第391話 クウガに大事な事を言えないままのクロウベル
帝国城にあるクウガの部屋。
リターンの魔石で帝国に飛んで、すぐ城に向かう。
いつもの感じで城に入り、子供をあやしてるサンの所に行っては、クウガの場所を教えてもらったらここだった。
アリシアと付き合う。
そんな事がいいのか? と悩んだがメルナが『付き合って不一致だったら別れればいい』との助言を貰い試す事に。
で。
試す前に俺も《《男として》》筋を通さないといけない。
そう不幸にしてしまったクウガに対してだ。
扉をノックするとますますイケメンっぷりの顔のクウガが顔を出す。
「クロウベルさん!? な、なんでここに!! いえ……よくぞ僕に用ですよね。部屋が散らかってますけどどうぞ入ってください」
「いや部屋の前で良いんだけど」
クウガは廊下に誰かいないか首をぐるっと回した。
「まぁまぁ。見た所1人っぽいし僕に用事ですよね」
「用事と言えば用事で……うおっと」
クウガに引っ張られて部屋の中に連れ込まれる。
ぐるっと部屋を見ると違和感しかない。
びっしりと本が詰まった本棚が2個。
壁には数本の剣。
粗末なベッド。
着替えがはいっているであろうクローゼットしかないからだ。
あるはずの、全面鏡張りの部屋や丸い回転しそうなベッドが無い。
「え、ここ本当にクウガの部屋?」
「ですけど? 最近は俺もアリシアに負けないように勉強してるんです」
うぐっ!!
先手を取られた。
「ど、どうしました? 胸押さえてますけど」
アリシアと仮付き合う事になった。と《《報告しに来たのだ。》》
滅茶苦茶言いにくい。
よし、話題を変えたら言うぞ!
『すまん。アリシアと付き合う事になった』と。
「だ、大丈夫……そ、そうだ最近は女性をとっかえひっかえはしてないの? いやぁ羨ましいな」
「クロウベルさん聞いてください」
クウガは真面目な顔になる。
「な、何かな?」
「女性は物じゃないですし。それに僕はもうそういうのは辞めたんです。考えるとアリシアに悪い事をしたな。って近くで支えてくれたのに僕が浮気性で……離れると解るというか、そもそも──」
クウガは照れ笑いをしているが、遅い!
判断が遅い!!
遅いからアリシアを幸せに出来なかった。
え、何この罰ゲーム。
この状態で俺はクウガに言う訳?
無理無理無理無理無理!!
「──と思うんですよ。あっ僕ばっかり語ってごめんなさい。このワインは皇帝がこの地を制圧した時に作ったワインだそうです。僕とクロウベルさんの再会に開けましょう」
「いや、そ……そんな高そうなの開けなくても。あっ!! 俺は水でいいです! 喉渇いてないし。自前の魔力の水でいいわ!! 所でさ……」
「魔法で作った水なんて、水分補給すらなりませんよね?」
高そうなワインがグラスに入れられると俺の前にも差し出される。
嬉しそうなクウガがグラスを持つので、俺も圧に負けてグラスを前に出した。
「僕が言うのもなんですけど、親友との再会を祝って」
「はは……ははは……そ、そうだね。でさ……ちょっと話が」
グラスがカチンとなるとクウガは半分ほど飲む。
俺も飲まないとだめだろう。と言う事で一口だけ、一口だけ飲んだ。
「先ずは飲んでからで、いやぁ美味しいですね」
「ソーダネ」
全然味なんてわからん。
「──なんですよ。と、思いますよね。あれクロウベルさん?」
「え、はい! クロウベルです。ええっと話聞いてるよ」
「ですよね。じゃぁ僕は北のダンジョンに行くんで」
「ん? 何で!? あっ話聞いてたよ、聞いてたけどさ」
はい、まったく聞いてませんでした。
北のダンジョンってラスダンのあそこだよね。
何で俺とクウガ。男2人でそこに行かないといけないのか、力説していたんだろうけど聞いてなかった。
「はぁ……だから言ったじゃないですか。アリシアのために行くんです」
「と、言うと?」
「…………あまり大きな声で言わないでくださいね。前回向こうの僕がこの世界に来ました」
来たな。
俺を絶対殺すマン。とかした正史のクウガが。
あっちのクウガは凄いよな、複数の女性と関係持ちながらもアリシアをゲットした。
「それから聞いたのですけど、向こうのアリシアって子供が産めません」
「…………で?」
「おそらくこちらのアリシアも。僕のハーレムの呪い。それを解く事が出来た今、アリシアの呪いあるのなら解きたいんです」
クウガは力強く宣言する。
「少しは僕も男らしい所を見せて置きたいんです」
クウガがまぶしい。
俺はその顔を真正面から見れない。
「あっ!」
「な、何かな?」
「所でクロウベルさんの用事はまだ聞いてませんでしたね、何の用でした?」
「え!? あーええっと……大した用事じゃないんだけど……その出発は?」
もう出発前までに伝えよう。
今日は駄目だこれ。
「そうですか……出発は飛空艇の準備が出来次第……あっ皆には内緒ですよ? 一応王国に行くっていって飛空艇借りたので」
「早くない!?」
もう計画がつぶれた。
「もう何ヶ月も調整してましたので……そうだ……クロウベルさん。もしかしたら僕は帰って来れないかも知れません、その時はアリシアの事をお願いします」
突然に部屋がノックされた。
男の声で『準備が出来ました』と聞こえると、クウガは俺に一礼し部屋から出ていく。
背後を振り返る間もなくクウガは部屋から出て行った。
扉が閉まり窓の外から低い重低音が鳴るとコメットⅡ改の音が聞こえ、段々と小さくなった。
俺の筋は通した……通した……通したかった。
大きく息を吸って息を止める。
「くっそが! かっこいいだろ!! ってか馬鹿なのか。回復士も着けないで1人で行くとか主人公かよ! ってか主人公か」
俺としては、クウガが北の洞窟で死んでくれると一番楽かもしれない。
だって筋を通す相手に説明しなくて済むからだ。
でもクウガは俺にアリシアを託した。
自分だってアリシアに惚れてる癖に。
「あそこまで男気を見せるのなら俺も臆せずに言うべきだろ。結果……斬り合う事になってもだ」
俺は小走りに歩くとサンの部屋をノックする。
出て来たメーリスが俺の顔を見ては「また来たよー?」とサンを呼びに行った。
「1日に何度も何なのですの? こちらは1人用にコメットⅡ改の調整を終えて疲れてますのよ」
「クウガを追いかけたいから何かない?」
「…………ご冗談でしょ? 今の話聞いてましたの?」
メーリスが「馬鹿なのかな?」と助言してくれる。
「馬鹿だよ。クウガが死んだほうがいいに決まってるのに助けたいぐらいには」
「どういう事ですの?」




