第439話 小さい村の説得男
軽い食事を貰い夜に備える。
食事も終わり辺りが寝静まると集会所を出た。
全くもって不用心な村だ。
比較的平和だもんなこの村、サブイベントが無いと本当に何もない。
ミザリーの家は知っているのでこっそり行く。
ログハウスの前に付き、これがミザリーの家と言うのは直ぐにわかった。
何も考えず、とりあえず立派なドアノッカーを軽く鳴らす。
「俺だミゲールだ」
もちろん嘘である。
家の中から物音が聞こえると扉が開いた。
「こんな夜中に……ミゲールさんですか……昼間の爆発であればトラップの誤作動と……」
「よう」
青年の言葉が止まると、俺を見て顔を青ざめる。
俺は青年の手を押さえ部屋の中に入り込んだ。
青年を押し倒す感じで両手を押さえて身動きできない様にしてる。
「っと。下手な事はしない。怪我はさせない! 俺も怪我はしたくない。話し合いに来ただけだって」
「あの爆風で……悪魔め!!」
「魔石投げてもいいけど、近距離で愛しの女性も吹き飛ぶぞ」
説得すると青年の力が緩くなる。
「アレン? 何の音かしら? こんな夜中に村長がくるだなんておかしい……わ……? アレン!!」
ミザリーが俺を見ると近くにあった短剣を握りしめ距離を取り始めた。
てっきり襲って来るのかと思っていただけに驚く。
「アレンを離しなさい! じゃないとわたくしは自らの命を絶ちます!」
その短剣は首に向けている。
「ミザリー辞めるんだ!」
「アレン……」
「ミザリー……」
2人は悲劇のヒロインみたくドラマみたく悲痛な叫びを言い始めた。
「アレンごめんなさい。わたくし騙していたの……でも、この秘密を言えばわたくし達は一緒にいられない……」
「それ以上言わなくていい! 自分はミザリーがどんなミザリーでも」
アレンと呼ばれた青年の力が強くなる。
が、俺に押さえつけられてるせいで動けない。
「アレン……いいのですもう。夢は冷めるべきですね。愚弄! 下がりなさい! この私を誰と思ってますの! ミザリー……ミザリー・ロッサ! 宮廷第三のロッサ家の最後の女。人質を使わなくても王国に戻りますわ!!」
「ミザリー……いえミザリー様……」
俺の押さえつけられてるアレンが男泣きをし始めた。
「さぁ離しなさい! クロウベル・スタン!! 離さないというのですね……どこまで辱めれば……いいでしょう。この体は好きにしても心までは……アレン、貴方との数年間は楽しい日々でした」
「離せ、この悪魔め! ミザリー様逃げてください。自分がコイツと自爆しますから……」
俺の首がミザリーとアレンを行ったり来たりする。
2人で盛り上がってるけど、俺は別に2人のドラマを見に来たわけじゃない。
ここで俺が止めなければ、ミザリーは自戒してアレンも俺が力を抜いたら爆発するだろう。
「あのさ……殺す気ならもう2人とも殺してるし話聞いてくれる?」
2人のドラマが急速に終わる。
「…………どういう事ですの……貴方はクロウベル・スタンなんですわよね?」
「どこで俺の名前を知ったか知らないけどそうなんだけど……あっ俺ってかっこいいから?」
「どこって……わたくし、貴方との婚約が嫌すぎて毒を飲んで記憶喪失になったのですけど」
「…………はい?」
──
────
「…………お茶です」
「どうも」
凄い気まずい。
場所はミザリーの家。
お互いに誤解がある。と言う事で話し合いになった。
毒を飲み記憶喪失になり、記憶喪失が治った後も記憶喪失のふりをしたミザリーと、記憶喪失になった主人のために魔女と取引し薬を手に入れた少年アレン。
2人は辺境で暮らしていたのに、俺が来た制でお互いの秘密がばれたのだ。
「では、貴方は……わたくしを連れ戻しに来たわけじゃ?」
「ないないない。何年前の事と思ってるんだ、それにその婚約話も知らないし……記憶喪失だってのは本当だったんでしょ? その薬の残りを貰いたく」
婚約云々は外部の仕業だな。
でもその本来のゲームシナリオでなんでミザリーが毒を飲んで記憶喪失になったのかわかった。
そうかそうか、俺との結婚が嫌だったのか。
街を牛耳る悪役貴族とそりゃ婚約はしたくないよな……。
「ちなみに、なんで毒飲んだの? 俺ってまだ悪役貴族でも何でもないはずなんだけど」
「変態貴族を攻略し手玉にとれと亡き父からですわ」
聞くんじゃなかった。
「アレン」
「はい、ミザリーお嬢様」
「……アレン。ミザリーと呼んでくれませんの?」
「ですが! 正体がばれてしまっては……」
駄目だ。
話が進まん。
俺は思いっきりテーブルを叩く。
「ひいっ!?」
「な、なんですの!?」
「………………良いか2人とも、正体のバレた後の主従逆転プレイは激もえるぞ…………体験談だ。俺も黙っておくし夜だけにすればいいんじゃないかな?」
俺がテーブルを叩いた時に木製のコップが転がって床に落ちる。
体験談では俺がメルナにしたプレイであり、アリシアが俺を攻めてくるプレイだ。
誰も何も言わない時間だけが過ぎていき、突然にアレンが床に落ちたコップを急に持ち上げる。
「ミザリー……自分達はこの人と会うのは始めてだよ。そ、そうだよね」
「アレン? …………そ、そうね! こんな夜中に何の様かしら? ああ、不思議な小瓶でしたわよね!? あの明日の朝思い出しますから今日はもう出て行ってくれません事? じゃなくて出て行って!」
俺は強制的にミザリーに外に引っ張られてる。
扉が閉まると鍵のかかる音。
ここから2人がする行動が手に取るようにわかる。
そう言う事である。
覗きの趣味はないので夜の道を村中央までもどり1人寂しく毛布にくるまって寝た。




