第434話 そんな都合のいいアイテムがあるわけ──……
「第3回クウガを助けたい選手権ー!」
保健室で大声で叫ぶと、大きな拍手と小さな拍手がする。
もちろん大きいのはアリシアで小さいのはさわやかクウガ。
と、突然保健室の扉が開く。
小さい男子生徒が入って来た、俺を見るとビクっとした後に、アリシアに抱き着く。
「きゃ」
「ありしあせんせー。まほうをかけてー!」
アリシアは黙って俺を見るので、とりあえず頷き返す。
別に何も悪い事してないし。
アリシアは小さい男子生徒に『ヒール』をかけると男子生徒はお礼を言って帰っていく。
「ごめんね。臨時で保健室の先生してるんだけど……」
「なるほど」
ナース服着てたし、普通に考えればそれもそうか。
数字は適当なんだけど、さっき3回っていったので1回足してみる。
「じゃぁ気を取り直して、第4回──」
保健室の扉がノックされる。
俺が言葉を止めるとアリシアが小さく走りその扉を開ける。
今度は少し大きい女性の生徒だ。
こちらも制服が可愛い、やっぱりアリシアに抱き着く。
「アリシア先生……いい匂い……きゃ! 校長先生! と……ええっと?」
女の子が俺を誰でしょう? と感じで警戒してる。
アリシアが直ぐに「先生の旦那さん」と言ってくれた。
「式は上げてないけどな」
「もう、クロウ君!」
「先生って旦那さんいたんだ……」
なぜかショックを受けてる女性生徒は俺をにらんでからアリシアに抱き着いた。
なんでも頭が痛いらしくアリシアに『ヒール』をかけてもらって保健室から出ていく。
「じゃぁ……いや待って」
叫ぶ前に保健室の扉を開けて廊下を確認。
前後左右に頭を振っても誰もいない。
静かに閉めて大きく息を吸う。
「第5回クウガのき──」
保健室の窓が開くとノラが顔を出してくる。
「クウー兄さ──あれ。もしかして邪魔だったかな?」
「…………いや。授業は?」
「自習にしてきたよ?」
そんなんでいいのか。
当たり前に答えたノラは窓から入ってくると、アリシアに抱き着く。
アリシアはノラをぎゅっとして嬉しそうだ。
次に俺のほうに向かって来るので、とりあえずハグする。
いや、なんで?
「あの。僕は何を見せられて……」
「クウガ校長。家族はハグするものなんだよ? 記憶喪失でそれも忘れたわけ?」
「そうでしたか。すみません」
そうなの!?
とノラを見ると、そうだよ。と言う目だ。
「いや、俺の所が特殊なだけと思う……」
俺から離れるとノラは保健室の扉に『休止中』の看板を立てる。
やる事が合理的だ。
「ボクの授業から保健室に行く子が多くてね。これなら大丈夫でしょ?」
当然のようにノラが座るので、まぁいいかと俺も進める事にした。
「はい、じゃっはじめまーす」
「クウー兄さんもう叫ばないの?」
「叫ぶと邪魔入りそうで……で、原因はわかった。ノラも止めてよ……」
ちらっとさわやかクウガを見る。
「ボクも昔にクウガ校長を殴ったよ」
「そうなの!?」
「さすがはアリシア姉さんだよ、まさか耳から出てくるとは」
うん。聞かなかった事にしよう。
「す、すぐに回復魔法かけたよ!?」
「この世界、正当な理由あれば殺しも許されるけどほどほどにね……」
一応注意して先に進ませる。
「クウー兄さん。《《いつも見たいに》》何か記憶戻るアイテムなどの話ないの?」
人をどこかの猫型ロボットの用に頼らないで欲しいもんだ。
「そんな都合よく、しかもピンポイントに俺が便利なアイテム知ってる訳が…………あったな」
「あるの!?」
「クロウ君!?」
『マナ・ワールド』のゲーム中イベントで『とある令嬢の恋物語』というイベントがある。
内容はあまり覚えてないが、頭を打って記憶喪失になった令嬢を世話していた少年。その少年が以前の令嬢を取り戻すべくどこからか手に入れた『魔女の秘薬』を飲ませる。
見事飲ませた令嬢は記憶を取り戻すも、その少年の記憶を忘れるのだ。
何とも後味が悪いイベントであるが、しばらくすると令嬢は婚約者を捨てて行方不明になっている。
さらに冒険を先に進ませると記憶をなくしたふりをした令嬢が少年と暮らしている所にいるのだ。
別にクリアしなくてもいいイベントで、クリアすると元令嬢から秘密にしてねの代わりに秘薬の残りを貰える。
「ミゲールの村に」
「知らない村だ。クロ―兄さん?」
「たしか帝国の先。DLCの村だし」
「でぃー……? よくわからないけど帝国の先だったら『転移の門』もそこまでは伸びてないよ。メル姉さんから教えてもらったのは王国を中心だし」
それまで話を聞いていたクウガが「わかりました」といっては立ち上がる。
壁に手をついて杖が無いと歩けそうにない感じだ。
「場所さえわかれば僕が取りに行きます。話を聞くと僕が一番の原因みたいなので」
よろっとすると近くにいたアリシアがクウガの体を支えた。
「クウガ君だめだよ? 今車椅子用意するね。安心してクロー君が車椅子を押していってくれるから」
「ぶっ! アリシア!?」
「違うの?」
「だったら1人で行くわ!!」
アリシアが小さい拍手をした。
え?
別に俺は本気で行くとは。
俺が1人で行くわ。ってのはクウガを連れての話で、それだったら俺1人のほうが楽と言う話でね。
予定ではアリシアやノラといってもいいかな。と……なんだったら誰かに取りに行ってもらってもいいだろうし。
助けを求めるようにノラを見る。とノラはおでこを押さえている。
「うん、クロー兄さんならそう言うと思ったよ。ボクも子供たちの授業があるし、アリシア姉さんも保険先生としての臨時。ジークさんも抜け出せないし……ディアさんなら手が空いてるかも」
「嫌だよ、あのクローディアさん、厳しい目でめっちゃ監視されそうだし」
思わず本音が出ると、保健室の扉が思いっきり開く。
クローディアが保健室の中をぐるっと見回した。
ノラが思わず「ひぃ!」と悲鳴を上げるほどの気配を出している。
「好きで監視してるわけじゃないですよ。ノラさん……自習にした子供達が遊んでますので注意していってください。アリシアさん聖騎士隊への対応を。クウガ校長、起きてないで寝ていてください、では。クロウベル様、出発前に大事な話があるのでお時間を空けていてください」
「は、はい……」
俺は精一杯返事をした。




