第423話 ギャンブルに醒めた瞬間
「『骨は新鮮なほどしゃぶれば旨い!!!』」
俺が叫ぶと墓地にある闇カジノの扉が開く。
筋肉質でスキンヘッドのシグマが俺を見ては直ぐに扉を閉めようとする。
すぐに足を入れてその扉が閉まるのを防ぐ。
営業の心得。
扉が開いたら足をいれろ。
客が騒いだら骨折したと騒げ!
と昔読んだマニュアル本にあった。
「やだなー入れてよシグマくーん」
「馬鹿。聖騎士副隊長を連れて……いえ! ここは普通の墓だ。帰ってくれ」
俺の後ろにはアメリンが一緒にいる。
ってか。驚いて後ろを見る。
「副隊長? アンジェリカじゃないの?」
「アンジェリカ先輩は既に引退してます。私が現在の副隊長ですが? それよりも……本日は『闇カジノ』の摘発ではありません……この人がどうしても。と言うので。それに以前から場所はしっていましたし……本日は客ですし、今後も私が副隊長の間は摘発はありませんので、それでも墓守としてしらを切るのであれば」
「…………た、頼むから騒ぎだけは起こさないでくれよ。やっと就職したんだ」
俺とアメリンにマスクを渡すとシグマは闇カジノの中にいれてくれた。
地下への階段を歩きながら気合を入れる。
「どうせ勝てないのに……」
「勝てる!」
「あまり聖女に迷惑をかけないでよ? 今回は特別に私がお金貸すけど」
「…………そう、それなんだけど。もしかして俺に惚れてる?」
アメリンにいきなり足を蹴られた。
階段を数段飛ばして落ちそうに、手すりが無かったら落ちてた。
「あっぶ」
「先輩や聖王様からも聖女様達の事を頼まれてるの! いくら腕が立つからって、聖女様もなんでこんなゲス男を好きになるんだろう……」
「本当なんでなんだろうな」
「……こっちに聞かないで貰える? それよりも白金貨5枚」
「6枚にして返すから」
「5枚でいいわよ……」
白金貨は1枚で金貨100枚分。
話をするだけで500万も貸してくれるってやばいな。
だからこそ負けるわけにはいかない。
カウンターでコイン50枚に交換して、ハイ&ローの島に行く。
先ほどのディーラーの前に座り金貨1枚をかける。
負け。
次は金貨2枚をかけた。
負け。
次は金貨4枚をかける。
ディーラーの数字は8。俺は下が出ると予想して次のカードは5。
これで俺の…………。
「勝ちだああああああああああああああ!!!」
思わず叫ぶと、周りの客も俺を見る。
ぜえぜえと息をして金貨8枚を受け取る。
これで俺の金貨は残った金貨は51枚。
「……………………むなしい」
これって青天井のカジノでしか出来ない方法であるが、最初の掛け金分しか増えないのだ。
それに。
ディーラー側だって馬鹿じゃない。
「兄ちゃんよ。やっとかっても金貨1枚だ」
「しっとるわ!」
「なら良いけどよ……兄ちゃんって伝説の借金王だろ?」
「なにそれ!?」
「っと……別人か? 冒険者でもないのにあっちこっちから金を借りて逃げてる男がいるってな。その男に弱みを握られた女は子供とともに造花を売ってる。というわけだ」
ぐぬぬぬぬぬぬぬ。
俺の情報がもれまくっている。
さすが闇カジノ。
「100億枚って噂があるが……別にここのカジノで稼いでいもいいだろうけどよ。何百年いるつもりだ? ああ、兄ちゃんじゃなければ気にしないでくれ。この世の中にそんな奴がいるって話だ。で? どうする……まだ金貨1枚稼ぐためにやるのか?」
「ぐぬぬぬぬぬぬ」
そう、あと金貨99億999……とにかくいっぱい稼がないといけない。
「そこまで挑発されたら俺だっておとこおおおぶべ!」
思いっきり舌を噛んだ。
誰かか俺の頭を叩いたせいで舌をかんだのだ。
いあい。
後ろを振り返ると鼻まで隠すアイマスクのメアリンだ。
「挑発にのってどうするの」
「いや。でも……まだ51枚あるじゃん。ようは掛け金を増やせばいいわけで……コイン5枚、いや10枚かけていけば。5回中に1回勝てば……」
確率論で絶対に勝てる。
2連続5回も外すなんてありえないんだし。
「ちょっとこっちに」
アメリンは俺の手を引っ張る。
俺と勝負していたディーラーが「兄ちゃん逃げるのか? あっ女に言われて帰るのか。じゃぁな」と挑発して来た。
はぁ!?
逃げるとかないし。
というか。引っ張る力が強い。
柱の影まで連れ込まれると、先客の男女が熱いキスをしていた。
アメリンが咳払いをすると、身だしを直して柱の影から出ていく。
「え。襲われる? 悪いけど俺にはアリシアとメルナが……あっ。もしかして既婚者にしか燃えないタイプの人?」
「黙れ」
「はい」
怒っているようなので黙る。
じゃぁなんなんだ。
「いいですか? あのトランプはイカサマです? よく見てよ……あのディーラーが右から開く時は7から上。左から開く時は8から上……そのトランプは普段はテーブルの下にあるね」
「………………なるほど。じゃぁ取っちめるか」
「まったまった!」
取られた金を取り戻そうと柱の影から出ようとすると、やっぱり腕を引っ張られる。
「騒がれたら困るの! 闇カジノは正式には認められてないけど聖都には必要なのよ……ここはまだ良心的よ」
「イカサマヨクナイ。オレセイギノミカタ」
「しなくていいっていうの!」
あ、本気で怒ってる。
「じゃぁ勝てないだろ……ギャンブルってのはなぁ客は公平じゃないとだめなんだ」
「公平にしたらカジノ側が潰れるでしょ?」
確かに。
秒で論破されてしまった。
日本でも海外でも結局は運営が勝つようになってるからな。
「噂ではカジノ島だけは違うみたいだけどね」
「じゃぁ俺がここに来た意味ってないんじゃ?」
「無いわよ。私がここにいるのは貴方に現実と暴れないために監視するためだもの」
まじかよ。
来て損した……あーあー一気にやる気なくなった。
別にイカサマでもいいのよ。俺が勝てれば。
それがなくなった今やる気も無くなる。
「帰る」
「それがいいわね。もうそろそろ聖女様の仕事も終わってるでしょう。ホテルまで送るわよ」
「……どうも」
──
───
なるほどなぁ。
闇カジノからでると墓地前には聖騎士隊の馬車が止まっている。
俺はその馬車に詰められてホテル前で輸送される。
これって俺の事が心配じゃなくて。俺が何かしないように監視してたわけか。
はー参ったねどうも。
馬車を降りると仮面を外しい服を着替えたアリシアが宿前で待っていた。
俺に気づくと走ってくるので、受け止めくるっと回転させて地面に降ろす。
「あ。ありがとう……重く無かったかな?」
「重かった」
「今日から絶食するね!」
「しないでくれ……別に丁度いいんだって。死ぬぞ」
「大丈夫だよ? 回復魔法かけるから」
余計に心配だ。
「それよりも、ごめん金貨9枚負けた」
「クロウ君が負けたの!?」
「大丈夫だよ。あの9枚は私のお小遣いだから」
胃が痛い。
そんな金を俺に貸すな。
「アリシア様。今回もお疲れ様でございました」
「アメリアさん! いつもありがとうございます」
2人が挨拶をして俺は一歩後ろに下がる。
世間話をしている2人を見ると、俺が1人取り残された感じがする。
何か皆大人になっていくんだなぁ……おれなんてほとんど変わってない。というのに。




