第384.5話(他人視点)大人のキスの続きの約束だよ?
目の前でパパと……メルさんが飛んでいった。
相変わらず仲が良くていいなぁ。
未来では私に『絶対にロウみたいな奴とは付き合うな!』と言われているけどかっこいいんだよね。
私がパパが消えたほうを見ていると、アリシアさんが手を叩いては注目を集める。
「はーい、こちらに注目」
「ご、ごめんなさい! 注目します」
私とスミレお兄ちゃんはアリシアさんを見る。
「ふふ。謝らなくても大丈夫だよ? 2人ともエリクサーは持ったかな? あの2人なら心配は……うん。周りのほうが心配だね。スミレ君もサクラさんも本当に私が一緒じゃなくていいの?」
アリシアさんは直前まで私達について来る気でいた。
「大丈夫です! 俺もサクラも強いので!」
「ふふふ。でもまだ子供だよ? 《《おばさん》》は心配」
おばさんを強調してる。
「え。あの……ごめんなさい」
「何で謝るのかな?」
あっだめだよ、それ以上を言うとスミレお兄ちゃん!!
先日の事だ。
スミレお兄ちゃんは、食事をしてる時に『アリシアおばさんお代わりください』って大声で言ったのだ。
アリシアさんは、笑顔でごはんを返していたけど、同じ席にいたパパなんて小さく笑ったらメルさんに吹き飛ばされたし。
「いえあの。アリシアおば……お姉さんをそのおばさんと呼んで。それに同じ席にいたミーティア姉さんが言うにはアリシアちゃんもお姉さんだかね? って。謝る時間も無くて」
「そうだね。でも事実だからしょうがないね」
私は思わずしゃがみ込んだ。
スミレお兄ちゃん、俺はもてるから! と強がるのに、すぐに女性に失言をする。
思った事は本当の事だから言うべきだ。って振られた後にやけっぱちになるけど……あのね。
ほらアリシアさん怒ってるし。
「ううん! 怒ってない。怒ってないよ」
「そうですよね! 未来ではおばさんなんですし、過去で同じ呼び方しても怒りませんよね……あっでもこの時代は、年齢も近いですしアリシアさんのほうがいいですよね」
「うわぁ……」
「ん? サクラなんだ?」
思わず声を出していた。
すごいよ。
ここまで地雷を踏めるとか。
「すごいね、ここまで地雷を踏めるだなんて私もびっくりだよ」
「え?」
うん。私とアリシアさんの気持ちは同じだったっぽい。
「クロウ君とは違った長所なのかな? とにかく2人とも無事で……駄目そうなら帰還の魔石を使う事。設定場所は孤児院になってるから。最悪腕1本あれば私が何とかするからね」
「アリシアさん!」
「なにサクラさん」
「それって、いくら聖女でも魔力の変動が多くて……最悪の場合はアリシアさんが死にますよね。聖女の力ってピークがあってそれを過ぎると体内の魔力が無くなるって……聖女のピークって10代が一番だって最近の研究の成果で」
「馬鹿サクラ!」
あっ。
未来の事は絶対に言っちゃ駄目なのに。
「うーん。2人ともやっぱりクロウ君の子だよ……でも大丈夫よ? 2人とも習ってないの外部から魔力を得る力」
思わずスミレお兄ちゃんを見るとスミレお兄ちゃんも私を見た。
え、知らない……。
「っと、じゃぁ私も言わない」
「ええーー!! アリシアさん教えてください!」
「だって、クロウ君も先生も教えないんだしー。ほらパパ達も向かったし2人も向う? 帰りたいんだよね」
「はい!」
ピラミットにある僅かな魔力を帯びた砂。
それを手に入れなくては私もスミレお兄ちゃんも未来に帰れない。
「じゃぁスミレお兄ちゃん私に捕まって」
「ああ! アリシア……姉さん! 言ってきます!!」
「はい」
私はリターンの魔石にある簡易スイッチを押し魔力を込める。
場所はストーム。
体が浮き上がり、スミレお兄ちゃんがしがみ付く。
もう教会があんなに下に浮遊した体が動いていくと下からアリシアさんの声が聞こえた。
「あっそうだ! スミレくーん! 帰って来たら約束通り大人のキス教えてあげるね」
私は思わず「え!?」と声を出した。
しがみ付いてるスミレお兄ちゃんが私を見て必死な顔になる。
スピードが速くなり息がしにくくなってきた。
「ち、違うから! その俺がモテなくてキスすらした事無いって話を相談して……アリシアおばさんが。えーって驚いて、なぜか話を聞いていたミーティアさんやノラさんが部屋に入って来てその……あっ」
「あっ」
飛んでる最中にスミレお兄ちゃんは私の腰から手が離れ落ちて行った。
「ああ!! もう何やってるの!!!」
大きな声で叫んで手を伸ばしても、スミレお兄ちゃんには届かない。
私の体も目的地までは自動で飛ぶ。
今のスミレお兄ちゃんは未来から持って来た転移の魔石も持ってないはずだし、ああ! もう……どうするのよ!!
それに。
「おっお……大人のキスってな、何の話!? アリシアおばさんと何する気なの!?」
え!? 思い出せば未来のアリシアおばさんって、未婚で……よくパパと仲が良くて……私を娘のように扱ってくれていたけど……。
だってアリシアさんは聖女だよ!? そんな恋愛に関してはもっと清楚というか大人の女性で。
「ああもう! スミレお兄ちゃんの馬鹿ああああああああ!! これ以上問題おこしてどうするの!!」
私の視界にはスミレお兄ちゃんが魔法の力で地面に着陸するのが見えた。




