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負け悪役貴族に転生した俺は推しキャラである師匠を攻略したい  作者: えん@雑記


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第399話 2人が居ない日

 談話室でメルナが1人座りながら本を読んでいるので、その本を持ってる腕を退けて俺はメルナの膝の上に座った。



「フー落ち着くなぁ」



 俺がそう言うと閉め忘れた扉からアリシアがひょっこり顔をのぞかせてくる。

 手には大きなカゴを持っており中身は洗濯ものだろう。

 つい最近までヨロヨロと動いていたのにすっかり元通りになったようだ。


 その隣には何時もの様にクローディアが一緒にいる。

 そのクローディアはアリシアのバスケットを片手でもつと先に廊下を歩いて消えていった。一瞬戸惑った顔のアリシアはそのまま談話室に入って来ては俺の膝の上に座った。


 人間サンドイッチの完成である。

 具は俺で2人がパンだ。



「なんなんじゃ! お主らは!! つぶれるじゃろが!!」



 一番下のメルナが騒ぎ出したのでアリシアと俺はそれぞれ退いた。



「いや、メルナが喜ぶかなって」

「クロウ君が喜ぶかなって」

「2人ともお花畑じゃろが!」

「問題も解決したし、たまのじゃれ合い良いと思うんですけど。ねぇアリシア」

「先生も息抜きしたほうがいいですよ」



 メルナがおでこに手を当てて、残った手はソファーをトントントンと指で叩きだす。ちょっとイラついてるようだ。



「普通に読書して息抜きしとるんじゃが? 別にワラワが言う事でもなのじゃ、サクラが帰って《《何ヶ月》》になるのじゃ?」

「《《丁度半年ぐらい》》ですかね?」

「それぐらいと思います」

「何かしようと思わんのじゃ? 例えばスミレを探すなどじゃ」



 メルナにしてはまともな意見だ。

 サクラを送り出して既にそれぐらいの日数は立っている。

 ミーティアもナイの背中に乗って帰ったし、ノラはファーストの町のほうで仮に暮らしてるはず。


 俺もあっちこっちに顔を出した。と言っても忙しかったのは1ヶ月ほどで残りの5ヶ月はこうして自堕落に暮らしてる。



「でも、魔力探知も引っかからないし、冒険者ギルドにも連絡がない。辛うじて生きてる。ってだけは解ってるので……そのうち見つかるかなって……それよりも! 暇なら、虹孔雀の羽。取りに行きません? とりだけに」

「………………? あっ! 鳥と盗りと取りをかけたんだね」



 アリシアが拍手しだした。

 ギャグを解説するの辞めて。



 虹孔雀の羽。


 伝説級のレアモンスターで俺が知ってるのはその羽のみ。虹色に輝くその羽を使った腕輪は着けてるだけで全属性の魔力が大幅アップする。

 世界に多くても3個しかない秘宝中の秘宝だ。



「そんなレアな物この世にあると思ってるのじゃ? 900年前ならまだ……」

「サクラから教えてもらって。場所は知ってます! それを売りたいなって」

「クロウ君。今物凄い借金あるもんね」

「う…………べ、別に無期限で最悪払わなくていいっていってたし……帰すとしても半分ぐらいで……」



 借金。

 人や団体から借りた金の事を借金と言う。

 別に本当は俺には借金はない。

 

 ただ!



「サンさん1週間寝込んだよね。私も緊急で回復魔法かけにいったけど……あれは精神的だから回復は無理だったよ」

「この馬鹿に飛行艇を貸すほうが悪いのじゃ」

「いや、俺が借りたわけじゃなくて……借りたのはクウガで」

「そのクウガ君も行方不明だもんね」



 そうなのだ。

 普段なら『もうクロウベルさん!! 今回だけですからね!!』や『借りにします』などひょっこり言い出すのに今回は来ない。

 帝国の馬鹿皇子や聖都にいるアンジェリカなどに聞いても場所はわからないらしい。


 ただ冒険者ギルド経由で出金の手続きや、過去の遺跡に潜ったのは確認出来てるので俺も放置する事にしてる。


 だから飛空艇がバラバラになって重要なエンジンが燃えつき海底の奥に沈んでも俺は悪くない。


 結果、帝国での飛空艇量産化も中止が決まり、大型飛空艇の運用も安全面を考慮して一次的に封印。と決まったらしいけど、絶対に俺は悪くない。



 悪く……とまぁ。


 めげないサン達は裏で開発するって立ち直ったけど、自由に使える資金が結構減ったらしい。



「ってかだ!」

「なんじゃ?」

「クロウ君?」



 俺が大声を上げたので2人が対照的な表情で俺を見る。



「いや。俺ってクウガに散々『貸し』を作って来たはずなのに。例えば若返る、生き返らせる、浮気のアシストをする。力比べをする。何一つ帰って来なかったな。って」

「途中で変な事いれたよね? 思い出したよ……クウガ君が行方不明になった時クロウ君が情報隠していたよね」



 やべ。

 前に怒られた事を思い出させてしまった。



「アリシアよ。この程度で怒ると身が持たんのじゃ」

「先生、私は本気で怒ってないよ?」

「にしても虹孔雀の羽なのじゃな」

「知ってるんで?」

「持っていたのじゃ」



 まじで!?



「が……先日の家が燃えた時に燃えたのじゃろ」

「くっ……セリーヌめ」

「何でそこでセリーヌの名前が出るんじゃ?」



 やば。

 火事の原因がセリーヌなのは黙っていてっていわれていた。



「いや。セリーヌなら持ってそうだなーって」

「どうじゃろうなぁ……」

「持ってないわよ?」



 セリーヌがソファーの影から出て来て答えを言う。



「ほら。セリーヌは持ってな……ん? セリーヌ!!??」



 驚いて裏声になる。

 メルナは露骨に嫌な顔をして、アリシアは「急いでお茶の用いするね!」と言ってパタパタと走りだした。



「セリーヌ。苺ジャムの入った紅茶が好きだわ」

「りょーかーい!」



 残った俺は当然の用に座りだすセリーヌを見下ろす。



「何でここに?」

「セリーヌ。クロウお兄ちゃんを信じていたのに」

「何の話だ?」

「絶対にメルママだけを愛して他の子に手を出さないって。それを、あんな小さな聖女をものすごい恰好で食べちゃうだなんて幻滅よ」

「……な、何の事かな?」



 まさか覗いていたわけじゃないよな。

 あれから何週間たつと思っているんだ。



「レディはそんな事しなくてもわかるのよ?」



 この場の空気に飲まれるな。

 頑張れ俺!

 セリーヌの耳元に顔を素早く近づけ「家、喋るぞ」と小さくいうとセリーヌが椅子から飛び降りる。



「でも、クロウお兄ちゃんなら女性の2人ぐらい余裕よね。セリーヌ応援するわ!」



 180度態度を変えた。

 そこにアリシアが紅茶セットを持ってくる。

 銀色のポットにお湯と紅茶が入っていてアリシアが入れようとするのを俺は手で制した。


 少し高めに持ってカップに紅茶を入れる。

 こうすると香りが引き立ち美味しくなるのだ。


 たぶん。


 最後にティースプーン1杯のいちごジャムを添えてセリーヌに手渡した。



「…………」

「…………」

「…………」



 3人が俺を見たまま固まる。

 別に変な事はしてない。



「何?」

「ロウよ……」

「クロウ君カッコ良かったよ!?」

「クロウお兄ちゃんもやれば出来るのね」

「…………一応元貴族だから。最低限の礼儀作法は」



 地球での事も覚えてるしな。



「ロウの事じゃから飲めればいい。と思っていたのじゃ」

「セリーヌも紅茶ポットをそのまま出されると思っていたわ」

「はいはい。で……セリーヌ何の用で? ってかこの時間軸のセリーヌだよな?」

「もちろんよ。セリーヌ1人の人間に負けてある約束をしたのね」



 突然の事で話が見えない。

 とりあえず続きを聞いてみる。



「で?」

「1つだけ言う事を聞いてあげる。って事になったんだけど……その約束がある人間の一番悲しむ事をしてくれって言うの」

「ほうほう。それは陰湿な奴だな」

「そうでしょ!? セリーヌも聞いてびっくりしちゃった……ごめんね。クロウベル・スタン」



 セリーヌの顔が大人っぽく見えた。

 無意識に剣を抜いてセリーヌの首を貫く、青い液体が俺に返り血となって跳ね返ってくる。

 それでも動かないセリーヌの体。

 セリーヌの首が胴体から離れると床をごろんと転がった。



「メルナ! アリシア!!」



 俺は叫んで周りを見るも2人の姿見えない。



「セリーヌーー!!!!」



 大声で叫ぶと、転がった首を探しに首無しの動が動いた。

 その首を胸の部分で抱き上げると、その顔はとても残念そうな顔だ。



「クロウお兄ちゃん。セリーヌを殺すなら首じゃなくて魔石を狙わないと……でもセリーヌの魔石はクロウお兄ちゃんは貫けないと思うけど。本当にごめんね、後は……」

「ごめんねじゃねえ! 2人をどこに」

「……消しちゃった」

「……冗談だろ?」

「セリーヌもつらいの、でも約束は守らなきゃ」



 突然大きな音とともに叫び声が聞こえた。



「クロウベルさん!! な、なんですかこの惨状は!!」



 振り向くとクローディアだ。

 俺はしまった。と思い振り返るとセリーヌの姿が見えない。



「クローディアさんごめん。メルナとアリシアが行方不明に」

「……誰ですか? そんな子供はいませんが、それよりも汚れた衣服。もう何をしたのです! 部屋も汚れてますし……まったくもう」

「…………冗談だろ」



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