第359話 ギース君ご満悦
ヒーローズの町まで定期馬車での移動。
最初はサンの所にいって飛空艇出して。って頼み込んだら思いっきり断られたので仕方がない。
サン曰く『貴方とはお友達ですけど緊急時以外にそう国家機密の船を出せると思ってますの?』とまで言われたら仕方がない。
ここまで来るのにすでに5日。
流石に5日間乗りっぱなしではなくて途中で小さい宿場によったりと時間はかかる。
街を守る若い男に挨拶をする。
「用こそヒーローズにって。物好きだね……観光する場所もないしあるのは迷宮ぐらいなもんだよ?」
「まぁ……その迷宮に用があるというか」
「だったら冒険者ギルドに行くと言い、許可書を発行してる」
俺の事を知らない若い男にお礼を言ってヒーローズの街に入った。
まぁこれが普通だ。
逆にいつも『あっクロウさんだ!』とか言われるのは面倒である。
だって、仮にちょっと草むらに隠れておしっこでもでもしてみろ。
『あのクロウさんが草むらで!』って大声で呼ばれてしまう、いまだったら知らない奴がおしっこしてる! だけだ。
別に今俺がトイレに行きたいわけじゃなくて……ちょっと1人になりたいだけ。
馬車休憩の時にし忘れた。とかじゃなくて草むらに移動する。
街の内側から壁を黙って見つめると、なぜかすっきりしたので街の中へど誰にも見つからないように戻る。
「ふう……しかし来るたびに発展してるな以前無かった建物がちらほら、門番は観光する場所が無い。と言っていたけど迷宮1つあるだけで活気は違うよ」
まずはクィルの家へと向かう事にする。
途中で買ったお土産も先に渡したい。
街の外れにあるちょっとした一軒家のドアノッカーを鳴らす。
すぐ近くの窓が開くとギース君と眼が合った。
「お前は!」
「よう」
「またトラブルを起こしたのか!?」
「どういう意味だ」
とにかく入れ。と言う事で再びクィル&ギース君の家へと入る。
部屋の中は整頓されていてクィルの姿が見えない、なんだったら赤ん坊もだ。
ええと、こういう時が一番困る。
別れた。ぐらいならまだいい。
壁や棚などに親子3人の絵などが飾ってある。
ギース君はその絵の前にある花瓶から枯れた花を捨てると静かに手を合わせる。
「ギース君さぁちょっと質問なんだけど」
「なんだ?」
「ええっと……クィルは……その」
「ああ。アレだったら亜人の里にいるはずだ」
あっなんだ。
紛らわしい奴め。
「別れた?」
「別れてたまるか! それよりお前も手伝え。茶がどこにあるのかわからん」
「お構いなく」
「茶の一つぐらい出さないとクィルに何を言われるかわからん」
あっ。そうなのね。
仕方が無いので俺も茶葉を探す。
引き出しを開けると真っ赤な布が見えた。
広げるとCカップぐらいのブラだ。
「なるほど」
とりあえず俺は見なかった事にしてブラを引き出しに戻す。
下の段を開けた。
黒いハンカチがあり広げるとパンツである。
どう見ても女性もの。
「なるほど」
これも俺は見なかった事にして、アンジュの剣をだし飛んでくる槍をなんとか弾く。
「貴様!!!」
「ま、まって誤解だから! 茶葉を探そうとして」
「台所から離れたタンスにあると思うのか!! 俺の妻だぞ!! 貴様は人妻の下着を」
「全然興味ないし、俺だって汚い下着なんて触りたくない!」
別に他人の下着に興味ないよ俺? これがメルナのだったらご馳走様でした。なんだけど……。
俺の首筋めがけて槍の先が飛んでくる。
構えを終わったギース君が俺に攻撃をしてるのだ。
「っ!? 貴様……クィルは綺麗で素晴らしい女性だ。その下着が興味が無いだと……? いいだろう、お前とは一度決着をつけたいと思っていた」
やっべ。
本気の眼だ。
周りの魔力が急激にギース君に集まっていくのが分かる。
いくら俺でも訳の分からない攻撃はされたくないし、こんな場所で殺し合いもしたくない。
「ま、まてお土産。お土産を見てから」
「くどい!」
「ぱらぱらっぱらー、スクール水着ー!」
作り笑顔で何とか場を和ませる。和ませれなくても無理やり変える。
ギース君の殺気が少しだけとまったような気がした。
「これは古代人が来ていた水着を模写したもので、布は水属性の貴重な布を使った特注品。泳げないや泳ぎに自信がない女性でも着れる品物。サイズは平均女性なら入る。ちなみにメルナは入らなかった……あっもちろん中古品じゃなくて持って来たのは新品だから」
メルナが途中まで着たのは俺が家宝にしようとしたら奪われて燃やされた。
「さらに凄いのはここが開く!」
旧スク水についている水抜き穴を紹介する。
水抜き穴とは下半身部分に水がたまるため、ちょっとずらすとそこから溜まった水が出る仕組みなのだ。
「それを俺に見せてどうするきだ?」
「………………色んなプレイに使える、2人目の赤ん坊だってすぐに」
俺とジーク君は沈黙する。
ジーク君が禁術で『時を止めた』のかと思ったほど、かろうじて外から聞こえる鳥の声で時間が動いているのだけがわかった。
「……突然だが最近は暑い日が続く、湖でも行って泳ぎたいと思っていたんだ……頂こう」
「うい」
よかった機嫌が治ったみたいだ。
別に怒らせに来たわけじゃないしな、挨拶がてら情報を聞きたいのだ。
「で、何の様なのだ?」
槍を壁に置いたギース君がやっと探し当てた茶葉でお茶を持って来た。
「ここ最近俺を見なかった?」
「…………とうとう狂ったか。メルギナス様にでも捨てられたのだろう、人間と長寿族は相成れない事のほうが──」
「ちげえ! そっちは大丈夫」
「…………まぁメルギナス様がお前のような人間に本気になるとはおもわないが迷惑だけはかけるな」
俺の評価ってそこまで下なのか。
「正確には俺みたいな奴。顔を隠している奴とか変な奴とか、白の迷宮に来たとか行ったとか」
「ああ。あの迷宮か……近くに新しい迷宮が発見されて旧迷宮は大蛇のボスと言う事もあり封鎖されてる……まぁお前だったら大丈夫だろう。この紹介状を見せろ、入れるはずだ。この紹介状は迷宮攻略部隊に後から配布されたものだ、俺よりも強いんだ生きて帰って来れるだろう」
俺に1枚の紙をくれた。
中には読めない古代語が書かれていてとりあえずマジックボックスに入れた。
「どうも、あの俺……中に入りたくないんだけど……人探しで来ただけだし。あと俺は弱いからね」
俺が聞いたのは俺のそっくりの魔物の話。
別に迷宮に入りたいわけじゃない。
「じゃぁ返せ」
「…………いや、これはこれで貰って置くけど。便利そうだし」
「返せ」
「さて。帰るわ」
「返せ!」
「…………今度もっと凄い衣装もってくるから」
ギース君の力が弱まった。どうやら大丈夫らしい。
周りを見ると誰も居ない事を確認し俺に力強く頷くので、俺も頷き返した。
「情報が欲しいなら冒険者ギルドに先に行け……もっともお前みたいな男が来たならすぐにわかると思うが」
「りょ」
短い挨拶をしてギース君の家を出た。
と、なると……次は言われた通り冒険者ギルド。
新しい建物の冒険者ギルドに付くと人が多い……町の発展時には稼ぎがいいのだ。
普通の雑用から迷宮攻略までとにかく冒険者が多い。
その間をかき分けてやっとカウンターに付く。
「なんの御用でしょうか?」
「人探し。黒髪で短髪、カッコよくで水魔法が得意で恋人にぞっこん。さらに顔を隠した男みなかった?」
「あ、1人いますね」
「…………まじで?」
冗談で言ったのに真面目な顔のギルド員が俺に書類を渡してくる。
「はい、数日前に封印してる扉を壊した男と条件がそっくりです。そのまま迷宮に潜ったので出てくるのを待っているのですが……あの、関係者の方でしょうか? であれば彼の詳細を……あの!? ちょっと、どこに行くんですか!?」
これ以上の情報はない。
カウンターに依頼料を置いて急いで走る。




