第381話 ギルドマスターは後に語る。強盗より酷い
スータンの街に入場料を払って入る。
もうそろそろ無料にしてくれてもいいのに。と思いながら。
「で。まずはホテル行きます?」
「それもいいのじゃが、冒険者ギルドのほうが先じゃな」
っ!?
思わず足を止めてメルナを見る。
「冗談に冗談で返したんのじゃ……もしや本気で言っておらんじゃろうな?」
「もちろん」
本気です。とは言えない空気に。
だって。孤児院で子供作る行為とか出来ないじゃん!
建物は比較的壁は厚いよ? でも、知り合いが皆泊っているんだしさ。
だからこそ、ちょっと本気で……ってか。
「メルナさーん」
「……なんじゃ改まって」
「長寿族ってむらむらしにくい?」
メルナは手をひらを俺に見せつけるように伸ばしてくる。
手をつなげ。という合図だろう。
指と指を絡め合う恋人繋ぎをした。
「ライトニング」
「っ!? あばばばばばばばっばばばんばんばん…………はぁはぁはぁ。あの意気なり電撃は辞めてもらえます? 周りもほら」
通行人が俺達を見ては避けて通っていく。
「周りもほら。じゃないのじゃ……ワラワは悲しいのじゃ、一時の迷いでなんでこんな奴に体を」
「俺は最初からメルナ目的でしたけどね!」
「はぁ……昔言わなかったのじゃ? 長寿族は人とほぼ変わらぬ生殖器を持つのじゃが反面、子孫を残す。と言う意味では興味が無い。と、いうか出来にくい。と言ったほうがいいのじゃ。納得したのじゃ? ほれ行くのじゃ」
「うい」
体の痺れも治って来た所でメルナの横を歩く。
昔来た時はメルナの後ろを歩いたなぁ。そう考えると俺も成長したのだろう。
「あっ!」
「っ!? 何じゃ?」
「いえ、何でもないです」
メルナが杖をしまうのを確認して再び歩く。
あれ先ほどの答えって……別にメルナが『ムラムラしない』とは言ってないような。
現に過去何度もメルナとそう言う事をしてるし、俺もつい『納得したのじゃ?』に釣られて頷いたけどさ……。
ここで話をぶり返したら機嫌損ねそうなので辞める。
冒険者ギルドの看板が見えメルナがその中に入ると口笛などが聞こえて来た。
忘れそうだけどメルナってナイスバディだし。
「しっしっし! この大きな胸や尻は俺のだから! ねぇメルナ」
「だ、れ、の、じゃ! ライトニングバースト!!」
俺の体が電撃で吹っ飛び窓ガラスを割って外まで吹き飛ばされる。
その後に巨大なテーブルが俺の頭をかすめる。
あっぶね。
当たった大惨事だ。
いくら再生(強)あっても、周りがその光景みたらゾンビみたいなものだからね。
パンパンと衣服を手で叩きメルナの横に戻る。
メルナの前には海パンの男が1人。
まだ若く、筋肉がぴくぴく動いている。もしかしてメルナに対抗してるのか?
ともかく、そんな変態はスータンの冒険者ギルドマスターのカイだ。
「久しぶりだな君達!」
「久しいのう」
「よっ」
数回しか会ってないのにこっちの顔を覚えてるなどとても優秀だ。
俺なんてすぐ忘れるのにさ。
「メリンダに何か用事なのかい?」
「いや、後で挨拶にいくとしてピラミットに入りたい」
「……別に入場料払ってくれれば入っても構わないが?」
まぁそうだよね。
上の部分は観光ツアーまであるもん。
「魔力の無い地下19階に行きたい」
周りがざわっとなった。
スータンのピラミット。公式には地上6階、地下4階しか公開されていない。
それよりも地下は一部の人間しか知らないし、冒険者の中でも都市伝説に近い話だ。
俺は隠しダンジョンとして先に情報知ってるけど。
「君達!! 面白い事をいうなぁ!! 都市伝説だよ、都市伝説! それよりも新作水着があるんだ。なんと隠す部分が貝殻なんだ。試作品はこっちにある……来るかい?」
最後の『来るかい?』の部分でカイの顔から汗が噴き出ている。
そこまで誘われちゃ俺も男だ。
「いく! 俺、貝殻、見たい!」
「ほうほうほうほう、そこの男2人よ。もしやワラワに着させようと魂胆じゃないじゃろな?」
背中に圧が来る。
これが圧じゃなくておっぱいだったら最高なのに。
「君、絶対に振り向くな。鬼がいる! さぁこっちだ……さて職員達よ。少し席を外すが適当に業務をやってくれた前」
ギルドマスターのカイが2階に走るので、俺も前だけを見て階段を登る。
わざとらしいが、カイに誘われたためメルナも大人しく俺の後ろをついて着てるはずだ。
ギルドマスター室。と書かれた部屋に俺が入ると、カイがすでにいた。
最後にメルナが入って来て……杖を構える。
「はい!?」
「メルナ!?」
「なに、ようはピラミット地下の噂話をかき消したいんじゃろ? ここでワラワが怒っていたほうが水着の真実味があると思わんのじゃ?」
確かにそうなんだろうけど!?
部屋全体が真っ白に光ると、壁が吹っ飛びカイだけが吹っ飛んでいった。
俺はセーフ!
何とかセーフ!
「い。生きてるのを喜びたい!」
「…………大げさな過ぎるのじゃ。あやつだって腐ってもギルドマスターこれぐらいの魔法じゃ死なないじゃろ?」
俺とメルナがギルドマスターの部屋で待つこと、たぶん1時間。
やっとカイが戻って来た。
あちこち包帯だらけで松葉杖すら突いている。
「ま、待たせたかな」
俺はメルナを見ると、メルナは俺と目を合わせない。
「痛がるフリじゃフリ」
「はっはっは…………スータンのヒーラーが20人掛かりでやっとここまで回復出来たよ……」
「ちょっとかわいそう」
「むぅ……ちょ、ちょっとだけ力加減間違えたかの、ほれ、ロウは頑丈だから同じようになのじゃ……ほれ。これを飲むのじゃ」
メルナはカイにエリクサーを手渡した。
カイは「ハイポーションかい?」と言っては飲むと今度は叫びだす。
「君達!! これはエリクサー!!!」
「これで手打ちにするのじゃ」
「はー何てもったいない事を。俺が飲まなければギルド運営が3年は楽になったのに」
メルナが俺をちらっと見て来た。
なるほど、その手を使えって事か。
「ええっと本題入るけど、ピラミットの隠し地下迷宮の許可ちょーだい」
「…………ああ、その話だったな。出来るわけないだろ。危険すぎる、いいかい? 冒険者ってのは馬鹿ばっかりなんだ。君達に許可を出してみろ、俺も私もと入る馬鹿が多くなる。結果どうなると思う死人が多く出て評判が下がる」
気持ちはわかる。
「どこでその情報を知ったのか。メリンダの占いかい? 少し控えるように伝えたばっかりなんだけどな……」
メリンダは関係ないんだけどな。
さて……交渉するか。
俺はマジックボックスから7本のエリクサーを取り出す。
アリシアが何かあったら。と持たせてくれた分も含めてだ。
「な、もしかして!?」
「そうエリクサーだ。全部で7本」
「腐ってもギルドマスターだ! そんな買収には乗らない!! 例え何本増えようとも!!」
海パン一丁で変態でなければ言ってる事はかっこいい。
俺は1本のエリクサーを手に取るとメルナに手渡す、メルナは小瓶のふたを開けて床にエリクサーをぶちまけた。
「なななっ!?」
「はい、これで残り6本。ちなみになんだけど……許可下りなくても地下には行くよ?」
「はぁ!? 冒険者ギルドの許可なしに許されると思ってるのか!! ギルドマスターの権限で君の──」
「俺冒険者登録してないし」
俺はまたメルナに1本エリクサーを投げて渡す。
見事胸の間にエリクサーが挟まると、思いっ気ににらまれた。
冗談ですやん……。
「ロウよ、手渡しなのじゃ手渡し!」
「うい」
「さて……カイ坊よ、これで残り5本じゃな」
「ぐああああ!」
「さて残り何本残るかなぁー」




