第430話 世の中相手を褒めればなんとかなる……かも
テーブルの上には2つの『ネクロノミコン』それを同時手にとってはフーロンは鑑定する。
俺の意思は届いたはずだ。
偽物のほうを本物と言え! と。
言え! 言え! 言え!!
そのフーロンは俺と小太りの支配人を見ては深呼吸する。
「《《魔導書》》としてはどちらも本物」
「ぐふ? どっちが本物のネクロノミコンだっぐふ?」
「それは鑑定は無理。どちらも封印されてるから」
流石フーロン。
間違えた事は何も言って無い。
「や、役に立たないぐふっ! 本当に今はやりの鑑定士なのぐふ?」
フーロンの魔眼が青白く光る。
思いっきり不機嫌な顔だ。
「あなたがその指にしてる指輪は。サラマンダー欠片の指輪、石の大きさからみて300年ほど前に作られた錬金術師グランダの作品。価値としては金貨400枚」
「あ、あってるぐふ!? 見ただけで……」
流石はフーロン。
「じゃっどっちも本物であって偽物って事かぁ」
俺はわざとらしく聞くとフーロンも頷く。
「封印されている以上解除しない事には、私の鑑定も詳しくはわからないわ……逆に封印された状態でこの魔導書を『ネクロノミコン』と鑑定した人間は信用しないほうがいいと思う」
「ぐふ……」
頃合いだな。
場が温まって来た。
「支配人」
「なんだげふ!! これは本物だげふ!」
「恩師から本物であれば封印を解く呪文を聞いているけど、まぁ偽物のそっちは反応しないと思うけどさ」
「教えるでゲフ!」
そりゃもう教えるよ。
ポケットから呪文を書いたメモを渡す。
『ワガメイヲササゲヨ』
「ワガメイヲササゲヨ。げふ?」
小太りの支配人がもってる本物が真っ黒に輝く。
本が突然開きページが物凄い勢いでめくられていく。
そのページから黒い魔力が手のようになり、小太りの支配人を掴み本の中に引っ張る。
近くにいたひょろっとした用心棒がその手を掴むと、そのひょろっとした用心棒も一緒に本の中へと吸い込まれていった。
ネクロノミコンが空中から地面に落ち、本が閉じると……本にあった封印帯ががっちりと閉じた。
部屋の中には俺とフーロン。筋肉質の守るべき相手がいなくなった元用心棒だけになる。
落ちた『ネクロノミコン』を拾って帰ろうとすると、筋肉質の元用心棒が俺の腕を止めて来た。
「なに?」
「てめえ!! オーナーを何所にやった」
「目の前にいるじゃん」
筋肉質の元用心棒が俺を見ては固まる。
背後からフーロンの声が聞こえて来た。
「ど、どう言う事……くろ……仮面の男さん」
「フーロンちゃんでもわからない?」
「ちゃんって馴れ馴れしい……」
「じゃぁ説明するか……」
さりげなく偽物の『ネクロノミコン』を筋肉男に手渡すと、筋肉男は俺の手をはじいて本を飛ばした。
吸い込まれたくないのだろう良い判断だ。
「用は細かい事はいいんだよ。そこの筋肉男。名前は?」
「言えるわけないだろ!!」
「じゃぁ言わなくていいや。今日から君がここのカジノのオーナーだ!!」
「へ?」
まだわかってないみたいだ。
──
──────
かっぽかっぽと貴族馬車の中でフーロンと2人っきり。
俺の手元には『本物』のネクロノミコンがある。
フーロンが何かを言いたそうにしてるので、俺は仮面を外してフーロンを見た。
「何?」
「…………何。じゃないわ……何なのこの結果」
「どんまい!」
「…………殺していいかしら」
「やだよ!?」
何言うんだこの女は。
「良かったのかしら?」
「いいんじゃない? 裏事情を知る2人が消えた。あの部屋で生き残ったのは3人だけ。カジノの頭なんて誰か運営しても同じだよ。そもそもあの威張っていた本物いただろ? あれだって居ても居なくもカジノは運営されてる」
俺は筋肉質の男を褒めて褒めて褒めまくってその気にさせた。
反対意見なんてないんだもん。
そのうち筋肉男も俺は1番偉いんだ。と、思い始め周りのスタッフに俺がオーナーだ! と宣言しに回る。
で、俺とフーロンはどさくさに紛れて馬車で帰宅中だ。
実質の損害も与えてないし追っても来ない。
ハッピーエンド。と言う事だ。
さっきから納得のしてない顔でフーロンちゃんが質問してくるけど……。
「そうなんだろうけど……それじゃ。あの2人は何で本の中に吸い込まれたの?」
あれか。
何でも聞きたがるな……聞いても面白くないだろうに。
「面白い面白くないじゃなくて真実を知りたいの!」
「俺の心読まないでくれる? フーロンちゃんが故意に『魔導書』として鑑定したのは『本物のネクロノミコン』。本当はあそこで俺に協力してくれればよかったのに」
「鑑定士として嘘はつけないわ」
はいはい。生真面目ですもんねぇ。
だから恋人がいないんだ。
「あの刺していい?」
「やだよ!?」
「じゃ、上から下を見るような眼辞めてくれる? まるでだから彼氏の1人もいないんだって顔。よくギルドでされるのよ?」
青い目を光らせて怒られた。
「し、してない。あれってさメルナ曰く数千から数万人の命を吸ってる訳。そんな魔導書を予備知識もない一般人が封印説いたって殺されるよ。俺の目的はこの本を手に入れる事。本来世に出たらダメなのを回収してって話でさ。いわゆる正義の味方」
「…………正義、一番遠そう」
「言った後にあれだけど俺もそう思う、実は──」
俺はフーロンに、なんでカジノに潜入したかまでを馬車内で話す。
離し終わった後にフーロンはゆっくりと息を吐いた。
「だったら先に教えてよ……偽物を本物っていうぐらい手助けした」
絶対にないな。
と、は口が裂けても言えない。
そのうちに馬車はゆっくりになり聖騎士団に囲まれた。
扉を開くと、青筋を立てたアンジェリカが俺の胸倉をつかむ。
「何してきたのよ!! 高濃度の魔力! 教会で育ててる薬草が一瞬で枯れポーションなんて毒薬になったのよ!? 出現地域しらべたらあの場所じゃないの!!」
「し、仕事はしてきたし……」




