第382話 逆バニーっていいよね。と言うだけの話
「まったく君達は! エリクサーを何だと思っているんだ!! 最上級の回復薬だぞ! 市販はされていなくその製造方法は不明、聖女の魔力を込めて作ると言われてる秘薬。世の中には偽エリクサーが沢山あるというのに、本物じゃないか!! 何を考えているんだ!!」
怒っているのはギルドマスターのカイ。
でも顔はにやけている。
奴の手には4本のエリクサーがあるからだ。
「ふっふっふ。これだけあれば王国からたんまり……いやギルド本部から運営資金を」
「3本は駄目にしたけどな」
「…………あー聞こえない。聞こえない!」
大声で俺のツッコミを無視してきた。
「で。カイ坊よ鍵じゃ鍵」
「え? ああ……そうだったな」
カイは海パンに手を突っ込んで思いっきりまさぐると大きな魔石をテーブルに置いた。
「さぁ鍵だ。頼むから他の冒険者には内緒にしておいてくれよ。本当に危険なんだ」
「…………」
「…………」
「…………ロウ。受け取るのじゃ」
「俺!? 嫌なんだけど!? なにかほっかほかしてそうだし。ってかカイ! なんで海パンから出すんだよ!!」
気のせいと思いたいけど匂ってきそう。
「何で? と言われてもオレのマジックボックスがここにあるから。としか。よく見た前、オレは裸だぞ? 持ち物を入れるにはここしかないだろ」
だとしてもだ!!
「安心しろ。モノには触ってない綺麗な奴で匂いも無い」
「あってたまるか!!」
俺はもう一度メルナを見る。
「ワラワが他人の男のパンツから出したものを触れと? なのじゃ」
「別にメルギナスに触れと言ってないんだ。君も男だったらついてるんだ。平気だろう」
あーもう、すぐそう言う事いう。
俺の愛を試してるって感じにしたいんだろ?
後、平気なわけあるかい!! 大丈夫だよな。変な毛とかついてないよな。
ハンカチを出して何とか包む。
こんな汚いのをマジックボックスにすら入れたくない。
「袋……そっちの袋じゃねーよ。下をみるな! 革袋頂戴。革袋!」
「ふむ。オレのほうが年上でギルドマスターなんだけどな……まぁ無礼なのは許そう」
カイが立ち上がると背後の棚から革袋を取り出し俺に手渡してくれた。
すぐに魔石をいれると腰につける。
これで用事は済んだ。
師匠が少しすっきりした顔で立ち上がる。
「……なんじゃ?」
「ずいぶんと機嫌よさそうだなって」
「ああ。最近魔法を撃つ機会が少なくての。この数週間で何度も打つとしっくりくる感じじゃ。普段から打っておかないといざと言う時に発動が遅れたりもするのじゃ」
はいはいはい。
そうですか、そうですよね。
主に俺に撃ってますもんね。
「ギルドの壁補修はこっちもちなんだが。ああそうだ、クロウベル君……君だけのこれ」
「え!?」
メルナを見ると俺を見た後にさっさと廊下を歩いていく。
「それはいい考えじゃの。骨董通りの店にいるのじゃ」
それだけ言うと姿が消えていく。
「俺とメルナの楽しいデートを邪魔しないでくれる!?」
「ふん」
こいつ。鼻で笑った!?
「そういうな若人よ。これを君に……」
「なっ!?」
カイが棚から出したのは3つの貝殻。
もしかして、もしかする?
「そう。貝殻の水着だ!」
「水着ってもヒモないだろ……?」
「ヒモはない。吸い付くのだ!」
「まじで!!」
天才かよ。
貝殻を触ると固くなく柔らかい。
「え、くれるの!?」
「エリクサーの礼……いや、ちょっとした事もある」
「とは?」
「誰も来てくれないのだ! この水着!! 魔力の高いホッタテを厳選し。魔道技師が魔力を込めマジックシールドを付属したのに。ギルド職員に見せた所、セクハラ! と言われて危うくクビになる所に」
ギルドのような実力主義の組織じゃそうだろうな。
「では、冒険者に売る? とも考えたが」
「が?」
「嬉々として着るような女性には着させたくない」
「わかる!」
思わず即答。
俺を見てはカイは頷く。
恥じらいが必要なのだ。
別に嬉々として着る女性を見たければそういうお店に行けばいい。
貴族がいない田舎ならともかく、ちょっと大きい街に行けばある。
帝都なんてそんな店多かったし。
「別に怒っているわけじゃないのだ! ただ、冒険者ギルドのギルドマスターの部屋の壁を壊されたまま、帰すのは少し違うと思ってね。君ならこの装備をうまく使ってくれるだろう?」
俺は握手すると、紙袋を貰った。
3枚のふにふにする水着を貰って部屋を出……いや。
「なぁ……」
「む、これから部屋を治す見積もりを出すのだがなんだ?」
「世の中には逆バニーって考えがあるんだけど知ってるか?」
「なん……だと……」
その言葉をここで聞くとは思わなかった。
カイは俺をマジマジと見て、走って来た、驚く俺の手を引っ張る。
「なんだそれは!?」
「何って……ちきゅ……いや。昔見た古文書であった絵で──」
──
────
しばらくした後、俺とカイは握手をして別れる。
きっとカイなら持ち前の努力で逆バニー衣装を作ってくれるだろう。
もちろん普通の逆バニーじゃなくて冒険者が着れる特別仕様で。
冒険者ギルドの未来も明るい。と言う事で俺はギルドを後にする。
スータンの街の骨董通り。
そこに居た古書を開いて中身を見るメルナを見つけては声をかけた。
「ワラワは装備せんのじゃ」
第一声がこれである。
俺はまだにも言っていない。
「な、何の事でしょう!?」
「どうせあれじゃろ? ロウが帰って来ない時間を考えるとろくでもない事じゃろ? そして階段を降りてギルド員が『変な水着着ろって言われませんでした?』と、心配してくれての」
「やだなーそんな事ないって」
階段を降りた後に女性ギルド職員の眼が冷たかったのはこのせいか!?
男性ギルド員なんて小さく親指立てて応援してくれたし。
「じゃぁ何の話しておったんじゃ?」
「ええっと、スータンに置ける経済効果と対策を……」
「はぁ……馬鹿な事言ってないで宿とお土産を買うのじゃ。メリンダに会うんじゃろ?」
「え? ああ。はい! そうですね」




