第431話 ネクロノミコン完結編
四角い部屋。
壁はもちろん天井や床も対魔法を封じる頑丈な素材の壁で、これまたちょっとやそっとでは壊れない椅子に座らせらた俺。
俺の周りには筋肉むっきむきの男女4人が監視するようにたっており、目の前にはアンジェリカが座っている。
「ここは何所だ馬鹿野郎! だせええ!!!」
とりあえず叫ぶ。
びくっとなったアンジェリカが俺をまっすぐに見て来た。
とても嫌な予感がする。
「ここに来るまで素直に従って、部屋を見た後に自ら椅子に座り、一応機密情報だから特別な部屋に行くわよ。と伝えたわよね」
…………ほらすぐに答え合わせするしさ。
場のノリってのが欲しいよ。
「ほら。よく危ない水着を着てさ。何なんだこの水着は! って叫ぶシーンあるじゃん? あれを再現しようと」
「意味の解らない説明はしないでくれる?」
「……うい」
俺は殺風景なテーブルの上に『ネクロノミコン』を置いた。
全体的に黒い本からは黒い魔力が血の様に染みでては空気中に消えていく。
「これが本物……あっ。その前に説明するわね、本来であれば聖王様や副隊長のアイリンがこの場に居ないとだめなんだけどどちらもいないので、代わりに一般人の私が代理でこの場にいるから」
「いや。別にいいけど……聖王様か、いい加減高齢なんだから第代わりすればいいのに、元気にしてる? 顔ぐらい見たかったんだけど」
「そうね。忙しくしてるのを見て、私は涙が出そう」
それほど聖王の事を敬愛してるって意味か。
まぁ、さほど疑問に思ってない事を説明してくれるのはありがたい。
俺としては仕事をした、その報酬を貰う。だけなので場所や相手が多少違っても気にしない。
「私の立場もうるさい人多いのよね。お前はもう聖騎士を辞めたんだろ。とか……だったら今の聖騎士隊を強くしてほしいわ……じゃっ説明も終わった所で報酬を渡すわ」
1億枚! いやぁマジックボックスに入るかなぁ。
アンジェリカは俺に紙を1枚だしてくれた。
なるほど小切手か。
冒険者ギルドで発行してるもので、借用書もこういう紙。
魔法をかけてあってお互いの紙が一致すると引き落とせる仕様になっている紙の一つである。
「…………あのアンジェリカさん?」
「何かしら?」
アンジェリカは見た事もない手袋をして『ネクロノミコン』を回収してる最中だ。
「金貨7枚って書いてるんですけど? 白金貨にしても少ないし。え? 友達価格にしても俺暴れるし、今後の付き合い方変わるけど? なんだったら今直ぐにこの聖都滅ぼそうか?」
段々と腹立って来て、ちょっと怒気を含む。
周りの聖騎士達の表情が変わった。
むろん、アンジェリカも警戒を……してない。
それ所が『にたー』としてる。
「そう来ると思っていたわよ? 当たり前の反応で助かったわ……このまま中身も見ないで帰って後から文句言われても困るし」
「…………どういう意味だ?」
「今回の事で、教会にあった薬品の総交換。原因不明のヒーラーの高熱。毒薬の効果が10倍以上の件。それに伴う重病人や死人の増加。現在、《《高齢の聖王》》様率いる特務が患者を救済してる事。その損害は金貨数億枚じゃ足りないぐらい」
…………い、言い返せ俺!
「そ、それは俺と関係ないんじゃないかなぁ……」
「最悪闇カジノを潰すかも、と思っていたけど聖都を潰されそうになるとは思わなかったわ……支配人の攻撃に備えないといけないし」
「あっ……それって小太りで中年でさらに、ぐふふって語尾の?」
「ずいぶんと仲よさそうね。それであってるわ」
だったら話はまた変わってくる。
「その小太りの支配人なら、本に食われたよ。筋肉マッチョの用心棒が新しい支配人……もっとも、長く続くわけないだろうけど」
「どういう事かしら?」
「いやだから、封印解いたら食われた」
アンジェリカが頭に手を当てて考え込んだ。
「嬉しさのあまり!? あっにらんで来る」
「当り前よ!! 今回の騒動がちょっとわかったわ……そうならない様に手に入れて来て! って頼んでいるのに。よりにもよって封印解く? だったら最初からっ……いいえ、こちらの説明不足ね」
「そうだそうだっ……な、何でもないです」
にらんで来るし。
「それはそうと、この本のほうが本物よね? 偽物とすり替える案は凄いわ……さすがクロウベル君よ」
「まじで? 元々は子供達の発想なんだけどな」
「教育方針考えたほうがいいわよ」
突然に怒られた。
理不尽だ。
俺の案なら褒められて、子供の案なら怒られる。
「で。本物そっくりな偽物って事無いわよね? 偽物と本物の見比べ方ってあるの?」
「本持ったまま『ワガメイヲササゲヨ』って言って」
「ワガメイヲササゲヨ。ね……ええ!?」
黒い魔力が本からあふれると本が開きページが散乱する。
黒い魔力の手が伸び獲物を探すもアンジェリカはその本を床に叩きつけた。
その上に無数の魔石を本の周りに飛ばした。
魔石は魔法陣の円を浮かび上がらせてその魔石が黒く濁ると音を立てて割れる。
「皆にげっ──」
叫ぶアンジェリカの横にたって本を拾いページを閉じる。
すぐに封印帯が本をがっちりと閉じた。
髪がぼさぼさで青い顔をしたアンジェリカに本を差し出す。
「ほい。本物でしょ」
まぁ俺もアンジェリカをみすみす取り込まれるような事はしたくないので最悪は腕を切り取ってでも本を床に落とすつもりだった。
「………………す……ぶっころすから!!」
やっべ、目がマジだ。
こういう時に止めるのが回りなんじゃないの!? って周りの聖騎士が皆倒れてる。
職務放棄と言うやつだ。
「俺は悪くない!」
「君だけが悪いわよ!!」
滅茶苦茶キレて俺を斬ろうとしてるアンジェリカにどうしようか悩んでいると、扉が開かれる。
肩で息をした男性が入ってくると部屋の中を見て大声で叫ぶ。
「代理! 聖王様から……緊急連絡で……す。予備の薬草園および錬金術組合のポーション製造所が全滅の恐れあり、確認を……げっほげほ……」
「ちっ! この男を斬ってから行くわ!」
俺は壁沿いに逃げてどうにか逃げるつもりの恰好をする。
「…………代理。緊急だそうです……げっほ」
「…………あーもう!! うちのアリシアを娶ったと思えば。そうねド変態で魔女まで娶ったのを忘れていたわ」
うちのって。
アリシアは聖女であって別にこの国の物じゃないし、なんだったらアンジェリカの物でもない。
後半に関しては、そう。
不本意ながらド変態と呼ばれるし、魔女を好きになった。
だからって怒られるつもりもないけど。
「いや。アリシアは物じゃないしメルナも言うほど悪い事は──」
「じゃぁ君が極悪人」
「…………否定はしない」




