第402話 金色の宝珠
『転移の門』抜けどこかの地下室に出る。
階段を上がると周りは古い共同墓地、アンジェリカが腕を伸ばして体を伸ばす。
「いきなりでごめんね」
「え? ああ……聖都に用があったし別に……蜃気楼の城に行く所だったし」
「あの城ね……その前にちょっと用事いいかな? そうしたら送ってあげる」
「まじで。じゃっ頼む」
「頼まれました」
共同墓地から聖都まで馬で行く。
近くに聖騎士が待機していて、アンジェリカはその聖騎士に挨拶すると馬を借りたのだ。
聖都まで来ると懐かしさでちょっと泣きそうなる。
あの時はみんないて楽しかったなぁ。と。
「泣いてる?」
「泣いてない!」
「そう? じゃっとりあえず……ここで待って。あっだめね門兵!!」
アンジェリカが大声で叫ぶと街の門を守ってる兵が沢山くる。
その数ざっと30人。
多すぎ!!
「この男を縛って見張っていて」
「逃げないよ!?」
「目を離したら消えると思って」
兵が敬礼すると、俺はもうす巻きにされる。
手足を縛られ地面に転がされた。
──
────
しばらく30人以上の眼にさらされていると、馬車の音が聞こえて来た。
一斉に兵が離れると中の見えない貴族馬車が目の前で停まる。
御者とは別に前に座っているアンジェリカが俺を見ては「拘束といていいわよ」と言って来た。
短く『水槍』を詠唱し手足の拘束を解く。
周りの兵士の驚く顔を見ながら固まった手足を動かしてみた。
「どう? 兵士たちは」
「どうもこうも、見てるだけだったし」
これ以上にしてくるなら、俺は多分暴れていた。
が……しっかり命令だけをこなしてるんだ……俺も暴れたくても暴れられない。
「はーい。兵達よ! 協力を感謝する」
アンジェリカが敬礼をすると兵達が一斉に敬礼を帰す姿はなぜか感動さえ覚えた。
「さ。中に乗って、送るわ」
「どうも」
俺が貴族馬車に乗ると見知った爺さんが座ってる。
「あっ聖王じゃん」
後頭部をいきなり叩かれた。
後ろを見るとアンジェリカが鞘で俺の頭を叩いたのが分かる。
「聖王様でしょ!!」
聖王バルチダン。
クラック王国の中にある聖都タルタン。
身分的には王よりも下なはずなんだけど、権力としてなら多分かなり上だろう。
と、言うか俺。
聖都タルタンばっかりきて王都クラックに行った事が無い。
行く意味もあまりないけど……なんならゲームでも地名だけだし。容量問題だったのかな?
「はっはっは。アンジェリカよ大丈夫ですよ。先日振りですかなクロウベル殿」
「え、あーそうだね」
半年以上前にスミレ問題で『転移の門』を使わせもらった事がある。
その時よりも年取ったかな? 老人だったのに余計に老人に見える。
俺が馬車に乗り込むとアンジェリカも乗り込んできた。
思わず、一緒に乗るの? と思ってみると小さい声で「聖王様に何かあったら困るでしょ!」と怒られた。
聞こえてるはずの聖王バルチダンは微笑みだけで返事をする。
「事は急を要してます。アンジェリカに『転移の門』を使わせ帝国や各地の動きを調べてもらいました」
「ほうほう。戦争でも始めるの?」
「違うわよ! 聖王様は平和主義よ」
「はっはっは。アンジェリカよ、そう思ってくれるのはありがたいが……見せかけの平和もかなわない弱い人間だ」
「聖王様……」
2人で特殊な空気感を作られると俺が何をしゃべっていいか。
馬車から窓の外確認すると聖都から離れていくのがわかる。
「クロウベル君」
「はい?」
「ちょっと、足を組んで返事しない!!」
口うるさい。
足をまっすぐにして狭い馬車で聖王を見る。
「そのままでもいいですよ」
俺は足を組み直した。
隣に座っていたアンジェリカが俺をにらんで来る。
「で、俺としては蜃気楼の城まで送ってくれればいいわけで。別に同窓会をしたいわけじゃ」
「聖王様が話をしたいの!」
「アンジェリカ」
「はっすみません」
やーい。怒られてやんの。
うぐ!
殺気無しで脇腹を刺された。
どつかれた、じゃなくて刺された。
「これはいけない! ヒール」
「聖王様!!」
聖王が俺の傷を癒してくれる。
アリシアとはまた別の温かさみたいのが傷に染みこみ痛みを抑えてくれた。
気づけば完治。破れた衣服しかない。
「アンジェリカ……気をつけるように」
「も。申し訳ございません」
「まったく、気をつけるように」
「あんたねぇ!」
聖王ににらまれてアンジェリカは大人しく座った。
まったく、これで子持ちなんだからもう少し大人しくなってもいいのに。
「さて……クロウベル君を呼んだのはほかでもない。消えた2人の事だ」
俺は一呼吸してしてから聖王を見る。
「記憶がある?」
「これでも聖王なのでね。とはいえ……2人の記憶は日に日に無くなっていく。君がこの街に来て暴れた事でさえ記憶が曖昧になっていくのだ」
「私のほうはさっぱり。違和感はあるわ……例えばスニーツ家の事覚えてるかしら?」
スニーツ家。
なんだっけそれ。
「街の外れにある、あなたが滅ぼした悪徳貴族よ」
「ああ!!」
思い出した。
アリシアの実家だ、親権を盾にしてアリシアの利権だけを使おうとしたやつら。
「滅ぼしたって当主は生きてるだろ?」
「ボケちゃってるけどね」
「ボケてるかぁ……」
「いもしない娘の名前を言ってるし」
いるんだけどな。
「アンジェリカには、周りの情報を集めて貰っていたのだよ。消えた2人に残る違和感。竜人様に会いにいくのにも霧が凄くてね……霧と言えばクロウベル君の事を思い出してね。その情報も探してもらっていたのだ」
「あー道理で俺を見つけた時、アンジェリカがほっとしたのか」
「そうよ……あっちこっちに行っていい加減定住したほうがいいわよ」
定住先考える予定だったんだけどな。
「所で2人が消えた原因は何かね?」
「何って……」
聖王が質問してくるので、俺は嘘偽りなく喋る事にする。
「アリシアと付き合うようになったら、クウガがブチ切れてとある自称神に頼んで俺に嫌がる事をしろって願ったらしく、俺の嫌がるように恋人2人の存在を消した」
馬車が進む音だけが聞こえる。
2人とも喋らない。
それでも聖王がやっと口を開いた。
「それは……その……」
「信じられない!」
うお。アンジェリカのほうが大声を出す。
ってか怒ってる? 怒ってるよな。
「恋人の取った取られたってアリシアの気持ち考えてないじゃないの!」
「え、まぁ……そうだろうね」
「クウガもクウガならアンタも一騎打ちするぐらいしなよ!」
「え、したよ?」
「したの!?」
怒っているアンジェリカがちょっと意気消沈しだす。
「それこそナイの背中で襲ってきてクウガは振り落とされて行方不明。俺としては話し合いで済ませるつもりで、ダメなら開けた所で1発殴られても……いや、俺だって心臓取り出して渡したのに、受け取ってもらえなかったよ」
「はぁ……男達って。そのはぁ……後……キモイよ」
アンジェリカが物凄い落ち込んでいる。
ちらっと聖王を見ると「彼女の子の父親はクウガ君だ」と短く言う。
ああ! そういえばそうだね!!
アンジェリカから見ると複雑か。
この世界、重婚ありなので問題視されにくいもんな。
「で、話を戻そう。クロウベル殿、これを君に渡したくて」
聖王は懐からビー玉サイズの球をくれた。色は金色だ。
「きんた──」
「金の宝珠だ!」
「いやだから金た──」
「金の宝珠よ!!」
だって金色の球じゃん。
「あっもしかして。金色の棒も──」
「つけるわけないでしょ!!」
怒られた。
聖王が咳払いをする。
「代々聖王の魔力を込めた宝珠だ。この宝珠1個で王国は吹き飛ぶだろう」
ひゅー……思わず変な口笛が出る。
簡単に言うと核爆弾みたいなものか。




