第41話 もしかしてくさい?
ノラの死刑宣告ともとれる提案を聞いてうなだれる。
「クロー兄さん。あのボクは意見を求められたから言っただけだから……」
「ああ、いやそんな予感はしていた。こうもノラから完璧な案をだされると」
「ボクの意見であって完璧じゃないからね?」
ご謙遜を。
俺がノラにたいする信頼はなんだ? と言われると何だがわからんが、同じクウガから捨てられた組としては気が合うのかもしれない。
「師匠……どうでしょうか」
「ノラの意見に賛成じゃな。小僧の呪いを解く、アリシアの病気を治す、どっちにしろ一緒にいたほうがいいじゃろうし……じゃがあんまりワラワが関わり合うのも……後はそっちの意見じゃろうな」
そういえば師匠はこっそり観察するっていっていたっけ。
「とまぁ、そっちは、クィル。ミーティア」
「クィルはそれでイイ。呪いの勉強、そこの三角帽子とイッショに出来る」
「勝手にミーティアちゃんの名前を口にしないで欲しいんですけどー小さいのに頭いいな」
ミーティアがノラに対して悪態をついてくる。
ノラの身長が140前後で、ミーティアの身長も140前後だ。
どっちもどっちである。
「パン10個買ってこいって頼まれて数忘れて30個買ってくる奴に言われたくないわな」
「!? ど、どうして知ってる。え、いやアリ姉ちゃん助けて。襲われる……ロックされた」
「クロウ君?」
「ち、違う! クウガから聞いたんだクウガから!」
しまった。
ミーティアパン事件では俺は全く関係ない! だってその場にいないんだし、最初の街でのイベントなはず。
慌ててクウガに罪を擦り付ける。
「僕ですか?」
俺はクウガの肩を強引にひっぱると無理やり肩を組む。
「協力しろ、そうしたらノラの提案を飲む。俺はクウガを聖都タルタンまでは手助けする」
クウガの呪いは解けなくてもアリシアのほうは良くなる可能性もあるし、この世界を知っていたミリンダの手紙にも聖女が鍵って書いてたしなぁ。
俺がクウガに助けを求めると、クウガはミーティアの方を向いた。
「ごめんミーティア。ミーティアがあまりにも可愛くてつい話してしまった」
「ばっ! クウ兄ちゃん!? ほ、本当の事だしクウ兄ちゃんは悪くないよ。そんな事よりそれを覚えてるド変態の方が気持ち悪い。クウ兄ちゃんの助けを求めてかっこわるいー」
「ミーティア!」
クウガは怒るがおれは半笑いをする。
なに子供のする事だ、こんどミーティアが嫌いなピーマンを服の中に沢山いれる刑にしてやろう。
アリシアが「ふう」と小さくため息をつくと俺と師匠を見た。
「あのー先生は大丈夫ですか? 基本引きこもるって別れ際に」
「ん? ああ……色々と思う所はあるのじゃが元々ワラワはアリシアを助けるために追って来たのじゃ」
「先生……」
アリシアは俺にも向き直った。
「クロウ君もごめんね。先生と一緒に旅をしたかっただろうに、私のために」
「俺も同じ弟子としてアリシアが黙って死ぬのは嫌だったし、師匠は逃げないからいいかな」
「ワラワは逃げるぞなのじゃ」
即答の師匠の言葉をあえて聞き流す。
「とりあえずは、改めて聖都タルタンまでは付き合う。リーダーはクウガ、君だから行きたい場所決まったら教えて」
「わかり……ました……」
「じゃっかいさーん! まだ暫くイフにいるんだよね?」
さて、俺としても温泉に入りたい。
だってまだゆっくり入ってないよ。入ろうとしてアリシアと出会った。
夜に入ろうとして、師匠と卓球をした。
そんな感じである。
「いえ。明日のクエスト終えたら出ようかと」
「早いよ!」
「すみません……」
つい怒ってしまった。
「い、いやクウガがリーダーだ! う、うん。ちなみになんで?」
「もうそろそろ稼がないと」
「そんな貧乏パーティーなの!?」
「クロウ君?」
俺が驚いて返事をすると、アリシアが笑顔になった。
あ、やばい怒ってるっぽい。
「僕はクロウベルさんと違って貴族でもないし実力も無く仲間の体調も心配出来ない冒険者なので……」
「うお……や、ヤンデレしないで。て、手伝うからさ。あっ俺たちの資金使う?」
「馬鹿にしないでください!」
ひぃ怒った。
「僕だって冒険者なんです。その今後は……一緒にクエストするとおもいますが、今現在で他人の財布を狙うような事はしません!」
「ご、ごめん。ええっとこの辺でいい金策は」
この辺での金策というと、なんだっけかな。
「ちなみにクエストは?」
「地下下水の魔物退治です」
まだ地下下水いってるのか、どこの街でもあるけどもうそろそろ美味しくないだろうに。
「フェニックスの卵の回収は? あれは比較的楽だし副産物も美味しい」
フィニックスの卵はフィニックスという魔物の巣にいって卵を持ってくる比較的楽で周回すれば美味しいクエストである。
「それは……初日にクィルが食べきって出禁に……」
「ん? もしかして昨日食べていた奴って」
「ん。あれは違う、でも……卵すキ」
じゃぁ駄目か。
「虹の輝きは?」
「ランク総合Bからですね、僕らは総合Dです」
「ええっと、温泉調査は?」
「その……僕が女湯に間違えて入ってしまって……クエスト失敗しました」
段々とクウガの声が小さくなっていく。
「ああ、そう」
「クロウ君」
アリシアが静かに俺の名前を言ってくる。
「な、何かな?」
「クウガ君を手伝うんだよね?」
「そうだよ」
あれ、アリシアが怒っているのはわかるけどなんで。
ノラが少し飽きれたような声で会話に混ざって来た。
「クウ兄さん。クウガさんの意見を否定しないほうが……ボクに接する時はちゃんと話聞いてくれるのに……」
「ああ、そうか。もしかして俺がダメだししてるって思ってた?」
「違うんですかっ!?」
クウガが顔を上げて俺への圧が凄い。
「いや、効率を求めると言うか……チマチマ大変かなって」
「クロウベルさん、冒険者というのはコツコツが大事なんです。一攫千金はあればいいですがどれも命にかかわる。そんな仕事を孤児院の子供たちに教えれると思いますか?」
たしかに、孤児院に戻って将来は一攫千金を狙ったほうがいいから、地味な仕事は全部やらないほうがいい。と、は教えれない。
変な所で真面目というか、主人公だから仕方がないのか。
「はい、俺が悪かったです」
「そのクエストをすれば、ためた金額で馬車を買えるので少しは楽かな。と」
「お、馬車いいね」
「ですよね」
お、少し機嫌は直ったみたいだな。
馬車は最大で8人乗れるという大型の移動手段。
今現在が俺達をいれて7人だし丁度いいだろう、てっきり馬車を貸し切っていくのかと思っていたがこれは便利そうだ。
御者のおっさんと旅するの結構気を使うんだよね。
「まっわかったよ。下水道の魔物討伐は手伝う」
「ん。アリシアよ。ワラワと留守番するのじゃ」
「え? 師匠もしかして下水道が臭いから来ないんですか? 大丈夫です、師匠は下水道に負けないぐらい、いい匂いいっ! バババッバババっ!」
俺の顔面に杖が飛んできて衝撃で頭が割れそうなぐらいに痛い。
テーブルの周りでごろごろとのた打ち回る。
「魔力が無いって言うアリシアを戦闘が起きそうな所に連れて行けるわけないのじゃ! あとワラワは臭くな……臭くないのじゃ……臭くないなのじゃ?」
「もう! クロウ君! 先生は昔から良い匂いしかしないよ」
「アリシアよ、本当にワラワは……」
「大丈夫だよメル姉さん」
ノラは師匠に抱きつくと思いっ気に匂いを嗅いだ。
うらやましいいいいいいいいいいいいいいい!
直ぐに顔をあげて「ほら」っていうと師匠も安心したようだ。
「では俺も」
痛い頭をおさえ師匠に抱きつこうとして、まわりにどんびかれる。
特にクウガの義妹を自称してるミーティアが、ゴミを見るような目だ。
「冗談だからね。師匠もすーぐ武器を構えるし、いや本当に冗談で皆がいる前でそんなねぇ」
「いつか殺すのじゃ……」
「あー聞こえない聞こえない」
俺は耳を防いで師匠の言葉聞こえないようにした。




