第39話 お色気回……?
温泉旅館『火の湯』別館。
ノラにうるさいと怒られた俺と突然のカミングアウトした師匠と共に別館に来た。
ここに来た意味と言えばアリシアの問題をどう解決するか、解決策を探るために気晴らしに卓球でもしようと言う事になったのだ。
いやだって温泉と言えば卓球は定番なので。
わんちゃん、下着をつけていない師匠のポロリがあるかなって期待したわけじゃない。
まったくもってそんなやましい事は考えて無いです。
俺と師匠は無料ラケットをもって対峙している、時間はまだ夜だろう。別館だけあって他の宿泊客の姿はない。しかも騒いでも大丈夫。
「じゃぁ俺から」
パコーンっと音を出してピンポン球をラケットではじく。
「アリシアを助ける方法シリーズ、魔力を増やす!」
師匠のほうへ球がいくと師匠も当然打ち返す。
「魔法を遣わせないのじゃ」
俺の方へ球が来る。
思ったよりも師匠が上手くて困る、こんなのやった事ないのじゃ! と言うかと思ったら普通にサーブまで混ぜてくる始末だ。
「新しいヒーラーを探す」
次に師匠が「軟禁するのじゃ」と返してくるなんて物騒な。
その後も交互に球と意見を撃ち合う。
出て来た意見は。
魔力の回復。
新しいヒーラー探し。
軟禁。
魔力回復材をがぶ飲み。
色々でてくるがこれといって決定打がない。
「そもそも何でアリシアは旅をしてるんじゃ?」
師匠の攻撃が飛んでくる。
斜めからの美しいサーブだ、しかし俺も負けていない。
テレビゲームの卓球を一人で永遠にした事もある。
「クウガの呪いを解くためですね」
あれ?
「ふむっ」
「師匠……クウガの呪いを解いたらアリシアも旅をする理由なくなりません?」
俺が軽くパコーンと返すと、師匠の動きが止まった。
ピンポン玉は台の端からポンポンと床に落ちて跳ねていく。
「あの男の呪いはなんじゃ?」
「ハーレムの呪いっすね」
「また頭の痛くなる呪いじゃの……どこの神の怒りをかったのじゃ?」
「さぁ……でも本人に聞かないと」
俺も知らない。
だってゲーム開始からすでにハーレム呪いなんだもん。
「お主の番じゃ。これで1=0じゃな」
「え、今の奴カウントにいれるんですか?」
俺は点数スコアをペらりとめくり師匠の所に1にした。
「じゃぁええっと、本当にハーレム呪いって治せるんですか?」
パッコーンと初手から勢いをつけて勝負する。
「呪いはそれこそ生まれ持った才能と同じじゃ、治すとなると……」
「例えばほら魔王を倒すとか」
俺の言葉に師匠の体がびくっとして1点が入った。
「魔王なぞいると思うのじゃ?」
「一応……いるんじゃないかなぁと。あっぶなっ返しますよ」
ラリーは続いていく。
『マナ・ワールド』で俺が知ってる魔王ってのは黒い空気みたいなもやで、それを倒した後にクウガが突然呪いが消えた! って叫ぶ感じだった。
「どこにじゃ?」
「どこってその創世のダンジョンですかね?」
「ふむ……無い事もないのじゃっと1点追加じゃ」
く、まぁいい。
先ほどから師匠の胸がこぼれそうになっている。
1点ぐらいあげましょう。
「しかしまぁ、良くそこまで知ってるのじゃ……」
「はっはっは…………内緒って事で」
「こっちが喋ったのに酷いドアホウじゃの」
「あれ……もしかして駆引きで喋りました?」
パッコーンとラケットにいい音が鳴る。
「それ以外に何があると思うんじゃ?」
「いや。俺に惚れたとか」
「んなわけないのじゃ!!」
師匠の右手がバチバチ言うとラケットに魔力が流れていく。
「あっずる――いや、まってっ!?」
俺は身の危険を感じて横に飛ぶと、師匠が打った球は先ほどまでたっていた場所の背後の壁。
その壁に穴をあけた。
「………………あの、殺す気ですか?」
「たとえあたっても死なんじゃろ?」
「死ぬんじゃないかなぁ……」
「じゃぁ神の使いではなさそうじゃな。神や神の使いがこんな魔力を込めた球で死ぬとは思えんのじゃ。さっ3=1じゃ。どうもドアホウは直ぐに手を抜く」
「抜いてはいないんですけど」
師匠はラケットをポンポンと肩にもっていき叩くと、新しい球を握りだした。
「どれワラワに勝ったら何でも言う事を1つだけ聞いてやる」
「お?」
どうも師匠は本気の時は普通に話す時がある、何度が可愛らしい語尾を言わなく真面目な顔を見たことがある、今がその時だ。
「俺が負けたら? パーティーから追放ですかね?」
「なに、ワラワの願いを手伝え」
「……うっす、それはそれでご褒美のような。あれっすよね子作りですよね」
「ドアホウが」
俺と師匠の無言の打ち合いが始まった。
俺がやっと1点取ると、師匠はさくっと差を開いていく。
ってかだ。
俺がいくら現代日本で卓球が出来るといっても素人レベル、一方師匠は上手い、確実におれより上もだ。
負けたくはない。
だって何でも言う事を聞いてくれる、いきなりエロに持って行きたいが、たぶんそれをすると今後が嫌われる。
いきなり体を求めるのは愚の骨頂っていうやつだ、まずはデート。
そう師匠とデートだ。
水族館や動物園。そのへんが定番なきもするがこの世界でまだ見たことはない。
どこかお祭りやイベントがあれば、イベントといえば帝国あたりにいって新型飛空艇に乗って空の旅などもいいかもしれない。
一緒のアルコールを飲み、最後に部屋を取ってあるんです。これだろ。
もう一度言う。
負けたくない。
「ウォーターボール」
ボソっと詠唱するとピンポン球と同じ大きさの水球を空中にだして一緒に飛ばした。
「のわ! なんのじゃ! ライトニングボール!」
「なっ!」
今度は俺のほうに師匠の放った雷球も一緒に飛んでくる。
なんとか正解を見つけ出して打ち返す。
「魔法とか酷くないですかっ!」
「ドアホウが! 先に使ったのはそっちじゃろ!」
「だって勝てないんだもん!」
「…………きも」
きもいはひどい。
コレでも可愛くいったのに。
あーそうですか、そうですよね! 俺は全力で球を打ち返す。
10点先取で勝敗が決まるルール。
試合は白熱していって師匠が9で俺が8。あと1点でも入れられたら終わりだ。
「いきますよ!」
俺がボールを空中にあげた瞬間。
「ほれ」
ペロン。と師匠が浴衣の胸部分を出した。
大きな胸に見とれて俺のサーブはミスで終わった。
「10=8でワラワの勝ちじゃな」
「……ひどい!」
師匠のおっぱい、肝心な部分が隠れているからだ。
「ひどいもクソもあるかなのじゃ! 途中から魔法を入れてきおって……一応コレでも恥ずかしいんじゃよ?」
「魔法に関しては師匠だって、いやそれよりもそれ胸にニップレスとか!」
「そりゃそうじゃろ……女性客にはちゃんと配られるぞ」
「ひどい。ひどいよ!」
俺がひざを立てて泣いているとパタパタと走ってくる音が聞こえた。
「あ。メル姉さんにクロー兄さん。朝食の時間だって宿の人が……何してるの?」
「何も軽い運動、今行くよ」
「情緒大丈夫なのじゃ?」
俺はすくっと立ち上がって涙を拭いた。




