第446話 魔石鉱山アッテムン
小隊5名の聖騎士に守られながら馬車で移動する。
途中の宿場で逃げようと思えば逃げれたけど、後で誰かよこすって言うので大人しく馬車に軟禁される。
マスク効果も最初は良かったけど、俺の体を心配した聖騎士達が宿場でヒーラーを呼んだり、薬師を呼んだりして無理やりに薬を飲まされる。
小隊長である、名前の知らないおっさんが馬車の窓を叩くと合図してきた。
ちなみにちゃんと名乗ってくれたらしいけど、俺が聞いてないだけ。
「いやークウガ殿。アッテムン鉱山が見えてきましたぞ」
「ごっほごほ…………」
「どうなされました? まだ風邪が治りませんかね」
「名前が悪いなぁって……地下から毒ガスが出たり魔族の王が埋まっていたりしない?」
「悪い冗談ですな。鉱山のふもとには小さい宿場も出来始めてますし、そうですな。露天風呂などもありますゆえ、時間のある時に行ってくだされば護衛しますので」
へぇ……それはちょっと楽しみだ。
日本人たるもの。
いや元日本人たるもの露天風呂は大好きである。
帝国や王国にも風呂文化はあるけどさ……狭かったりするのよ。
蛇口も無い部屋もあって石床の上に浴槽があるだけ。など。入りにくい。
ナイの蜃気楼の城で、巨大大浴場ばっかりになれると他の風呂に入るのが嫌になってくるぐらいだ。
その点露天風呂なら見晴らしもいいだろう。
「風呂ぐらい1人で入れるっちゅうの」
「こ、これは失礼。気分を害せてしまいました」
俺は慌てて言い直す。
「ち、違います。そのええっと。ここまでの護衛で疲れているだろうし、ここは滞在期間は俺。じゃなくてぼくの護衛はいりませんので休日に。という提案です」
「…………さすがはクウガ殿! 我々にもお優しい」
最初の1日目から俺の言葉使いが変だったらしく。『クウガ殿は実は正確が悪いのでは』とひそひそ話が聞こえて来たのだ。
別にクウガの評判こそ落ちても構わない。と思うんだけど……それで後で怒られたくはないし、仕方がなくボロを出ないように頑張ってる。
宿場の中まで馬車で走っていき、一番大きな屋敷の前で馬車は止まった。
扉が開き、俺がステップを降りると突然出て来た女性に抱き着かれて馬車に押し戻された。
「いっ!?」
「お久しぶりですわ! クウガ様」
「誰!?」
俺が思わず言った言葉で女性は俺から少し離れる。
それでも両手は床について顔がめっちゃ近い。
エメラルドグリーンというのか透き通った長い髪。
服装も下まであるワンピースで胸はこぶりだが弾力はある、俺に押し付けていたし。
「いやですわ。アッテムンの代理領主グレアですの、忘れましたの?」
「しら……」
「しら?」
「すがわ。ああ、しらすがわ。しらすがわ」
「…………? クウガ様。長旅でお疲れですのね。グレアがたっぷり癒してあげますわ!」
意味不明な短歌を言うとグレアも離れてくれた。
改めて見ると年齢は20代……頑張れば10代にも見える。
代理領主って言っていたけど。
そのグレアの横からいかにも執事! という爺さんが現れた。
「クウガ様。遠い所ありがとうございます。グレア様も大変喜んでおります、さぁクウガ様。お屋敷のほうへ」
「ほら、行きましょうクウガ様」
「ちょ」
俺をひっぱるグレアに屋敷の中に引っ張られた。
手は小さいのに力強い。
聖騎士隊は執事の爺さんと何やら話していて俺のほうを見てくれない。
「さぁ! クウガ様。ベッドに行きましょう!」
「ぶっ。げっほげほげほ……え、なに……いつもそんな事してるの!?」
何が『アリシアが欲しいだ』こうあっちこっちに友達以上恋人未満の女性がいるじゃねえか。
不幸面しやがって、そういう所でアリシアがなびかないんだって言うの!
「こういう事を言うのはクウガ様だけですわ! クウガ様もいつも断わるのに、わたくしはそんなにふしだらな女と思ってますの!?」
「ええっと、そのごめん」
俺の疑問を。別の男でも同じ事を言うのか? と受け取ったグレアが怒り出す。
ああ、ちゃんと断っていたのか。
疑ってごめんクウガ君。
「いつもの軽いスキンシップですのに。これでも社交界ではもてますのよ? でも母上も言ってましたの。殿方と結婚しても恋はするべきです。と」
貞操概念!
解るけどさぁ……俺も貴族だったし。
「とにかく、ここには仕事に来たわけで……この後も王国に行かないと」
「そうでしたわね。あちらの部屋に書類をまとめてありますわ」
言われるままに部屋に入ると、机の上に書類の束が置いてある。
見るのも嫌だなんですけど。
とはいえ、背後で笑顔のグレアにせかされて椅子に座る。
ふっかふかの椅子で微妙に温かい。
「クウガ様のために暖めておきましたの」
「そ、そう」
そのグレアは突然に黙りだす。
俺の顔をじーっと見始めた。
「な……に……かな?」
「久々からでしょうか? ずいぶんと雰囲気がお代わりに」
っ!?
わ、わかるの!?
「にせもの……」
ポツリと言うグレアに俺は大声で話をかぶせる。
「いや実は。風邪がひどくてちょっと記憶のほうが混乱していてね」
「そうでしたの!? そういえば先月はご病気でこちらのほうに来れない。と手紙を受け取りましたわ!!」
「ごめんね」
「大丈夫ですわ! このわたくし。クウガ様にとって一番の女性ですもの」
「いや、クウガにとって一番はアリシアでしょ」
はっ!?
思わず突っ込んでしまった。
笑顔のグレアが俺のほうを見てくる。
「芋臭い女の話題ですの? 話は聞きましてよクウガ様。クウガ様を振って犯罪者の子供を産んだ。など」
「あのねぇ……俺の事は別に犯罪者でもいいけど。アリシアの悪口は辞めてもらっていい?」
「…………クウガ様!? そ、そのクウガ様の事を言ったわけでは」
あっ。やっべ。
俺がクウガなんだよな。
俺は見えない箱をジェスチャーで作り、その見えない箱を横に置く。
「と、いう冗談で……その幼馴染なんだ。悪く言うのは辞めてほしいかな。ええっと、グレアも美しい女性ならわかると思うんだ」
「クウガ様!! グレア感激しましたの! まぁそうですわよね。あのアリシアさん……以前会った事があるのですけど、悪い人ではないようですし」
会った事あって悪い印象ないのに、そこまでいえるんかーい。
まぁ貴族だしな。
この手の考えはよくあって、本気で悪気無いパターンの人が多い。
付き合うと中々いい奴だったりもする。
「で、俺は何をすればいいの?」
「その書類に書いている事を目を通してもらいサインですわ。もちろん気に入らない案件は拒否して構いせん事ですわよ、この鉱山や宿場はクウガ様の持ち物ですもの、わたくしグレアは管理人ですもの」
なるほどねぇ。
紙をみると、鉱山発掘者の待遇改善。食事の改善。女性と遊ぶ所の無料開放。慰安旅行など、出来そうな事から出来なさそうな事まで書いてある。
と、言うか。これ俺がサインしていいのか?
まぁ全部可決しておくか。
「ええっと可決。可決。こっちはインフラか。鉱山の収益が……は!? 月にこんなに!?」
「少なかったですわよね。もっと人を集めますわ」
「だったら囚人が一番いい。使い潰しても良いけど刑期を短くする。というので使ったほうがいいかな」
グレアが俺を見て言葉を止めてしまった。
はっ!?
「と、言うのは冗談さ。そのクロウベルって親友がよくそういう事を考える人で……」
「まぁそうでしたの! クウガ様が良く言う目標にしているご友人ですわよね。考える事が残忍とかなんとか。びっくりしましたわ。突然ですもの」
「そうそうそう」
あぶね。
何枚かの書類を可決していく。
そこに1枚の紙が突然追加された。
「クウガ様これも可決お願いしますわ」
「はい。わかりました」
俺は可決の文字を書き始めて途中で手を止めた。
「あのグレア?」
「あら、申し訳ありませんわ。わたくしったら、間違えて婚約の書類を偶然。お遊びで書いたわたくしの名前とクウガ様の名前も入ってますし」
あっぶね。
帰りたい……。




