第435話 怒られるクロウベル
ファーストの街にある小さいバー。
上半身は下着で紫のブラが見えているクローディアは、大きなテーブルの上で酔いつぶれてる。
そのクローディアの下には、こちらも意識がないさわやかクウガがその胸に押しつぶされている。
少しだけ羨ましい。
浮気はしないが、綺麗な女性の裸を見るのは嫌いじゃない。
男とはそういう生き物なのだ。
おっぱいがあればおっぱいをみる。
お尻があったらお尻を見る。
それが綺麗な女性であれば間違いない。
その2人に大きな布をかぶせて戻って来たノラがカウンターにいる俺の左隣に座っては「あっ! クロー兄さん。嫌らしい目で浮気だ浮気」と、凄い嬉しそうに言って来る。
右側にいる特別教師のジークが「浮気はいかんな」と、俺に忠告までしてきた。
ジークとは午後に合流してる。
「何もしてないからね!? 見てただけで……てかだ。てっきり夜の予定空けて置いてください。って言うから昼間の騒動で怒られるものかと」
滅茶苦茶怒られるのかと思ったら歓迎会を開いてくれる。との事だった。
「ディアさん、怒ると怖いからねぇ。でも最近はあの人や、アリシアさんと再会して凄い嬉しそうだよ」
「気が張っていたのかもな」
大人の歓迎会と言えば酒である。
クローディアは記憶が無くなる前のクウガの行きつけのバーを貸し切ってくれて、俺の歓迎会とクウガの記憶を戻す事を承諾した俺の出発の送別会もかねて飲んでいた。
まず誰かか『酒って記憶が無くなる時もある』と言ったのから始まった。
確か言ったのは俺だったような。
『じゃぁクウガに酒を飲ませまくったら記憶が蘇る可能性あるよね? クロー兄さん』と。
いやー、これは誰だっけかな。
俺はちらっとノラのほうを見る。
「何かな? ボクは酔いにくいよ? 普段から色んな薬飲んでいるからね。それとも酔わせてお持ち帰りしたいの? 困ったな、壁際で観葉植物にクロー兄さんの名前つけて抱いて寝てるアリシア姉さんや城にいるメル姉さんに許可貰わないと」
「辞めて……」
メルナは好きにしろ。って言うだろうし、アリシアは手を叩いて喜びそうだから
「わかってるよ。ボクも大人だよ? 良識ぐらいあるよ」
本当か?
ちらっと聞いたら、何度もクウガを暗殺しようとしてたとか聞いたぞ。
「それよりも薬って体が悪いのか? アリシアにヒールをかけてもらったほうが」
「魔法は意味が無いんだよ。他人に毒を盛られたりしたら困るから、普段から状態異常を強くするのを飲んでいるんだ」
……普通は盛られない。
元々盗賊系の職業だからか? やってる事がえぐい。
確かに風邪引いた。など話に聞いた事がない。
俺はもう一度、布にくるまってるクローディアとクウガを見た。
「その薬って2人のグラスにいれた奴?」
ノラの顔が驚いた顔になった。
「すごい……ばれないように入れたのに。安心してほしいな、二日酔いにならない薬だよ」
二日酔いにならない薬ね……気づけばクローディアもベロベロになってたし。
ガタ! と音がするとクローディアが立ち上がる。
「学園にはろくな大人がいません! 子供達の未来のために恋愛なんていらないのです!」
そう宣言すると、意識の無いさわやかクウガの上にまた覆いかぶさっていく。
ちらっとジークを見ると「自分は妻子がいるからな」と聞いてもいない事を言って来る。
俺もいる。
「俺はともかく。ジークも酔わないのか? 長寿族だからか?」
「最近覚えた魔法の応用で一部内蔵器官の時間を戻してる」
「…………はい?」
さらっと飛んでもない事いったぞ。
「酒は胃に入り臓器を通る。その味を楽しんだら体の一部の時を戻してるのだ、これで飲んだ事にはならない」
「インチキすぎるだろ」
「ゆくゆくは食事をしなくても持つようにしたいが、まだまだ先だろうな…………これもお前が何度も時を戻ったりするので思いついた魔法だ」
「俺も覚えたい!」
超便利そう。
別に魔法嫌いじゃないし、たまたま水魔法の属性が強いだけで覚えれるなら色んな属性覚えたいし。
かっこいいじゃん。
例えばだ。
強大な敵が来て俺が腹を斬られる。
そこで手を当ててだ。
相手が『馬鹿な! 傷が消えた回復魔法か!!』って言うだろ。
そしたら俺が『いーや、時を戻しただけだ』って言うのよ。
かー! 燃える!
「………………教えてもいいが、失敗すると異形の人間になるぞ」
「やだなにそれ」
「失敗し、時を戻しすぎるとだ、子供に戻るならまだいい。体の一部が子供に戻る可能性もある。大人の体に子供の臓器、回復魔法をかけても怪我ではなく効かないだろう。しかし……お前なら特訓すれば──」
「はい、断わります!」
「………………そうか、残念だ。いづれ適正者が現れれば教える気ではいる」
そうしてくれ。
ジークもジークで判断が的確で無茶な事もしないだろう。
「クロー兄さんも二日酔いにならない薬いる?」
「…………飲んだらああなるんだろ?」
「その時はボクとアリシア姉さんで運ぶよ」
どこに!?
慌てて首を振る。
「酔わないように飲んでるから」
俺はグラスに入った氷をカランと鳴らした。
──
────
眼がまぶしい。
こすりながらまぶたを開けると、青白い空が見える。
「ここどこ……?」
周りを見ると通行人が俺を避けて歩いていて、俺はなぜかパンツ1枚だ。
パンツなのはまだいい。
そのパンツに紙幣がいっぱい挟まってる。
1枚とって確認すると、オリジナルの紙幣でお店で使えるチップみたいなものだろう。
隣には同じくパンツ1枚のクウガが唸っていて、こっちはあちこちにキスマークがついてる。
クウガがもっていた杖は2つに折れていて近くに転がっていた。
そのクウガが頭を振って目が覚めたみたいだ。
「あれ……確かクロウベルさんでしたよね。ここ……どこ……え! なんで僕が裸なんですか!?」
「さ、さぁ……」
俺達の前に1台の馬車が止まる。
真っ黒い馬車でいわゆる箱付き、その扉が開くと『般若』がいた。
「ひいい!!」
「ディアさん!?」
俺とクウガが悲鳴を上げると、般若もといクローディアが厳しい目で俺達を見る。
「早く馬車に乗ってください! 学園の校長である貴方と、英雄である貴方が……よりにもよって。道端で寝てるとは……通報があり急いでですね! ああ、もう杖も折れてるじゃないですか! ほら手を出してください……それにこのマークは……どこで、いえ……まったく……」
馬車に乗り込むと、ノラが涼しい顔で先に待っていた。
「クロー兄さん達って散々お酒で失敗していたからこうなる事わかっていたよ」
「うっ」
「僕は過去でもお酒で失敗していたんですか……?」
俺もクウガも落ち込む。
「あの後、アリシア姉さんとディアさんを送り届けて戻って来たら『バーのマスターから肩を組んで出ていかれましたよ』って」
全く記憶にない。
「すみません。記憶になく……」
「俺も記憶喪失になりたい……」
すぐにクローディアからお説教が始まった。




