第433話 さわやか青年とご対面
ノラに連れられてファーストの街まで行く。
6年の間にすっかり変わっていて建物が増えた……。
「あれ。クロー兄さん街を見てもあんまり嬉しそうじゃないね」
「ああ、いや。長閑な街だったのが好きでさ……こう人が多くなると、ダメな事したのかなぁって思って」
俺と同じ思いの人は絶対にいたはずだ。
何も便利になるのが全部良い。とは限らない。
と、いうかノラは細かい所によく気づく。
「考えすぎだよ。それに街を発展させたのはクロー兄さんじゃないし」
確かにそうなんだけど。
何か俺が関わってそうでちょっともにょる。と言う感じだ。
「それよりも、ここまで話出なかったけどクウガの記憶喪失って……」
「あっクロ―兄さんが来たら別に些細な事だよ」
絶対に些細な事じゃない。
流石に6年も起ってると俺を見ては挨拶する人間もいなく知らない人間のほうが多い。
ファーストの街を抜けて丘へと向かう。
街からも学園の建物は見えていて大きな門や立派な建物が複数見え始める。
孤児院の背後にあった崖も削られて土地が増えたように見えた。
「アリシアは? 来てるだろ?」
「アリシア姉さんはクウガさんの看病」
うん。
とても嫌な予感がするね。
「そんなに悪いのか? そもそも何で……」
「それはアリシア姉さんに聞いたほうがいいかなー……死んでなければ」
「ばっ! ノラ!? 冗談で言っていい事と──」
「ごめん! 実際止めたんだよ……私やクローディアさんやジークさんで、やっと落ち着いたからボクも迎えにいったし」
意味はわからないが、やっぱりアリシアが関係してるのか。
「…………アリシアは大丈夫なんだな?」
確認だ。
「大丈夫」
ノラの言葉で一先ず安心すると学園の門が見えて来た。
校舎の一部が見え、そこで子供達が授業を受けているのが見えたりする、子供たちの中には俺が知ってる子は居なさそうだ。
立派な中庭を見ながら校舎へと行く。
職員室。と書かれた部屋に入ると、懐かしい顔が出迎えてくれた。
「クローディアさん」
「お久しぶりです英雄様」
「いやいやいや、俺は一度も英雄になった覚えはない」
「……そうですか、二重の記憶があるせいで。ごゆっくりどうぞ、この学園は貴方の物でもあるんです」
絶対に違うからね。
孤児院を建てたのはアリシア。
学園に昇格させたのはクウガ。
俺は偽の記憶の中でしか活躍してない。
「で。アリシアは?」
「クウガ校長と保健室ですね」
「ボクが案内するよっ!」
ノラが俺の手を引っ張る。
「ノラ先生。今日は数学の授業が入ってます」
ノラの動きが止まった。
嫌そうな顔をしてクローディアに振り向く。
「ノラ先生」
「わ、わかったよ……教師になるんじゃなかった……」
「俺は場所だけ教えてもらえればいいから、ほらノラは忙しくても俺は忙しくない。無職だからな、無職はいいぞ」
3人しかいない職員室が静かになった。
「あれ……俺の渾身のギャグが」
「クロー兄さん笑えないのはちょっと困るな」
「クロウベル様が良ければ副校長の権限を使い教師の枠を開けますか?」
ノラがそれだ! と、言う顔になった所で俺は首を振る。
「いや。遠慮しておく……自由無さそうだし安月給じゃ借金返せそうにも無いし」
「クロー兄さん。その安月給で仕事をしてる人の前で言わないほうがいいよ。あと思ってるより高いからね」
「そうなの!? 教師ってそういうイメージが」
「大きくは稼げないけどクウガさんの私財のお掛けでまだ安定してるよ、ゆくゆくは国を超えて冒険者ギルドと連携したいって卒業生就職先だね」
明るい未来だ。
理想では。
言っちゃなんだけどそのシステムは結局は傭兵作りなんだよな。
最終的には国の支援が大きければ大きい程最後は潰される。
危ない地域の選抜隊とか、死地へれっつごーってやつだ。
「クロー兄さん……難しい顔して心配してるけど学生たちの未来は、あのクソ校長もその辺は考えているよ」
「あっそうなの?」
ってかさりげなく『クソ』って言った?
確認しようとノラを見ると予鈴が鳴る。
学生に戻った気分だ。
正直いい思い出は一切ない。
「あっじゃぁ行って来るね」
ノラが出て行ったので俺もクローディアに保健室の場所を聞いて職員室を後にする。
使われていない教室達を眺めながら保健室。と言う看板の部屋に手をかけた。
「失礼しまーすっと」
白衣の天使がそこに居た。
「って、アリシアじゃん。ナースのコスプレ?」
「こすちゅーむぷれいじゃないよ!?」
「よく意味が分かったな……」
「クロウ君のおかけだね」
そういえば教えた気もする。
「じゃなくてだ。え、そのナース服は何?」
「ナース服っていうの? ここの保険の先生の制服だって。白衣と選べるんだけど折角だから可愛いほうを着てみようかなって」
「ナイス!」
思わずベッドに押し倒したいぐらいだ。
そうおもってベッドがありそうなカーテンをめくると、さわやか系の男性と眼があった。
慌ててカーテンを閉める。
「あの男は誰!?」
「クウガ君……だよ?」
まじで。あんな純粋な目してたか?
もう一度カーテンを開けるとブロンズ系の髪で片目は魔石で作った義眼が入ってる。髭は剃られていて浴衣ににた寝間着を着ていた。
一応めくってみると下着は着けている。
よかった……これで何もつけてなかったら、アリシアの前で何してるじゃ! ってツッコミ入れたかもしれない。
そもそも本当にクウガなのか?
トランクスタイプのパンツをちょっと引っ張って中身を確認。
でっぇぇぇっ!?
男として、ここは負けた。
日本人が外人に勝てない様に、この世界ではやや大きめの俺であるが、所詮オーク級には勝てないのだ。
「クウガだ……」
クウガは俺の手を跳ねのけパンツを抑える。
「な、何をするんです!?」
「いや、本物のクウガなのかなって……本物だよ」
クウガは衣服をしっかりと閉めると俺をまっすぐに見る。
最初の会った時みたいな好青年だな。
「この顔がなんであんなに憎悪の顔になったのか」
「たぶんクロウ君のせいと思うよ?」
「いやぁ不思議だ」
「聞こえないふりするし」
これは聞こえないふりじゃなくて、聞いてないふりだ。
それに、俺のせいじゃなくてアリシアのせいと思うんだけど、気のせいなのか?
「あの……アリシアさん。本当にこの人が僕の大親友なんですか?」
「ぶっ! げっほげほげほ」
アリシアさん!?
「そうだよ。クウガ君とクロウ君は魂と体を求めあった大親友。もうそれは愛だよ!」
アリシアさん!!? それ以上行くと違う意味で親友になる。
「クウガ! 違うから、このアリシアが言っているのは妄想」
「妄想……?」
「違うよ現実だよ!? だってクウガ君が困ったときに命を張ってまで助けていたし」
「それはその成り行きで……」
さわやかクウガが困った顔をしてる。
俺も困る。
「でも、ノラさんという女性は僕の事を『生きていては駄目な人間。学園の運営が無かったらそのまま死んでいれば良かったのに』と、悪人なんでしょうか?」
「…………善人じゃないけど悪人じゃないからな。ってか何でこんなことに。アリシア!」
少しきつめにアリシアにたずねると、アリシアは言いにくそうな顔をする。
「ごめんね。クロウ君全部私が悪いの。クウガ君が挨拶する前に一発殴ってくれって言うから」
「何で……裸でも見られたのか? 一発やらしてくれじゃなくて?」
「クウガ君?」
アリシアが笑顔なのに怖くなった。
背景に虎……いやオークがいる雰囲気だ。
寝間着姿のクウガもベッドの端に移動してる。
「じょ、冗談だよ」
「記憶が無いので僕が何を言ったのか……すみません。お力になれなくて」
「私も断ったわよ? でも全力で1回で良いからって……クウガ君は私に殴られて謝罪をしたいって……」
「誰も止めなかった?」
アリシアは頷く。
誰か止めろよ……これでもアリシア。めちゃくちゃ強いからな……俺のリハビリ訓練でも最初の頃は余裕でアリシア達のほうが勝ち越してた。
「そうなんです。話を聞く限り大変ご迷惑をかけたようで。僕が本当にこの世にいてはいけない人間なら記憶は無いほうがいいのではないでしょうか?」
さわやかクウガの意見だ。
さわやかになってもクウガはクウガ何だな。言いそうではある。
「ま、まぁ俺もまだ数日いる予定だし。一応は記憶の戻ったクウガと挨拶したいかな」




