第398.5話 (中盤から他人視点)サクラとママ達
始まりの丘。
星空が光る夜、そこに集まったのは大人組。
俺達3人の他には町で寝泊まりしていたノラやミーティアもサクラを見送りに来た。
クローディアだけは子供達の安全ために孤児院に残っている。
「パパ。皆さん本当にご迷惑をかけました。ごめんなさい」
頭を下げるサクラに俺は一言いう。
「だから謝るなって」
「ご、ごめんなさい」
サクラがもう一度謝ると、俺の頭はメルナの杖で突かれた。
痛いです。はい。
「細かい事を言うななのじゃ」
「あい」
メルナとアリシアがサクラの前に立つと何やら小さい声で話しているのがわかる。当然ながら俺の耳には届いていない。
ちらちらと俺の事を見ては頷いているから、どうせ悪口だろう。
はいはい。
未来の俺はどんだけだ。
サクラが驚いた顔をしてアリシアと俺の顔を交互にみる。
メルナがアリシアの頭を軽く叩くとアリシアがしゃがみだしたのが見えた。
これは正妻のお怒りに愛人が負けたのか。
お、アリシアが立ち上がってメルナに何かを言ってる。
「クロー兄さん。1人でニヤニヤしてると気持ち悪いからね」
「…………ノラか。そんな顔してた?」
「してたよ。それよりも少し離れてくれるかな? サクラさんを特定の未来に帰すのに魔法陣を書きたいんだけど」
「あの……何か怒ってない?」
「べっつにー」
──
────
私が未来に帰るのに皆が手伝ってくれている。
本当に感謝で謝りたい。
ううん。謝ったらパパに怒られるよね。謝るなって……。
すぐにアリシアおばさんと、マ……メルギナスさんが駆け寄ってくる。
私はもっと居たかったけどしょうがないよね。
ギース先生からも過去に飛んだとしても干渉するな。と授業で言っていたし。
「これでお別れだね。サクラさん一つ言いかな?」
アリシアおばさんが笑顔で聞いて来る。
なんだろう? 未来の鉱山やレアアイテムの場所かな? それだったらパパに教えて来たけど……。
孤児院を運営する上で絶対に必要だから。と土下座されて仕方がなく。
「あのね未来の私って未婚……なんだよね? スミレ君に聞いたんだけど……」
「え!? スミレお兄ちゃんが言ったんですか!? ご、ごめんなさい」
私の知ってる未来では、アリシアおばさんは未婚のはず。
でも、ママはママで『お前たち2人はワラワがいない間はアリシアをママと呼ぶのじゃ』って言うしパパも反対はしない。
逆に「そう言う事で」って……短い返事だけ。
「あっ大丈夫。それでね……先生と色々話したんだけど……その私とクロウ君が付き合うって事になったのは」
「はい! 知ってます!! 未来のアリシアおばさんが何でパパと付き合ってないのか不思議でしたし」
若いアリシアさんが口を閉じた。
何か困っているような顔だ、そしてメルギナスさんが私の顔を見る。
「まー……サクラよ……そのななのじゃ。言いたくないのじゃが……ワラワとロウの子にしては似てないのじゃ」
「はい! よく言われます」
2人が黙ってしまった。
なんでだろう……変な事いったかな?
あ、そうか母親に関しては黙秘なのに言っちゃ駄目だった!!
「ご、ごめんなさい聞かなかった事に」
「…………まぁそのなんじゃ。未来のワラワとアリシアとよく話せなのじゃ。ロウはペテン師じゃからなどうせ本当の事なんて言わんじゃったのじゃろ」
「先生は悪くないよ、私が優柔不断で本当にごめんね……未来に帰ったらの『青い鳥の宝石箱には何か入ってる』って聞いてみて」
「え? あの?」
ノラさんが「魔法陣書き終わったよ」と近くに来ると、アリシアさんもメルギナスさんも私としっかりとハグをした。
子供の頃を思い出してちょっと泣きそうになる。
次にノラさんともハグをした。
パパのほうを見ると、ミーティアさんに首を絞められているのが見えた。
やっぱモテルなぁパパって……視線が合うとミーティアさんを吹き飛ばして私に手を振ってくる。私も小さく手を振り返した。
吹き飛ばされたミーティアさんが私まで走ってくるとそのまま抱きつくつ。
こ、転びそうになりながらもくるっと回転するとミーティアさんはちょっと泣いてる。
「絶対に変態ちゃんみたいな奴と付き合っちゃだめだからね!」
「え、は……はい」
「結局何年後から来たのから言わなかったけど……絶対に会おうね」
「はい!」
全員が離れるといよいよだ。
失敗は許されない。
「あの! スミレお兄ちゃんの事をお願いします!!」
私が大きな声でパパに言うとパパは無言だ。
「死んだと思って諦めては──いっ」
周りから叩かれ頭を抱えだした。
パパらしい。
なんだかんだスミレお兄ちゃんには厳しいけど、助けられる事は助けてるし。
クロノスの時計を逆さまにしてスイッチを押し魔力を込める。
クロノスの時計から魔力があふれて地面の魔法陣が光り輝きだした。
空間がゆがんでいく。
夜空が朝になり雨が降り風が強くなったと思ったら太陽が見えたりする。
周りの景色が変わると同時にパパ達の姿も見えなくなり私以外の世界がガラス細工のようになり白く輝く。
気づくと目の前にパパがいた。
「よう」
「ええっと……パパ?」
「それ以外に誰がいるって言うの……ちゃんと俺の知ってるサクラだよな? 変な記憶ない? 例えば俺が独身だったとか。ギースとクソ元聖王が言うには本来の過去と繋がってないって言うし……決定されてる未来に対して過去を変えれないパターンもあるとかんとか。サクラが戻ったら次はスミレのために時計を届けに行かないとだめだし」
パパが独身だったらその場合は私だ誰の子なんだろう。
ってかパパったらまた1人で考え込んでる。
「そうだ! アリシアおばさんは!?」
「え? 外にいると思うけど?」
「パパまた後で!!」
パパのお友達が住んでる迷宮を私は走る。
途中でそのお友達とすれ違うと、なぜかハイタッチしながら迷宮を出た。
大きな馬車がありアリシアおばさんが私を見て直ぐにハイ・ヒールをかけてくれた。
「おかえりサクラ」
「帰ってきました! それよりも!!」
「きゃ」
私はアリシアおばさんに抱き着く。
耳元で「青い鳥の宝石箱には何か入ってるって何かな」とそっと聞いてみた。
「ん--誰から聞いたの?」
「ええっと……」
「クロウ君にも、その言葉を教えてないのに。頃合いかな? パパと先生が来たらお話ししようか」
なんだろう、凄いドキドキする。
迷宮の中からパパが出て来た。
「パパ!! …………と誰?」
隣には知らない男性と女性が一緒で……え? いや知ってるよ。
「もしかしてスミレお兄ちゃん!?」
「あー…………サクラか?」
「え!? ええ!! 少し大きくなってない!? それとその隣の人は誰!?」




