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負け悪役貴族に転生した俺は推しキャラである師匠を攻略したい  作者: えん@雑記


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第348話 常識的なお願い

「クロウ君寝不足かな? クマがすごいよ?」

「…………そうかな?」

「少し寝たほうが……」

「いや、起きてる!」



 一瞬だけど角の折れたユニコーンのぬいぐるみが動いたような気がしたから。



「ってか、そのぬいぐるみ捨てたら?」



 もちろん冗談だ。

 あのバクの意識があるなら脅しと言う所。



「うーん…………クロウ君がそういうなら焼いちゃうね」



 アリシアはぬいぐるみを火のついてる暖炉へと投げ捨てた。

 俺は暖炉の中に体を突っ込み、ぬいぐるみを守る。



「あっち! あちいい!!」

「クロウ君!?」

「はぁはぁはぁはぁ『癒しの水』『癒しの水』」

「ハイ・ヒール!」



 俺の体に2つの回復魔法がかかった。

 あちこちの火傷が治っていく。

 俺の手の中のぬいぐるみが震えているような気がする。




「ありがと」

「ぬいぐるみ返して、ちゃんと焼くね」

「いや。俺が悪かった……確か両親が残した一点ものなんだろ?」



 懲らしめるためにいった冗談だったんだけど。



「うん、覚えていてくれたんだね。でも、それを知ってるクロウ君が『焼いたら?』って言うんだもん何かあったんだよね? 私の中の記憶と少し形が変わっちゃってるし。たしか先生が治してくれた時角がもっと長かったような……」

「へぇ……」

「何があったの?」



 笑顔の圧が凄い。

 正直に言うべきか、言わないべきか。


 架空の未来の話で俺とアリシアが恋人だったよ。って言うの? 言えるわけがない。



「何もないよ」

「本当?」

「マジで何もない」

「ふーん……クロウ君が良いなら良いけど……大事にするから返してね」



 俺は黙って角の折れたユニコーンのぬいぐるみを手渡す。

 まぁこれで悪さはしないだろ。

 ってか後でメルナに会ったら問い詰めてやる。



「ええっと……聖騎士隊が来るまで暇だから俺も何か手伝うよ」

「本当? でも私のせいで帰れないんだしゆっくりお茶でも飲んで、少し高いのあるんだ」



 お茶か。



「クウガが来た時にでも飲ませたら?」

「…………なんで私がクウガ君にお茶を飲ませないといけないのかな?」



 笑顔のアリシアからなぜか圧が来る。

 圧って思ってるだけで、殺気に近いからね。

 良くわからないけど怒ってるようだ。



「ええっと……そのごめん」

「どうして謝るのかな?」

「そうだ外でガレキでも運ぶよ!」



 俺は外にでて孤児院跡にある瓦礫を拾っては隅に動かす。

 数回繰り返していると、圧の無くなったアリシアが俺にタオルを渡してくれて指示を出してくる。



 どうやら俺が端に移動させたガレキは目印の石だったようで、もう一度同じ位置に移す作業を繰り返す。



「アリシア―」

「なーにー?」

「何か困ってる事ない? 常識的に俺が手伝える事で」



 バクの件があるし、一応予防策を張っておく。

 流石の俺である。



「常識的にかぁ、じゃあ無いよ」



 考えるそぶりもなく『無い』と言われてしまう。


「非常識的には?」

「言った所で手伝ってくれないのに言うわけないよ? あっその石は右側においてね」



 アリシアの態度がちょっと冷たい。

 完全に余計な一言を言った感じがする。



「わんちゃん、俺が手伝うかもしれないし……」



 聞こえるか聞こえないかの小さい声で話しかけるとアリシアの動きが止まった。



「うーん……男らしいのは夢だけかぁ」

「な、何の話かな?」

「ううん。クロウ君には内緒。しょうがない、じゃぁ一応言うけど……近くにある迷宮に行きたいの」

「え? 今さら?」

「すごい。近くにある迷宮だけで話が通じる……そういう所だよクロウ君」

「あーえー……クウガに聞いた」

「はいはい」



 呆れられた顔だ。


 それよりも。とある迷宮。

 ファーストの街近くのある初期迷宮。

 地下3階までで、ボスはハグレコウモリ。


 すばしっこくて攻撃も痛いがチームワークさえ有れば楽に倒せる奴だ。



「取り逃した宝とか? 魔力の実、鉄の剣、後は誰かのへそくりで50ゴールド」

「最近ね、地下4階……ううん、もっと下が発見されたの」

「ほう…………」



 となると、隠しダンジョン。



「古代都市だよ」



 世界のあちこちにある古代都市。

 イフの街。帝国の地下。フユーンの地下。などあっちこっちにある。

 何であるかは知らないし知ってそうな裏アーカスも今はいない。


 いや。

 デバッグルームもあった事だし、たぶんここに裏ダンジョンがあれば面白いだろうなって簡単な理由かも。


 俺含め、この世界の人間はそんな簡単な設定を付けられて生きるか死ぬかの人生送ってるんだけどな。



「どうしてすぐに答えを言うのかな!?」



 え。怒られてる!?



「いや、知りたいかと思って……」

「そういう所だよ! クロウ君!! 私は安全かどうかの確認についてきて欲しいの!」

「ああ。そういう事なら……でも安全だ──」

「少し黙ってくれるかな? 何もなければ封印。何かあれば安全にして封印! わかった!?」

「は、はい」



 滅茶苦茶怒られてる。

 じゃぁ俺必要なくない? って思うんだけど。



 機嫌を取りに行ったのに余計に悪くさせてしまった。


 なんで?



「ふぅふぅ……怒鳴ってごめんね」

「いや、俺が……な、なんでもない」



 俺が悪い。って言おうとしたらアリシアがにらんだから。



「よろしい。悪くないのに謝るのは良くないよ? そういう所ってクロウ君とクウガ君似てるんだよね」

「まじで!? すぐに治すわ」



 冗談じゃない。

 クウガの生き方は否定はしないが、あんな種馬と一緒にされては困る。


 夕方まで手伝いをし『羊亭』へと戻る、年取ったヒナタさんが「泊ってくるのかと思ったよ」と言うが「友達とはいえ異性だから、俺恋人いるし」って答えると意味ありげな顔をして酒を1本くれた。



 寝る前に何度もベッドを見る。

 いくら何でももうイベントは見る事ないよな? これで回想イベントが始まったら俺はバクのぬいぐるみを八つ裂きする自信がある。


 普通に寝て普通に起きた。

 これから寝るのだろう、ヒナタさんに挨拶しアリシアと町の入り口で待ち合わせ。



「おまたせクロウ君」

「いや、それ俺が言うセリフ。これでも早めに出たんだけどいるとは」

「本当は先生が来るまで待ってようと思ったんだけどね」

「メルナが?」

「1人で調査は危ないし」



 最初の迷宮なだけあって日帰りコースの場所にある。

 粗末な立ち入り禁止の看板を抜けて迷宮に入ると周りの景気が一瞬で変わる。

 同時に魔力が充満し俺の五感を興奮へと誘う。



「クロウ君嬉しそうだね」

「え? ああ……この迷宮特有の魔力というか好きで」



 前方に手を出し水槍を唱える。

 空中に現れた水は一瞬で複数の槍へと形を変えて雑魚魔物を一掃させた。



「あんまり無傷では私の意味がなくなるから、そこそこ怪我してね」

「聖女らしからぬ発言で」

「聖女の前に1人のアリシアとしての意見だよ」



 俺の興奮が移ったのかアリシアも笑顔だ。

 地下2階、3階を抜けボスの部屋へとついた。


 古びた祭壇跡があり今は綺麗に掃除されている、その端には穴があり縄ハシゴがかけられているようだ。



「じゃぁ私からいくね」

「うい」



 アリシアが縄ハシゴを下っていく。頭が地面から隠れ、俺は上からアリシアへと「大丈夫か?」と声をかけていく。


 こういう時は1人ずつ降りるのが鉄則だ。

 だって縄が切れたら危ないだろ? こういう風に。


 は?



「ばっ!!! アリシア!! 縄が切れる! 上がれ!!」

「そんな直ぐには上がれないよ!!」



 切れたローブを掴み穴に引きずられる俺。

 右手で縄をもち左手は穴ぎりぎりを掴んでいる。



「お、重い……」

「私そんなに重くないよ!?」



 そういう事をいってるんじゃない。

 ってか左手が滑って落ちそうだ。


 穴の底はまっくら……最低骨折、最悪即死。



「アリシアっとりあえず俺の背中を伝って上に!」

「わ、わかった!」



 流石のアリシアだ。

 ボケもなくちゃんと手本を…………いやまってアリシア。アリシアさん!?



「ズボン引っ張らないで!?」

「クロウ君こそズボン脱がないで!?」



 脱いでない。

 アリシアがよじ登るのに引っ張るからだ。



「あっ!」

「あ……」



 俺のズボンが無くなった。



「クロウ君ってトランクス派なんだね」

「良いから早くって下から見ないでくれる!?」



 トランクスってのは風通しがよくて覗くと中が見えたりする。

 そうラッキースケベ発動中だ、アリシアの。


 アリシアは足からお尻、腰から背中にかけて上がっていき、最後に俺の頭を踏んで上へとでた。


 後は俺の手を引っ張ってもらうだけで……あっ。



「クロウく──!!!!」



 俺の名前を呼ぶ声が反響しながら落下をしていった。



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