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負け悪役貴族に転生した俺は推しキャラである師匠を攻略したい  作者: えん@雑記


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第392話 四方八方ふさがりからの助け舟

「俺は……こんな事もあろうかと。って言うサンを見たいのであって……重そうなスパナを回転させて俺に見せつけるサンは見たくない」



 協力を願ったら壁際に追い込まれた。



「…………眼をつぶっていても良いですわよ。つぶった瞬間に打ち込みますので」



 余計に嫌なんだけど。

 絶対に目は閉じない、この女は冗談は言わない。



「ノーノー、何を怒っているのかワカリマセーっ、あっぶねぇ!?」



 大きく振りかぶる攻撃に大きくよける。

 回避行動が遅れたら当たってた。



「な、何をそんなに怒ってる……あっもしかしてクウガが内緒で北のダンジョンに行って、それがアリシアの呪いを解くからって理由で、帝国でクウガを飼っているつもりのサンは嫉妬して怒り爆発って事!?」

「うわぁ普通全部言う?」



 メーリスが諦めた声でつぶやくのが聞こえた。



「違いますわ!! メーリスさんもおかしな事言わないでくださいまし! 聖都に行く実験と言うので武器も外し簡易仕様にしてますのよ。北にある呪われた地に行くのであれば、装甲も厚みを持たせますし魔力シールドも増やします。砲門だって……前回のデーメーデール。あれでさえ途中で操縦不能になってますのに!」



 ああ。そういえばサンって前回一緒について行ったんだっけ。



「あれから改良に改良を重ねてますので丈夫には出来てますけど……どうせ単身で行くのでしたらもっと実験したい所が多いのです!」



 あーそっちか。

 さすが発明、飛空艇を開発しただけある。




「サンさん、子育ての関係で前よりも実験止められてるもんね」

「そうなの?」

「ほら、地位を捨てたっていってもお城にいるし……月の半分はヒーローズに行ったりしてるけど」



 メーリスに聞くとメーリスは頷く。



「余計な事を言わないでくださいまし……先ほどの件ですが無理ですわね」

「そこを何とか!」

「装甲を薄く軽量型にした『コメットⅡ改』に追いつく乗り物などございませんわ。聞けば貴方……帝都や聖都に自由に移動できる手段あると聞いていますわ、それでいけばいいんじゃありませんの?」

「ああ、『転移の門』か……それで行けたら傲慢なサンの所に来ないって」



 ヒュッ。と耳元で音がすると横を向く。

 壁にスパナが突き刺さる。

 サンの近くにいたメーリスがサンに新しいスパナを手渡していく。



「冗談だって……」

「この状況でよく言えますわね」

「この状況じゃないと言わないから」

「魔女は何て言っているのです?」

「メルナ? まだ相談してないしこの場所にいない。相談して帰るまでの時間が惜しかったから強くてカッコよくて頼りになるサンにお願いしに来たんだけど……無理ならクウガの事も諦めるわ……ああ、クウガ1人で倒せるかな。いくらカッコつけたいからってあれじゃ死にに行くようなもんだもんな。ちら」



 俺がちらっと見るとサンは腕を組んで考えている。

 メーリスのほうを見るとメーリスも天井を見ては指を動かしていた。



「ある事はあったんですのよ。長距離移動手段……以前貴方を長距離砲で発射しましたわよね。あれの強化版ですわ……あれであればコメットⅡ改よりも」

「じゃぁそれで」

「話を最後まで聞いてくださる? 《《2日前》》に起きた謎の爆発で実験は中止。現在修復中です……徹夜で治しても2ヶ月はかかりますの。今回は本当に申し訳ありませんが……」



 あ、これ本当にダメな奴だ。

 勝気なサンも凄い落ち込んでる。



「あ、いや俺のほうこそごめん」



 サンの部屋を後にする。

 詰まった。


 クウガを助けたい! と生まれて初めて思っても行けないんじゃしょうがない。

 諦めるか。

 出発してから数時間、2人の話なら数日で着くだろう。と……そもそもアレも生き急ぐ。というかだ。


 ヒーラーも着けないでどうやって戦う気だ。

 自殺願望であるのか? 多分エリクサーぐらいはもってるだろうし、あいつ自身もレベル上がれば簡単なヒールは覚えるけどさ。



「おい!」



 下を向いて歩いていると誰かとぶつかりそうになる。

 ひょっと避けては俺は「申し訳ございませんでした!」と大声で言って立ち去る。


 絡まれたくはない。

 俺にだって怖いものはある。


 冗談じゃなくて、好き好んで強面の男と争いたくはない。

 しかも酔っ払いって話通じないんだよ? 小さい事で独房に要れらえたくはないし目立ちたくもない。


 最初のエンカウントで回避できるなら回避するよ。



「待て!!」

「待ちません。俺には帰りを待つ人が。はい、これ迷惑料です」



 男の手に金貨を握らせて、人ごみに戻る。

 一度帰るか。

 で、メルナとアリシアに言う? 『筋を通しに行ったらクウガ死ぬかもしれないけど死んだほうがいいよね?』って。


 うーん。ぎりアリシアはOK貰えそうだな。



「おいクロウベル!!」

「いえ、人違いです」



 俺の名前を知ってる男なんてろくな事はない。

 瞬間俺はアンジュの剣を構え、迫ってくる槍の軌道を変えた。

 顔を上げると耳の長い男が俺をにらんでいる所だ。


 周りが騒ぎにならないのはギース以外の時間が止まっている。



「あれ。ギースか……俺に攻撃って……敵じゃないよな?」

「当たりまえだ! 何度も呼んでいるのに。少しは興味を持て!!」

「え? ああ!! もしかして俺を呼んでたってミー?」

「ちっ。メルギナス様はどこだ!! 武器をしまえ、時間停止を解く」



 うい。と返事して俺も武器をしまうと周りの喧騒が戻って来た。



「メルナはいない。ちょっと所要で……ああーーーーーーー!!!」

「な、なんだ!?」

「いるじゃん。好都合主義の男が!!」



 俺はギースの手を掴む。

 そうギースに時間を止めてもらって追い付けばいいじゃん。



「なんだ。おい! 引っ張るな!!」

「まぁまぁまぁクィルと子供のお土産代俺が出すから、どうせ買い物だろ? なんだったらいい夜の店も紹介するって。俺が知ってるわけじゃなくて馬鹿皇子から教えてもらった場所だし」




 ──

 ────


「はー! つっかえねえ!」

「人に頼み込む態度とは思えんな」

「だってだってだって」



 場所は酒場、竜の尻尾亭。いつもの主人にいつもの個室に入れてもらう。

 先に散々買い物代金を支払った俺は、こうしてギースに時間を止めてくれ。とお願いした所断られたのだ。



「そこまで言うなら、先ほどの商品を全部返す」

「あ、それは貰って」

「むぅ……しかし。この自分は使えないのだろ?」

「結果的に使えないのは『俺自身の頭』ってわけ。そのうちクィルの所にも話に行くつもりだったし……」



 理由としては連続で時間停止が出来ない事、時間停止している間に徒歩で進んだとして北のダンジョンまで何年かかるか。


 さらに時間停止を受け付けないのは俺とギースだけであり、時間停止中に何かの修理なども出来ない。


 断られないように先に商品を渡したのに、時間と金を失った。

 序にギースの信頼も失いそう。


 ギースは俺を黙ってみてる。

 細目でじっと見ては怖い、え襲われるの?



「ここ最近魔力がおかしい」

「はぁ……」



 別におかしい。と言われても俺専門家じゃないし。



「言うなれば時間魔法だ。時間というか時魔法だな……むやみに連発するのは避けたいし、力が大きき程その反動も大きくなる。もっとも自分でさえ一度に止める時間は2分ぐらいが限界だ」

「へ。へえ……」



 未来から娘と息子が来たって言ったら怒るかな?



「どうでお前の事だ、ここ最近帝都で怒った違和感もお前からみ何だろう」

「どういう意味だよ!」



 ギースはポケットから小さい水時計をテーブルの上に置いた。

 砂時計に似ていて砂の代わりに色のついた水が入っている。



「クロノスの時計だ」

「は!?」



 思わず掴もうとするとギースが先に水時計を手にする。



「ふん…………やっぱり知っているか」

「あ、やべ。えーなにこれー全然シラナイーボクにもっと見せて―」

「ぬかせ!! 買い物の返礼だ。もっとも本物に近い偽物だ。自分が本物を真似て作った奴で中には自分の血が入っている……効果も2日ほどしか戻れまい」

「2日だけなの?」

「2日前なら間に合うんだろ?」



 は!?

 そ、そうか……長距離移動砲。それが壊れたのが2日前だ。

 よく一昨日来やがれ! で一昨日にいけるのだ。



「いいか、反動が何かあるかわかないお前に出来る事はまず城に──」

「サンキュ!」



 俺は速攻で自作のクロノスの時計をひっくり返した。


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