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負け悪役貴族に転生した俺は推しキャラである師匠を攻略したい  作者: えん@雑記


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第398.5‐2話 (他人視点)1年後の記憶喪失の彼の生活

 あの!! 大人のキスって何ですか!?

 突然胸倉をつかまれたかのように起き上がる。


 薄暗い部屋……周りを見渡すと隣のベッドに寝ていたシンシアさんが俺を見ている。ブロンド色の長い髪の毛、肌は日に焼けていて健康的、思わずドキっとして顔をそむけた。


 


「うなされていたよ? また悪夢?」



 何かとても大事な約束だったような気がする。

 それを思い出せないとシンシアさんが俺を心配そうに見てる

 首を振って思い出せない事を伝えた。



「そうみたいです……起きると覚えてないんですけど」

「覚えてるのは自身の名前だけ。だね」



 シンシアさんと会ったのは《《1年ほど前》》

 俺は浜辺に打ち上げられていたらしく、シンシアさんの家に厄介になっている。


 自分の名前以外覚えてない俺は、シンシアさんにお礼をするために生活を手伝っていたんだけど……なぜかそのまま1年ここにいる。

 彼女が言うには俺は浜辺付近で浮いていたらしく、最初は死体かと思ったって。


 それを引っ張り上げて近くの村に医者を呼んで貰い看病された。

 着ている物から冒険者と思われて、身元調査してくれたけど登録も無く、行くあてのない俺と一緒に住んでいる。



「不思議な人だ」

「何が?」

「何でも無いです」



 女性1人で俺みたいな男を部屋に入れるとか……警戒心ってないのかな?



「うわぁ。エッチな事考えてる?」

「考えてません!」



 思わず叫んだ後に、シンシアさんを見た。



「そういうムキになる所が子供ー」

「なってませんし。それよりも寝ます、明日は街にいくんでしたっけ?」




 年齢も覚えてないのだ。

 俺自身は大人と思ってるのに、シンシアさんは俺の事を子供扱いする。




「別に寝ていていいよ。1人でいくし……あっでも、仕事手伝ってくれるなら寝たほうがいいよ。それともお姉さんが一緒に寝てあげようか?」

「断ります」



 小さく笑うシンシアさんにドキっとする。



「俺の事からかってますよね」

「バレた?」

「バレます」

「それとも本当に一緒に寝る?」

「先に寝ます」



 薄い毛布を頭からかぶってベッドにもぐりこむ。

 しばらくすると部屋の灯りが消え、近くのベッドにシンシアさんが潜り込む音が聞こえた。



 ──

 ────



 何時ものように起きると、シンシアさんはすでにベッドにいない。

 働き者すぎる。

 いつまでも世話になっていいわけじゃない、すぐに外に出ると釣りから帰って来たシンシアさんと鉢合わせた。



「おっはよ。ネボスケさん」

「スミレって名前があるんです。それよりもおはようございます」

「はい、おはよう……今日も記憶が戻らない?」

「戻りません」



 昨日までの夜戻らないのに今日の朝戻るとは思えない。



「じゃっ朝ご飯にしよっか」



 少し嬉しそうなシンシアさんが家に入ると、すぐに魚を焼きだす。

 美味しそうな匂いで俺の腹が鳴り響く。



「お皿並べてねー」

「はい」




 2人で食べていると、いつものようにシンシアさんが俺の事を見てくる。

 あまりにも気になるのでちらっと見るとシンシアさんがバツの悪そうな顔をした。



「ごめんね。いつも食べ方が綺麗だから」

「食べ方?」



 別に普通にハシで魚を食べてるだけだ。



「ハシって使えない人多いし。焼き魚も嫌いな人いるのよ、知ってた? 毎日料理を変えて反応見ていたけど全部綺麗に食べるのよね」

「そうなんですかね?」

「そうよ、だからもしかしたら貴族の……次男坊あたり?」



 探偵顔負けの推理。



「次男坊なんですか?」

「そう! 家を継ぐこともなく期待されない次男坊は1人自分探しの旅に、そこで海を見て感動した瞬間! なんとシータイガーの群れが。逃げる時にうっかり足を滑らさせた次男坊は頭を打って海の中へ……違うかな?」

「どうなんでしょう……」



 俺がそう思っていると、シンシアさんの家の扉。それが突然ノックされた。


 シンシアさんの家なんだからシンシアさんが出ればいいんだろうけど、習慣で俺が出る。


 女性の一人暮らし、変な男が来るとも限らないし……シンシアさんは『この辺は平和だから大丈夫だよ』って言うけどさ……逆に言えばやっぱり危ないよな。

 扉を開け顔見知りの男性が俺を見ては笑顔になった。



「よう! 坊主、元気か!」

「ええっと。ダルさん……何の用です?」

「何の用ってレーゲの鎮魂祭……シンシア。おめぇ説明してないのか? その準備に呼びに来たんだが、蒼の迷宮にある聖杯の事……」



 レーゲの鎮魂祭……?



「ええっと……レーゲって旧名ですよね。あっ旧レーゲ海や魔物、不慮の事故でなくなった人を送る祭事でしたっけ? 10年に1度の祭事で観光客も多いとか……確か枯れない魔力の水が入った聖杯が一般公開でしたっけ?」

「若いのによく知ってるな」

「ならいまし……た………し……見た事も……」



 あれ?

 いつ行っていたんだろう。

 隣に誰かいて『聖杯って思ったよりも小さいよね』って言われたような……痛っ頭が。




「なわけないだろ、見た所……坊主は15歳前後だろ? 来た事あるって5歳の頃か?」

「…………ですよね。勘違いです」

「まっ今年はシンシアの親も含まれる」

「やだなーダルさん。私の父親はまだ帰って来ないだけよ」



 シンシアさんが軽い冗談を言う感じで話し出す。

 ダルさんの表情が少し曇ると「おめえもう3年だぞ」と、口にした。



「まだ3年よ!!」



 シンシアさんはテーブルに手を突く、その振動でハシが転がり落ちた音が響く。

 く、空気が重たい。

 ダルさんは俺を見た後に咳払いをしてシンシアさんに向き直った。



「魂が迷うといけねえし、まぁまた来るわ。あと……その蒼の迷宮に入りたいって冒険者が来てな、仕事として紹介しとけって言われてる。気が向いたらギルドに来てくれ。明後日まで来なかったら別な奴に頼む事なってる」



 ダルさんは言うだけ言うと扉から出ていく。

 残ったのは俺とシンシアさんだけで、凄い気まずい。



「ごめんね。変な空気にして……」

「いえ!! あっハシ洗ってきます」

「別に拭くだけでいいよ……わかってはいるんだけどね」



 落ちたハシをシンシアさんは手に取ると綺麗な布でふいていく。



「私の両親って漁師と冒険者しててね。そのちょっと私の薬を買いに行くって……ほら、おっちょこちょいで」

「帰って来なかったんですか?」

「帰ってくるから!!」



 怒鳴られてしまった。

 シンシアさんが玄関に手をかける。



「っと……ちょっとギルド言って来るね。ええっと……ほら新しい情報があるかもだし。知ってる? 折角紹介してくれた仕事。ガイドって結構いいお金になるのよ。それに両親に関係なく祭事はしないというのは解ってるし」



 シンシアさんが家から出ていく。

 1人残された俺は思わずしゃがむ。



「何でいつもこうなるかな……」



 あれ? 何で? いつもってなんだろ。

 うっ、頭が痛い。



「俺はどうしたらいいんだろ……」




 ──

 ────


「ただいまー」

「おかえ…………え?」



 何時ものように部屋を掃除しながらシンシアさんを待っていると思わず声が止まってしまった。

 シンシアさんの隣には見た事のあるような人が、じっと見ているとその男性は俺を見てくる。



「僕の顔に何か? ああ、髭かな? 最近忙しくて剃ってなくてね……僕の名前はクウガ」

「ええっと、居候のスミレです」

「居候か……親族ではないんだね。いや気にしないでくれ」



 俺がクウガと名乗った人に頭を下げるとシンシアさんの嬉しそうな声が弾む。



「スミレっち。喧嘩したら駄目だよ? 上客よ上客! 蒼の迷宮案内で10年は遊べる金額よ」

「嘘臭いですね」



 本音だ。

 よく大金を見せて後から出さないや、約束を反故する人間は沢山聞いて来た。

 ……え。誰に?


 思わず軽く頭を押さえる。



「大丈夫かい? 彼具合が悪そうだけど」

「気にしないでください。それよりも」

「安心してくれ。シンシアさんにも説明したけど、こう見えてもA級冒険者なんだ。蒼の迷宮にある。と言われてる魔封じの短剣。もちろん伝承レベルなのは知ってるけど……見つかっても見つからなくても約束の金額は払うよ」



 俺に冒険者ギルドカードを見せてくる。

 クウガさんが魔力を込めるとカードにマークが出て来た。



「…………あれ。あんまり驚かないね」

「よく見てましたので」

「そ、そんなにA級なんていないんだけど……まぁいいか。しばらくよろしく頼むよ」



 クウガさんが俺に握手を求めてくるので俺も握手をする。

 なぜかシンシアさんが、うんうんと腕組んで頷いているけど……。

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