沈んでいった。
「クロウ君!?」
「クロー兄さん……」
「大丈夫作戦通りだから」
邪神イズーミが驚いた顔をするが左右から2人の師匠が出て来た。
「ええっと……まぁこっちはいいんだけど……貴方が落としたのはこっちの激おこの女性かしら? それとも『なんでも許してくれる超えっちな』女性かしら?」
片方は激おこで、もう片方は俺に手を振っている。なんだったらヘソを見せてくれて俺にサービスまでしてくれた。
その2人の師匠は同時に魔法を詠唱させた。
「「ライトニングフルバースト、ツヴァイ!!」」
「え? ええええええええええええええ!?」
世界が白に染まった。
師匠の放った魔法はもちろん俺じゃなくて自称女神の邪神となった精霊イズーミに向けて。いくらアレでも師匠のブチ切れた魔法x2で倒せるだろうって判断だ……。




