第35話 聖女の道を先回り
水着大会を終えた俺達は休養を取り未だフレンダの屋敷に世話になっている。
元々アリシアの居場所を探しに来たのであって、まずは会わないと仕方がない。実はそのあたりはフレンダと会った後にギルドに頼んである。
師匠のお掛けというか、ギルドマスターのカイがその変は助けてくれて割と安い料金で探してくれた。
フレンダには言っていないがフレンダを助けるために俺達が動いたのも関係してるだろう。
「クロー兄さんただいま!」
「帰ったのじゃ」
俺が応接室にいると、その結果を聞きに行った二人が帰ってくる。
「どうでした? 南のダンジョン? 東の野党退治、薬草集め。どの辺にいますかね?」
「スータンに来た形跡がなかったのじゃ」
「んな馬鹿な」
俺はちゃんとスータンに行くって聞いてこっちに来たのに。
「ドアホウのせいではあるまい、カイ経由で調べてもらったのじゃが、グラペンテ出発まではスータン行きに乗ったのを確認し他の事じゃ。大方引き返したって事もあるじゃろ」
「え、じゃぁ手詰まり」
困ったな。
アリシアは助けたいけどゼロから探すのは無理過ぎる。
一応シナリオ上クウガが行きそうな場所の候補は何個かあるんだけど不確定過ぎて。
「メル姉さん、アリシアさんって聖女になるんですか?」
「ん? そうじゃな、その素質はあるのじゃ」
「回復魔法の凄いからな」
「聖女って名乗るには勝手に名乗っては駄目なんですよね?」
ゲームでも聖女の祈りが無いとジョブチェンジ出来なかったはずだ。
「そうじゃのう、今の時代は『聖女の印』がいるはずじゃ」
「クロー兄さんじゃぁ先にその場所に行くとかはどうなんでしょう?」
さすがはノラだ。
「さすがノラ、師匠より頭がいい。師匠っ杖! 杖は不味いです!」
「ふんのじゃ」
師匠は無言で杖を出してはしまい込んだ。
まったくすーぐ暴力で支配しようとする、まぁそれも含めて俺も楽しんでいるから、いいといえばいいんだけど。
「で聖女の印の取り方はどうなんじゃ? 頭の悪いワラワにも教えてくれると嬉しいのじゃ」
「冗談ですって、聖女の印は聖女になるためには必要ですけど、聖女ってぶっちゃけならなくてもよくないですか」
ゲームでは上位職があるからといって別に上位職になる事もない。ヒーラーから聖女になった所で魔法や技が増えるだけ。
「まぁそうじゃの、聖女といっても」
「二人が否定的で何も進まないよ……ボクは二人の役に立ちたいと思って……」
ノラが凄い落ち込んだ。
これはまずい、空気が悪くなる。ノラを強くすると背負った以上なんとか明るく過ごしたい。
「ア、アリシアもきっと聖女になりたいと思っているのじゃ!」
「そうだよ。だからノラそんなに落ち込まないでくれ」
「そうは言うけどさ……」
「一応アリシア達……あのクウガが行きそうな場所は何か所か知ってはいるんですけど……」
イフに向かったのであれば、その後は『忘れられた森』『眠らずの馬』『ゴールダン前線基地』
『忘れられた森』は本当に何もない。近道と思って入った森、普段から人が入らない森で先ほどまでだれが住んでいたような小さい小屋がありクウガ達がそこに泊まる。
朝起きると無かったはずの道が出来て街を数個飛ばす。
出てくる敵が強くてどっちかっていうと周回プレイをした人向けと言うか。
『眠らずの馬』は寝ない馬がいるというので興味本位で見に行き、本当に寝ないのかを見守る。普通に昼に寝てた。
『ゴールタン前線基地』はその名の通りゴールタン前線基地、軍事施設であり闘技場があるゴールタンに行くのに通る。
別に怖い事は無くクウガが実力あれば歓迎される、実力がなければ入れないだけの場所。
「――――この3か所ぐらいですかね。聖女になるには聖都タルタンで聖女の印を貰うんですけど、どこからでもいけますし」
「クロー兄さん詳しすぎ……メル姉さんもそう思いますよね」
「ん? そうじゃの……まぁ気にしないほうがいいのじゃ」
不思議そうな顔でノラは俺を見るが、俺もどう説明していいか。
仮に俺が別世界からの記憶を持った転生者でーすって告白しても二人とも納得するか、頭が馬鹿とおもわれるだけだ。
「あっでも聖女の印は別に行ったらすぐもらえるわけじゃなくて、一応試練が」
「なんだがゲームみたいだね」
「…………ソウダネ」
ゲームだからね。と答えてあげたい。
でも俺も師匠もノラだってちゃんと生きてるからな。
「で、何どんな試験で何が必要なのじゃ?」
「いやぁ問題までは『竜のウロコ』と『古代ミレニアム金貨』後は『血』ですかね」
どれもこれも、中々に手に入れにくい。
血だけはアリシアの血でいいので楽なんだけど。
「古代ミレニアム金貨なのじゃ?」
「希少価値高いですからねぇ」
各町の地下下水道や今でも浮かぶ空中都市。マナワールドの基礎となった世界らしいが。実際は同じメーカーの別ゲームの設定とかなんとか。
各攻略サイトに、考察動画などあったが俺はそこまで調べてない。
で。古代ミレニアム金貨はこの世界でアンティークとして取引されており1枚の相場が金貨2000枚ぐらいの価値と同じぐらいである。
つまり、めちゃくちゃ高い。
「話は聞かせてもらいましたわ!!」
「…………フランさん、大事な話の途中と思います」
応接室の扉を開くフランシーヌと、その手を引っ張るフレンダが部屋を見渡してくる。
「あっおもらし令嬢」
「も、もらしてませんわ! このド変態!! このわたくしめをあんな羞恥におとしいれるとは、死刑ですわ死刑!」
俺だってあの日やばかったんだから! 美少女がもらしても絵になるが、俺みたいな好青年がもらしたらもう地獄絵図なんだからな!
「へぇ……で。俺を死刑にしに来たわけ? そもそもそのお嬢様がなんでここにってか何時から」
「貴方が『ここが師匠の座った席! ふんふんふんと匂いを嗅いでいる時からですわ」
「ばっ!」
俺はそんな事してな……あっしてた。師匠達が帰ってくる前じゃん。
「ドアホウ……」
「クロー兄さん……うわぁ……」
「ち、違うからね。ぬくもりを感じていただけで。ほらそれよりも! なんでフランシーヌがここにいるの」
俺が話かえようと俺がフランシーヌに言うとフランシーヌが下を向いた。
「…………ましたわ」
「え?」
「…………追放されてしまいましたわ! ちょっと貴族の力を使っただけなのにお父様っていったらあんなに怒るとは!」
「フランさんは、こういってますけど。フレンダの家にお泊り会です」
「フレンダさんあなた! 口が軽いですわよ! こうですわ!」
「フランさん、あっそこはぱっぱっぱっぱっぱっぱぱぱっぱ」
フランシーヌがフレンダのワキ攻撃をするとフレンダが奇妙な笑いを出す。
「で、結局何用なのじゃ? フランシーヌという小娘じゃ?」
「……貴方が三角帽子の魔法使いですわね。そ、その今回はフレンダを助けていただき感謝しますわ。これを差し上げますわ!」
フランシーヌは近くにいたノラに何をか渡し、ノラはそれを師匠に渡す。
「ほう。ミレニアム金貨じゃの」
「ええええええ!!」
「そこのド変態。驚き過ぎですわよ、まぁ庶民からしたらミレニアム金貨なんて見た事ないかもしれませんけど、おっほっほっほっほ」
「いや、でもよく許可したな。だって金貨2000枚だよ」
「許可? 誰にです」
ん?
「黙ってもって来た?」
「当然ですわ。フリク家の物をわたくしがどう使おうか問題ないですわ」
いや、あるでしょ。
俺やスゴウベルだって自由に金は使えないよ? 他の貴族の子は全部こうなのかな。




