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負け悪役貴族に転生した俺は推しキャラである師匠を攻略したい  作者: えん@雑記


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第347話 ユニコーンは乙女だけのものだよ?

 泣きながら『羊亭』に戻ってベッドに入る。

 メルナが言うには「たぶん『羊亭』のベッドが開始スタートになってるんじゃろ?」と、俺でもわかるような事を得意気に言ってくれた。


 俺は知ら無い振りして褒めるとメルナは喜んでくれたようで。



「さて! ってか回想イベントなのにひどすぎるだろ!!」



 半分ブチ切れで俺はベッドにもぐりこむ。

 数秒で眠気が来たと思うと、ユニコーンのぬいぐるみを持ったちびアリシアが俺を見ていた。



「おじ──」

「へい、嬢ちゃん! 俺は神だYO。いう事きけYO」



 謎のラップでちびアリシアに今回の注意点を伝える。

 海。食中毒。崖。


 さらに。



「何でもかんでも拾うな。特に貝! メルナが言うには呪い図鑑の114ページに乗ってるから絶対に触るな! 多分教会にも本ぐらいはるだろって」

「わかりました」



 長い回想イベントを繰り返して体験する。

 この短期間に4度目となると俺もすでにイベントを見てない。

 回想が始まり1シーン終わるまで横になりぼーっとする、いつの間にか終わってるので歩いて場面切り替えまで進む。それを繰り返すと目が覚めた。



「こ、今度こ…………そ?」



 『羊亭』の2階で目が覚めたのはいつもと同じ。

 1階へ降りると、年をとったヒナタさんが俺を見る。



「おはようございます!」

「…………私は反対だ」

「はぁ」



 謎に怒られて丘まで歩く。

 もう大丈夫だろう。

 アリシア→クウガ→ミーティア→メルナ。

 これ以上俺のフラグを立てるような奴はいない。


 《《そもそも俺ってもてないし》》。



 アリシアは例外だけどな。


 メルナの次にノラが来るとは思えない、ノラは俺の事を好きというか《《兄と》》思ってるだけだろ。


 サンやメーリスは利害の一致だし、アンジェリカなどは王国のために俺と付き合ってるぐらいだろ。


 他にも女性といえばフレンダがいたけど、普通の友人としか……そういえば何度も占ってもらったのに正式な料金を払った事が無いかもしれない。

 今度払いに行かなくては。



 小屋が見えて来た。

 すぅーはー、すぅーはー……深呼吸してノックをする。



「ただいま!」

「…………おや?」



 俺は次の言葉を失った。

 だって髭が濃い筋肉質のおっさんがそこに居るから。しいて言うなら東南アジア系の男だ。


 え、こんな人今まであったっけ?



「もしかして、俺の恋人じゃないよね……ええっと名前」

「……君の悪い事を言わなくてくれ。いや、申し訳ないクロウベル君。頼まれた通り小屋を片付けている、グラム」

「あっ! なるほど……それはご丁寧にありがとうございます……で。他の人は?」

「他の人?」



 グラムというおっさんは意味が分かってななさそうな顔で俺を見ている。



「普通に話せ。と命令を受けている以上、口の悪さは我慢してくれ……君の考えは個人的には賛成だが、わかるだろ?」



 え、孤児院作るのに反対の人間がこんなに多いとは……そりゃ一応は事業だけどさ。



「しかし、この街に娼館とは……」

「はい?」

「どうしたんだ?」



 聞き間違いかな? 孤児院じゃなくて娼館?



「俺がここに娼館を召喚?」

「そうだとも、スタン家当主自ら。海辺の町に娼館を作る……看板だって、ほらこの通り」



 大中小とある看板にはユニコーンの絵が描かれている。

 娼館にユニコーンとは洒落が利いていて俺は好きだ。



「じゃなくて」




 何やってるの俺!!



「アリシア。クウガ。ミーティア。メルギナス。この名前に聞き覚えは?」



 グラムのおっさんは腕を組んで考える。



「俺も新参者だしなぁ……この町から冒険者になった3人がそんな名前と聞いた事があるが、たしか共同墓地にそんな名前があるんじゃないか。最後の1人はわからない」

「あっそう……とりあえず今日は帰ってくれ。これ日当」



 金貨3枚だしてグラムのおっさんに渡すと、さっさと帰ってくれた。

 俺は近くの椅子に座って床を見る。



「全員死亡ルートは考えてなかった……いや、あるとすれば全員妊娠パターンだろうなって思っていたよ? クウガなんて腹を大きくして『俺の子』です。とかさ……いや。色々ときつい。ってか」



 悪役令息を極めると、悪役領主になり、さらに周りの町を支配下にしていくのか。



 さて……イベントに戻るか。



 『羊亭』に戻るとヒナタさんから思いっきりにらまれる。

 かといって追い出す事をしないのは俺が貴族だからだろう。


 何も言わずに2階の客室に入り目をつぶる。

 数秒で景色が変わった。



「お──」

「いや、もういいから。水槍」



 俺の魔法が発動するとアリシアを貫く。

 いや、正確にはアリシアが持つユニコーンのぬいぐるみだ。



「べっぶ」



 アリシアを含む周りの時間が止まる。

 ユニコーンのぬいぐるみは一言喋ったかと思うと、何も喋らなくなる。

 ひょいっと掴んでみると……俺にも掴めた。



「ほう……掴めるんだ。さて燃やすか」

「ま、待っ」

「待たない」



 待たない。とは言ったが、俺って水魔法が得意なだけで火系は全然なんだよな。

 頼みの綱のちびアリシアはマネキンのように固まってるし。



「大体さ。自己主張が強すぎる、俺がこの回想に入るきっかけというか……地下で『お前』を見つけてからだぞ……しかも箱の中。あれって封印されてたのと同じだよな。で……回想シーンだけならともかく」



 違和感に気づいたのはメルナの回だ。

 メルナが『ユニコーンのぬいぐるみ』をぽんぽん触っていた事だ。

 元々がアリシアの持ち物なのに、しかも『ユニコーン』どう言う事だってばよ。

 ユニコーンの象徴は『乙女』なのだ。


 アリシアはわかる、のちの聖女だし。

 クウガは……ひと先ず置いておいて、ミーティアもまぁ百歩譲ってアリシアの仲間だし。


 きっかけを作ったメルナは魔女だぞ。

 聖女と一番遠いわ。


 で、全滅ルートからの『ユニコーンの看板』犯人は……。



「お前しかない。どうする? 内蔵がでるぞー」

「ま、待つんだパニ!」

「お。やっと喋ったか」



 ぬいぐるみの口が動くと俺を見た。

 相変わらず、ちびアリシアは固まったままだし、ちびクウガが出てくる予定の扉もそのままだ。



「で、お前……バクだろ。もしくはそれ系の」

「聖女の願いを現実にしただけパニ!」



 ………………アリシアが俺との子供を願ってたって事になる。



「いや、それはないだろ」



 冷静に考えてそれはない。

 あのアリシアだよ? 若い時の告白ならともかく普通ならクウガとくっつくはずだ。それを飛び越えての俺はない。




「パニ!?」

「で……何でそんな力もってるの?」



 バク。

 好きな夢を見る事が出来る妖怪、普通なら夢だけなのだがこれは現実にも影響があった。もしくは、俺が現実と思っていたやつが夢の可能性もあるが。




「絶対に言わないパニ! 魔女が魔石を入れてパワーアップしたなど言わないパニ!!」



 ユニコーンのぬいぐるみを持ったまま、俺は思わずしゃがむ。

 メルナが犯人じゃねーか!


 ってか、あれか。

 メルナも面倒になってこれ封印した説があるな。



「で、魔石はどこだ?」

「いいから、どこを触ってもいいパニ。でも角だけは触るなパニ」

「なるほど、角か」

「パニ!? まちゅ──」



 俺は最後まで聞く前に角を折る。

 ぬいぐるみだったのに角だけはやけに固いと思ったんだ。



 『羊亭』で目が覚める。

 体感5日目ぐらいなんだけど、全然疲れが取れない。

 2階から降りて、ヒナタさんに挨拶をすると短い挨拶が帰って来た。


 少なくとも悪役領主の世界ではないみたいだな。

 丘の上にいきアリシアの家をノックする。


 内側から扉が開くとアリシアがそこにいた。



「おっはよークロウ君……? どうしたの」



 どうしたもこうしたも、アリシアがお腹をさすってるからだ。



「申し訳ございませんでした!!」

「ど、どうしたの!?」

「え……お腹……」



 見た感じは大きくはないが、これから大きくなる!?



「あっ!! これ!? 恥ずかしい所見られちゃったね。ちょっと朝から食べ過ぎて……」

「あっ……そ、そうだよね。いやぁ今日もいい天気になりそうだ。所で食べすぎるほど嬉しい事であったわけ?」

「うん。凄い面白い夢を見たの! あっでも、クロウ君には内緒」

「俺も聞かないから大丈夫だ!」



 アリシアの家の中には角の折れたユニコーンのぬいぐるみが置いてあった。



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― 新着の感想 ―
また時間軸とか世界線移動してるのかと思った……なんだただの悪夢だったか
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