第380話 出発前に『抱きついてもいいですか?』と
俺がセリーヌの場所から戻って来た既に10日たってる。
なぜ10日もたってるか? と言うと、調整が必要だから。
1、リターンの魔法を組み込んだ魔石。
メルナとスミレが共同で開発していた魔石はスミレが持って来たのを含めやっと5個ほど出来た。
なお、俺がセリーヌから貰ったリターンの魔法を組み込んだ魔石の『完成品』をメルナに見せたら、中の魔力がすでにからなのじゃ。これじゃ解析に使えんのじゃ。と、殴られた。
2、移動部隊。
会議では行く、行かない。と色々問題はあったが実際に手の空いてる人数は少なく皆忙しそう。暇なのは俺とメルナだけですね。とメルナに言ったら蹴られた。
3、魔石の魔力の補充。
最初にでたリターンの魔石を組み込んだ魔石。
魔力補充をしないといけないらしく、スータンはともかく遠い場所にあるストームまでの魔力補充に時間がかかる事。
『転移の門』で言ったらどうです? って提案をしたけど『毎回ロウが転移の門を壊すのじゃ!』と尻をつねられた。
ってわけで今である。
庭に出ると洗濯物が沢山干してある。
空を見ると『太陽の日差しで外が暑い』
…………太陽って何?
前世の記憶が戻ってから何度もよぎる疑問だ。
地球じゃないんだし、なんで太陽なんだ? と。
ここは未来の地球なのか? と言うとそう言うわけでもない……あれ。
古代遺跡でデバックルームもあったしメタ的な考えで言えば地球に……うん。難しい事は辞めよう。
ゲームベースの現実世界。というか、まぁ宇宙は広いんだしこういう事あっていいんだろう。と無理やり納得するしかない。
それでも納得出来ないなら、もう真理の扉を開くしか。
頭をふって考えを変える、この時間は数少ない子供たちは聖騎士隊の若手と一緒に運動をしている時間だ。
なんやかんやで子供たちは12人ほど生活してる。
一応名前は聞いたけど……まったく覚えてない。ごめんなさい。
顔はわかるよ!? 活発な子とか大人しい子など。
教育に至ってはアリシアとクローディアが中心となり決めてる所。
これが凄いのが、子供たちに飽きさせないように遊びを使っている所だ。
例えば兵士の訓練って永遠に剣を振ったりなんだけど……アリシアはボール遊びなどを使って基礎体力を上げたりだ。
俺がアンジュに弟子入りした時なんて素振りと走り込みメインだ。
俺も俺でそれが楽しい。と思って繰り返していたけど……アリシアにそれを提案したら、引かれたし。メルナに至っては『かわいそうじゃな』と呟かれた。
なので、アリシアの授業は学校で言うと体育の授業に近い。
子供の頃は体育って意味が無いと思っていたけど、さすがにこの世界では意味がある。
さらにアリシアやクローディアの考えで王国にいながら王国や帝国の事、両方を学べる。それはもう良い所も悪い所も。
もしかして未来の学園ってアリシアが作るのかもしれない。
「パパ?」
「ほっとくのじゃ、ロウはいつも変な事を考える癖があるのじゃ」
「ないですけどね! ってあれ、サクラどうした? メルナもいつの間に」
2人がワープでもしてきたぐらいな距離にいた。
「どうしたって出発するのに来たんだけど。ねぇスミレ」
「……ふん。クソ親父」
ああ。もう1人いたわ……反抗的すぎる息子が。
そう言う事言う? じゃぁ俺も言わせてもらうけど。
「俺に負けたくせに」
「はぁ!? 負けてない! アリシアさんが居なかったら親父なんて今頃、骨だけだろ!」
「アリシアがいなくても再生するしぃ。未来で勝てないからって過去に来る普通!?」
「だから、あれは呪いの装備のせいだっていっただろ!」
「いーや。呪い装備何て気合があれば跳ね返せる!」
うっ!?
首を掴まれて後ろに下がらされる。
振り返るとメルナの顔が見えた。
「ロウよ。それぐらいにしとくのじゃ……」
スミレのほうも声がする。
「そうよ。スミレお兄ちゃん、パパが困ってるでしょ!」
スミレのほうも首の根っこを掴まれているのが見えた。
お互いに距離を取らされるとアリシアがひょっこり顔を出してくる。
「もう2人とも喧嘩はだめだよ? それより気をつけてね……サクラさんにスミレ君」
あのー俺の心配は!?
「向こうは大丈夫だろ、しっかり者のサクラがいるから。問題はこっちがメルナしかいないって事でえええ! あの、いきなり叩かないで貰えます?」
「いきなり叩かれるような事を言うななのじゃ」
真実をいっただけなのに。
「スミレとサクラ。アイテムの試作機は持っておるのじゃ? 何かあれば迷わず使うのじゃ」
「はい! スミレお兄ちゃんとメルさんが作ったリターン魔石ですね」
サクラは俺に赤い魔石を見せつける。
メルナも同じのを持っていて、俺はメルナからそれを黙って受け取った。
見た目は普通の魔石。
セリーヌから貰った奴にそっくりで、違うのは両方にボタンがついていた。
あれ、セリーヌから貰ったのにはこんなボタンついてなかったのに、試しに押してみる。
「赤いほうのボタンを押すと瞬時に──」
「あっ」
カチって音がすると魔石から魔力があふれ出た。
「ん?」
メルナの引きつった顔が見え、俺は慌ててメルナを抱きしめた。
おっぱいが顔にあたって嬉しい。とかそんな感情は一度置いて置く。
体が一瞬で空に飛ぶと物凄い勢いで飛ぶ、セリーヌの貰ったほうと違って空気抵抗がやばいぐらいに来る。
ジェットコースター並みだ。
メルナが耳元で文句を言っているが風の音で聞こえない。
懐かしいイフの街並みが見え、広大な砂漠が見えてくるとスピードが緩まり今度は一気に急降下していく。
「ドアホウ! 説明は最後まで聞けなのじゃ!! 水盾を足元に。出来んかったらワラワがやるのじゃ!」
「うい」
任せてもいいけど、出来る事はちゃんとやる。
なんせメルナから信頼されての命令だ。
足元に水盾・連を唱え落下速度を抑えた。
最後の1枚が消える頃にはほぼ衝撃が無く砂漠の上に降り立った。
「いやぁ着きましたね」
「着きましたねぇ。で済ますつもりじゃ!? ドアホウがいきなり魔石を押すからこうなったんじゃ、しかもじゃ。いきなり抱きつきおって……」
「え、じゃぁ今度から抱きつく時は許可取りますね」
「………………殺すぞ」
なんで!?
真面目に言われたんだけど!?
「とりあえず、スータンの街に」
「はぁ……そうじゃな……ピラミットに入る許可もいるじゃろ」
勝手に入っていいと思うけどね。
スータンの街まであっさりと着いた。
だって途中で出会う魔物が一切いない。
序盤の街。と言う事もあるけど、メルナや俺に立ち向かって来る敵は迷宮以外あまりいないからな。
今後は護衛の依頼を受けてもいいかも、でもこの辺の相場って安いからなぁ。
「ほれ。さっさとギルドに行くのじゃ」
「うい」




