第439.5話 (他人視点)とあるママの食事会
「アンジェリカ様。お連れの方がいらっしゃったようです」
「どうも。通して頂戴」
聖都タルタンにある会員制レストラン。
その個室に私は友を招待した。もっとも友と言っているのは私だけかもしれないけど。
月に数回の食事会。
多い時には週3回ぐらい、ここ最近は相手側の旦那が目覚めたのでしばらく開催されてなかった奴。
「待たせたのじゃ」
時間通り、そのママ友が個室に入って来る。
普段通りの衣服、子供達2人はママ友の周りを少し遅れてついてきているのが見えた。
「大丈夫よ、時間通り。サクラちゃんにスミレ君もこんばんは。何時もうちのディルと遊んでくれてありがとう」
「はーい!」
「…………ふん」
子供を見るのは楽しい。
「良いか2人とも、社交辞令じゃ。気に食わない事があったらコイツの子供であろうとぶん殴れなのじゃ」
「はー……ママっ!? だめだよ!?」
「わかった」
「…………わからないで欲しいわね。ウチのディルは隣の個室にいるから相手頼むわね」
魔女の子供達2人が別室に走っていく。
銀髪の魔女は私の正面に座りその大きな胸をテーブルの上に乗せる。
魔女メルギナス。
聖王様の旧知の仲であり、私も長年助けてもらった人。
昔はメル様と呼んでいたけど……最近はメルさん。と呼ぶ事が多くなった。
「なんじゃ?」
「何でも無いわよ」
「…………何でもない。と言いつつワラワの胸を毎回凝視しおって、こんなの重いだけの脂肪じゃ。肩も凝るしの」
「ぐう…………部下と同じ事いう!」
私が文句を言うと、テーブルに料理が並べられていく。
会員制の高級レストランと言っても別に普通の物が出てくる。ちょっとお高い材料を使ったサンドイッチや野菜スープ。
子供達にはステーキや果物を中心としたサラダなど。
「まぁ食べてよ。妹のフレイも来たがっていたけど……仕事が入ってね」
「かまわんのじゃ。こちらもアリシアがおらんしの」
「ごめんね。旦那を都合よく使って」
「…………自覚あるなら押さえればいいじゃろが……別に旦那なわけじゃないしの」
本当嫌な事を言うわね。
でも、旦那じゃない。と言いつつ帝国の冒険者ギルドまで乗り込んだ話は有名なのよね。
「魔女だしなのじゃ」
「まだ何も言って無いわ」
「いう前にわかるのじゃ……昔、お主と同じ顔の奴が追っての、唇をすぼめる姿なぞ、まったく同じなのじゃ」
文句は言いつつも、メルさん嬉しそうな顔なのよね。
「その人と仲良かったの?」
「全然。やる事やったらどこかの男と遠くに行って帰って来なかったのじゃ、何じゃったらせいせいしたの」
「仲よかったみたいね」
「ふん……まぁお主が目の前にいるって事は死んだんじゃろうな」
魂の転生。と呼ばれる奴。
聖王書記の中にも書かれている話。
私としては嘘と思っているんだけど、メルさんが言うのであればそう言う事もあるのかもしれない。
「じゃ。この時代でも私はメルさんと大親友って事ね」
「はぁ……何を言っているんじゃが」
「いいじゃない。お互いに子供もいて……ってか、魔女って妊娠するのね……最初聞いた時聖王様が腰ぬかしていたわよ」
「人間よりも確率が低いだけじゃ、じゃないと長寿族はどこから来たんじゃって話になるじゃろ?」
「って事はクロウベル君が凄かった。って事よね」
細切りにした肉を口に入れる。
「まっそうなるじゃろうな」
本当はそれを受けれるメルさんのほうが凄いんだけどね。
「お熱い事で」
「…………暑くも寒くもなのじゃ……ワラワも何を思ってあんな男と関係をなのじゃ……いっその事記憶を消したいぐらいなのじゃ」
「記憶ねぇ」
そういえば。
「昔記憶喪失の令嬢がいたわね。突然姿を消したらしく聖騎士隊にも捜索の願い来てたのを思い出したわ、最後には大きな魔力探知がありそれで終わり」
「どのへんじゃ?」
「どの辺って王都に近い…………もしかして関わってる?」
「さぁなのじゃ。もっとも記憶を消したいという女と。記憶を取り戻したい。と言う男に秘薬を渡した事はあったのじゃ。あれは儲かったのう」
「絶対にそれよね」
どうじゃろうな。と涼しい顔で肉をほおばる姿は綺麗すぎる。
「なんじゃ? 文句でもあるのじゃ? 顧客がいるから商品を渡しただけなのじゃ」
そうなんだろうけど。
「メルさんって綺麗よね」
「突然になんじゃ………………そっちの気は無いのじゃが」
「そういう意味じゃないわ。あの人といると普通の人間みたいなのに、こう静かにいると畏怖さえ覚えるほど」
「こんなものじゃろ」
「クロウベル君ってよくメルさんと付き合えたわよね……」
本当に不思議だ。
出会いは師匠と教え子って事で聞いた事あるけど、それにしても。
この綺麗な人を射止めたのが凄い、それ所か……あのクウガ君からアリシアを奪ったのも凄いわ。
「今思えば……記憶の秘薬をアレに飲ませたほうが良かったのじゃ」
メルさんのお皿が空になると、ウエイターが別の皿を持ってくる。
静かに受け取るとワイングラスからクイっと一口飲む姿がまた色っぽい。
「なんじゃ? 言いたい事がありそうじゃのう」
「多分。彼が記憶喪失になってもメルさんにアタックすると思うわよ?」
「…………もはや呪いじゃの」
私の皿も綺麗になると、今度はデザートが運ばれてくる。
大量の盛られたマカロンだ。
「あっでも。その薬があったら毎回美味しい物食べれる!?」
「先に言うのじゃが、ちゃんと毒じゃなからな?」




