第438話 飛べ! 全部忘れて!!
廃墟となった屋敷の外にでて棒状の魔石を眺める。
メルナがこれに魔力をいれて飛んでる所を何度も見た事があるので、使い方は多分わかる。
たぶんな。
両手に握り手の内側に魔力を流すイメージを固める。
黒い魔石が鈍く光ると、俺の手から魔石だけが飛んでいった。
「………………よし、何もなかった」
ってか。
押さえとけって言ってよ!? これを気軽にやっていたメルナってやっぱり凄い魔女だったんだな。
もう1本見付けといてよかった。
2本目棒状の魔石をしっかりと押さえて魔力を込める。
体が一気に浮遊すると、時速100キロはあるじゃ!? と感じるぐらいに一気に景色が変わる。
「ひいいいいいいいいいいいっ!?」
眼下の地形? そんなの見てられる余裕はない。
空中でピタ! と止まると俺の体は一気に墜落した。
──
────
全身の痛みからやっと回復して地面から這いでようとした。
ちょっとした隕石が落ちたみたいになり小さいクレーターの底に俺がいる感じだ。
そのほかの部分は森が広がっていて、着地の時にちょっとだけ失敗したらしく、そりゃもう全身がばっきばきで地面に埋もれたのだ。
再生(強)あっても痛いのは痛いからね。
そのうち痛みで発狂するんじゃないかな……って思ってる。
顔を上げると気品あるれる薄い水色の髪を持つ女性と黒髪の青年が俺を見降ろしている。男のほうは知らないけど女のほうは見覚えがある。
「あっミザリーちゃん」
俺は声をかけると、女性のほうが悲鳴を上げる。
それをかばう様に青年が剣を構えた。
剣先が震えていてとっても弱そう。その弱そうなほうが俺に声をかけて来た。
「貴方は誰ですか!」
「誰って……ああ、自己紹介がまだか。俺のなはクロウベル、ミザリーちゃんに用があって飛んできた、ちょっと埋もれたけど」
「クロウベル……まさか!」
青年のほうが俺に向かって魔石を投げてくる。
「はい?」
魔石そのものは別に脅威ではない。
問題は数十個の魔石に全部、印がついていた事だ。
青年の「リリース!」と、言う声がすると、俺の周りにあった魔石が爆発する。
やっぱり魔石型の爆弾か。
メルナが良く使っていた武器で、メルナに言わせれば『魔法使いであれば普通の裏技』との事。
炎の剣を道具で使うと火柱が上がるぞ! みたいな攻撃方法。
物凄い爆風の中、俺はとっさに自分の腕を斬り落として、森の中へと体を滑り込ませる。
青年のほうは俺の残した腕を凝視して周りを探してる。
青年は俺の手を拾って周りを確認しはじめてる。
何かを言っているが声は聞こえない。
諦めたのだろう、腰を落として驚いておるミザリーちゃんの肩をそっと手に置くと、ミザリーちゃん。なんと青年に熱いぶちゅーをかました。
うわぁいいなぁ。
別にミザリーちゃんとしたいわけじゃなくて、俺も早くメルナやアリシアとイチャイチャしたい。
最近さ……俺思うんだ。
イチャイチャしたいだけの人生なのにイチャイチャ出来ないって。
今もこうして片腕になって傷口を押さえてるし、アドレナインのせいで痛みはまだだけど、もう少しで痛くなりそう。
青年とミザリーちゃんは長いぶちゅーをした後に口を離した。
「大丈夫。アレは死んだ……これでミザリーを追う者はいないよ」
「そ、そうかしら……でもアレン私怖いわ……なぜミザリーは狙われないといけないのかしら……」
え。なんで俺がミザリーに用があるって知ってるんだ?
いやその前に追ってと言うのは違う。
木の影から出て聞きたいけど、まずは情報集め。
「それは…………大丈夫だよ。さぁ戻ろう」
2人の姿が消えると俺の腕も生えて来た。
今さらなんだけど、願いをかなえる球を作ったなんちゃら星人になった気分で軽く落ち込む。
「俺だって人間なのに……」
頭を振って気分を切り替える。
酒でもあれば気分を変えれるんだけど……ってここどこ!?
「と、いうか。ミザリーちゃんがいるって事は、え……本当にミゲールの村なん? いや別にいいよ。俺だって流され体質も極めて来て、あの飛来の魔石できっと関係した所飛ぶだろうなって思って飛んだんだし……でも、え、これどうやって帰るんだ」
普通に考えればここで小瓶をゲットしても、クウガの所に帰るのに何年かかるんだ。
「着いた時にはクウガお爺ちゃんになってるのでは」
ボケたクウガに記憶を戻す薬。
我ながら残酷な発想だ。
「…………よし。細かい事は後にしようか……ここがミゲールの村であれば、村長宅ぐらいあるだろ」
比較的強い魔物を倒しながら村を目指す。
人が作った道が出てくると思った通りの果樹園が出て来た。
小さい村でこの果樹園で出来た果物を出荷しつつ暮らしている長閑な村だ。
《《俺も老後はこんな田舎に住みたい。》》
空は夕暮れになってきており魔物除けの柵を超えては村に入った。
記憶では中央に井戸があり、井戸の前に大きな集会場。
左側に行くと村長の家で、右に行くと令嬢の家があるはずだ。
村に入ると小さい子供達が俺にまとわりついて来る。
「知らない人が来たー」
「知らない人が来たー」
「人さらいだー!」
「魔物にばけた人間だー!」
「ころされるー」
「お〇されるー」
まてまてまて!!
「あのね。君達俺がそんな顔に見える?」
子供達は一斉に静かになると頷き始める。
その騒ぎで大人組も家から出てくると俺のほうを警戒し始めた。
俺に暴言を言っていた子供達は大人のほうに行くと、体格の50代ぐらいの男性が俺の前に出てくる。
「村長のミゲールだ。旅人さんかな? こんな小さい村に何の用だ?」
でたー。
田舎特有の外部の人間を排除する感じ。
《《将来は絶対田舎に住みたくない。》》
「道に迷った」
「…………先ほど村の者が確認した山から来られたようにみえたが……」
めっちゃ警戒してる。
当然知らないふり。
「そうなの? 俺の名前はベル。何か手伝う代わりに泊めてくれない? こう見えても腕は立つと思うんだ」
何もない所から剣を出し軽く振ってからまたマジックボックスに戻す。
「冒険者の人か……こんな小さい村に迷うなど何があった?」
「いや。無登録で……この近くにある混浴の湯を探しに来たら迷った」
適当ではなく実際にあるイベントだ。
「このオレが村長になる前に枯れたと聞いたな……困っている事か、間欠泉と思われる場所は知っているんだが魔物が多くてな……いや、ただの冒険者にそんな危険な事をさせるわけには」
それを復活させるのは任意イベだし。
天然ダンジョンに奥にある、間欠泉を開ければいいだけのイベ。
ミニゲームになっていてテンポよく10個のボタンを音楽に合わせて叩く事で壊れる。
「いこっか? 数日泊まらせてくれれば」
「本気か?」
「そりゃまぁ。混浴が好きだし」
本心だ。
ちなむと、メルナとアリシアの混浴が好きなだけで知らない人とは入りたくないからね。眼のやり場にも困るし。
「面白い旅人だ。ベル君と言ったな狭い場所であるが集会場を貸そうベッドなどは──」
「屋根があるだけでいい。それと食事があれば」




