第431.5話 (他人視点)クローディア副校長の仕事時間
指で机を叩く音が聞こえた。
その音の場所はクウガ校長の机の上。叩いてるのは本人だ。
私の視線に気づいたのかクウガ校長は叩くのを辞め私を見た。
「ああ。ごめん……煩かったかな、クローディアさん」
「珈琲でもいれましょうか?」
「……珈琲は嫌いなんだ」
確かに飲んでいるのをあまり見た事がなかった。
一緒に仕事をして6年となるのに……以後気をつけましょう。
「お嫌いでしたか?」
「いや。飲めるんだ、飲んでもいるし、好きなんだけど……ちょっとある人を思い出して。というか、気に障ったらごめん」
「いえ。わたくしのほうこそ、気をつけますので、書類仕事に戻ります」
さて、学園に入る編入者。
現在孤児院にいる子供達の第二の場所の予定地。
ああ、学園の寮の増設もしないとですね。
書類には候補地がありますし、今回の出資金もほとんどが校長の手柄ですし、感謝しなければ。
トントントントントントントントントン……と。
斜め前を見るとクウガ校長がまた机を叩いていますね。
渡した書類も減っているようには見えません。
「っ!? ああ! ご、ごめん。五月蠅かったはずだ」
「いえ……もしかして午後にアリシア様が来るのとクウガ校長が机を叩くのと関係がありますか?」
「うっ! ええっと……無い……」
「そうですか、失礼しました」
この書類はこれでいいですね。
次に王国への遺憾の書ですか……なんともまぁ嫌がらせのする事です。
アリシア様がいた時は全面協力する。と言う形に収まりましたのに。
トントントントン……。
書類の手を止めクウガ校長を見る。
ふいにクウガ校長が私を見て来た。
「ああ! ご、ごめん」
「いえ……会いたくないのであれば、午後の予定は取りやめる事が出来ます」
「会うよ!?」
「…………そうでしたか。てっきり会いたくないのかと」
束になった書類を机で一度整頓させる。
職員室の扉が大きく開かれた。
扉のほうを見ると教師のノラさんだ。
手には小さい箱を持っており私の前に歩いて来る。
「おはよディアさん、これギルドで取り寄せたケーキ」
そう言うと、箱を開いて見せてくれた。
美味しそうなクリームの乗ったケーキが8個ほど入っている。
「もしかしてアリシア様の分も?」
「それは別にあるよ。ほら……そこの校長も一息入れたら?」
「え? ノ、ノラさん!? 何時から職員室に」
ノラさんは私のほうを見ては意見を求める顔をする。
「先ほどからクウガ校長は、少し変でして……仕事さえしてくれればいいんですが」
「…………大方、昔の彼女が会いに来るってソワソワしてるだけでしょ」
「っ! 彼女じゃない!」
突然立ち上がるので私もノラさんも言葉を失う。
すぐにクウガ校長は座りなおした。
「ごめん、怒鳴るつもりは」
「そうだね。彼女じゃないからクロー兄さんと結ばれたからね。そんなに好きだったらサラって逃げればよかったのに。クロー兄さんならそうするよ」
「僕だって!」
クウガ校長が大きく叫ぶ。
「『僕だって?』世界を救うからアリシアさんの事は放置して、他の女性と子供作った?」
クウガさんがノラさんの一言で椅子に座り、両腕で顔を伏せた。
しばらくすると少し鳴き声が聞こえてくる。
私と顔を見あわえたノラさんは慌ててクウガさんの隣へと駆け寄った。
私も同じく席を立つ。
「っごめん。ごめんなさい。その泣くとは思って無くて……クウガさんも頑張ったよ? あの人達が残した孤児院を未来の子供達のために維持してるんだから」
「そうですよ。クウガ校長は頑張っています。この学園に居なくてはなりません」
クウガ校長の顔があがると、すぐにハンカチで顔を吹き始めた。
「…………それって僕が鉱山を当ててお金持ってるだけだからだよね?」
私はノラさんを見て、ノラさんは私を見る。
少しの間があるとクウガ校長はまた机に顔を沈めた。
職員室の扉が静かに開く。
もしや、アリシア様がもう来たのかと思い顔を向けると長寿族のジークさんが職員室に戻って来た。
クウガさんの親友で、魔法の授業を担当する事になっている人だ。
「何をしているんだ……? 子供達の午前の授業は終わった」
「そのクウガ校長が拗ねてしまって」
「まったく……アリシアさんにどんな顔をして会えばいいのかわからないんだって、ジークさん何とかしてよ」
私とノラさんがジークさんのほうを見るとジークさんは実にぐったりした表情になる。
「今からそんなのでどうする。後からアイツも来るんだろ?」
ジークさんが言うアイツというのはクロウベルさん。
一時はこの学園で生活をし私達教師組とも縁の深い人だ。
クウガ校長は突然顔を上げてジークさんを見た。
「そうなんだよ! それこそどんな顔で。僕は彼に勝ちたいがために禁呪を使い彼と相打ち……いや意識があったから僕のほうが勝った。で……僕を憎くて殺したいだろうのアリシアやメルさんは僕を生かしたのだ。その後僕と会っても普段通りに会うしさ」
普段通りでは無いでしょう。と言うのは野暮な事でしょう。
ノラさんが「ボクは今でもクウガ校長が死ぬべきだと思うけどね」と、ぎりぎり小さい声で言う。
「ノラさん」
私が注意するとノラさんは小さく舌を出す。
「冗談だよ。1人でも子供達が強く生きるのは賛成。だから教師の件も受けた、クウガさんが2人の跡を継がなければ孤児院も学園も無理な話。正直ボクやディアさん1人じゃ無理だったからね」
「そうですね。わたくしもアリシア様の意思を継ぎたい。と思っていてもクウガさんがいなければ無理でした」
クウガさんが私やノラさんの顔を見て表情が明るくなる。
「そんな事よりだ」
ジークさんがクウガ校長の机の前にたち、見下ろしている。
「何が問題あった?」
「元帝国兵と元聖騎士の3人が職員として働きたいと外で待ってる」
「え、クローディアさんに」
「女だ」
職員室が一瞬沈黙した。
何度目だろう、クウガ校長を狙って働きたい。と女性の方が多く来るのだ。
「そのちょっと《《話をつけてくるから》》」
「午後までにはお戻りを」
「がんばる」




