第432話 この方法なら借金なんてすぐ返せるんじゃ
聖騎士団が用意してくれた馬車に乗り込むと外に止めて貴族馬車にフーロンが先に乗っていた。
お互いに見つめ合うので俺は一言「彼女いるよ?」と。
「…………挨拶する前に言う言葉?」
「もてない俺だけど、ほら美人局だったら困るからさ……一応確認しておかないと、と思って」
「…………美人局。私にメリットは無いです」
「まじで!」
思わず元気よく返事をする。
フーロンが不可解な顔をして俺を見る。
「やっと俺を正当に評価してくれる人がいて。と思って……これでも悪役令息だよ。人気になったらおかしいんだよ。じゃなくても2人の恋人に……子供とか。予定では子供は出来ないはずだったんだけどなぁ」
よっこらしょっと。馬車に乗り込むと、聖騎士隊の御者が馬車を動かしてくれる。
この馬車の中の会話は外に漏れない。と、乗り込む前に教えてくれたので安心だ。
別に秘密の内容なんてないけど。
「……する事したんですよね?」
「そりゃ当然」
「…………頭痛くなってくる」
俺が「馬車を止めて薬貰おうか?」 と、提案すると、青い魔眼でにらまれた。
「…………ふう。久々に会ったと思えば。相変わらずですね。カジノの討伐など」
「成り行きで。俺としては山奥に家建ててメルナとアリシアとゆっくり余生を過ごしたい」
サクラとスミレは別に2人の意見があるだろうから、個人に任せたい。
それが例え死ぬ事になっても俺としては容認するつもりだ。
「……100億も借金してるのに?」
「うぐ……ど、どこから」
「待ってる間に聖騎士の数人から聞いただけです。詳しくは知らないですけど」
「残り97億だから!」
「誤差」
変わる!
先ほど俺は3億枚ほどの小切手を貰ったのだ。
もうアンジェリカに土下座して土下座して、『不本意ながら足を舐めるから』と、アンジェリカの靴を奪った所で、今回の報酬を出してくれた。
後少し返事が遅れていたらアンジェリカの足を舐めていた。かと思うと恐ろしい。
周りの聖騎士隊はなぜか止めてくれなかった。
それに!! いくら損害出たからと言っても『ネクロノミコン』を奪って来るのは奪って来たんだ。
それだけで100億以上の価値はあるよ? 最後には奪って逃げもいいし帝国に売っても。とちょっと文句を言ったら笑顔でサインしてくれた。
「ぜんぜっん違うから。後……今回の事で勝手に巻き込んでごめん」
「……鑑定料は先払いで貰ってるし珍しい物を見せ貰った。……あれは世の中に出ていい物じゃない」
「そう言ってくれて助かるよ」
下手したら死んでいたしな。
それを伝えたら怒りそうなので黙っておく。
ばれないうちに話題を変えないといけない。
「もう一つ聞いたけど貴方が子持ちとは……」
「フーロンは?」
「……いたら鑑定士なんて辞めてる」
深くは聞かないほうがよさそうだ。
「所で何で馬車に?」
「……ギルドマスターから『転移の門』の調査を任されてる実物を見たら鑑定して。と」
フーロンが所属するギルドは……ああ、剛腕のウェンディか。
俺にマジックボックスをくれた人でもある。
懐かしいな、会いたいとは思わないけど。
「……貴方なら100億ぐらいの借金ならすぐ返済できそう」
「無理でしょ」
「……転移の門の権利を売ればいい」
「なるほど」
その発想は無かった。
転移の門を知っているのはごく一部。
俺や師匠はもちろん、冒険者ギルドの一部関係者。
一部。というのは帝国の冒険者ギルドは知っているが、ファーストのような田舎の支部になると知らされていない。
聖都でも聖王は知っていてもその部下の大半は知らないのだ。
確かに俺の知ってる情報を売れば100億ぐらいすぐに稼げそう。
レンタルでもいいんだ。
ん?
「俺がもし『転移の門』の情報を売ったらさ戦争にならない? あっという間に悪用するやつ出てくるよね」
「……なるよ」
「だめじゃん。それに権利っても俺のもんじゃないし門だけに」
何を言うんだこの女は。
俺は悪人であって極悪人じゃないの。
「……実は私が転移の門を調べるのはそれを封じるため」
「渾身のギャグが、今のは『もん』に『もん』をかけて……」
「……くだらないからスルーしたの」
涙でそう。
「封印か。何万年もかけて作った物が壊されるのは人間の傲慢かな」
まぁそれも仕方がない。
急いで助かる事もあるけど急ぎ過ぎも良くない。
「…………すごい!」
「何?」
「貴方にも人の心があったのね」
どういう意味だ。
──
────
聖騎士隊に連れられて2泊3日の旅。
絶対に御者を降りない頑固な旅の仲間ともお別れだ。
お礼に少し訓練をし、その様子をフーロンは鑑定しだす。
山に入り滝の裏に行く、見た感じわからない場所に結界があり、その結界を超えると魔力のこもった壁が出て来た。現代風でいると大理石に近いかな。
その壁を鑑定し始めるフーロンを引っ張り『転移の門』の部屋に。
「じゃっ行くのは俺1人だけでいいの?」
「…………ねぇこれ」
フーロンがまだ魔力の入れてない『転移の門』を調べながら話しかけてくる。
「AとBが繋がるのは聞いたわ。そのAとBをこう距離を近くすると自分の背中がみえるの?」
!?
「……あの変な事聞いたかしら?」
「凄いぞフーロン!!」
俺はフーロンの両手を握った。
「世紀の大発明だ」
「えっえっ」
「だって。フーロンが言いたい事ってセルフ壁尻って事だろ?」
「……壁? セルフ……?」
俺は壁尻をフーロンに教える。
以前メルナが転移の門に挟まり、俺がそのメルナの尻を触った事も含めて。
ようは1枚の板に挟まれた状態で下半身が勝手に触られるのを壁尻と言うのだ。
表では苦悶に悶える顔を見て、裏では苦悶に悶える顔を想像して触るという行為。
「……変な性癖教えないで」
「いや。メジャーだよ? 男性100人に聞いたら90人は知ってると思う」
「…………本当に……?」
「本当。で、セルフってのは」
「言わなくていいわ」
「こう自分の尻をペロンとめくって手ごろな物を」
「言わなくていいです!!」
怒られた。
そんな顔真っ赤にしなく怒らなくても。
何だったら唸ってる。
俺は教えられた『転移の門』に魔力を込めて反対側を鏡の様に映し出す。
鏡の向こう側に綺麗な女性がいた。
……ノラか?
俺の顔を見るとノラと思われる女性は早く来い。とジェスチャーしだす。
とても嫌な予感がする。
「…………私の事はいいから」
「ん。急がせてわるいな。じゃっフーロンまた」
「……ええ」
俺が『転移の門』をくぐるとその手をノラが引っ張る。
「クロー兄さん!!」
抱きつくノラをどうしていいか迷って軽くハグする。
いやさ。
子供の時はいいよ? ほほえましいじゃん。
今のノラは何歳よ、さすがに妹でもハグしたらアウトじゃない? と。
「クロー兄さん。兄妹でハグは常識だよ?」
ノラが俺の顔を見てそう言って来る。
「そうなのか……」
「そうだよ。メル姉さんやアリシア姉さんともハグはするし」
ノラが言うならそうなんだろう。
俺もノラをハグして再会を喜ぶ。
「ずいぶんと成長したな…………」
全く変わってない胸から視線を外す。
「クロー兄さん……」
「ま、まて。殺気を出すな殺気を。それよりも……ここまで迎えに来た? それともアリシアが記憶喪失とか」
ありもしない事をいって場を和ませる。
「そ、そうだった! クウガ校長がその……記憶喪失で……」
「お前かよ!!」
俺は思わず叫んでしまった。




