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負け悪役貴族に転生した俺は推しキャラである師匠を攻略したい  作者: えん@雑記


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第345話 こんな世界は嫌だ

 そもそも俺はやってない!

 これは声を大にして言えるし、嬉しそうなアリシアにも……言えるのか?


 まずは情報収集だ。

 過去に俺が死んだ並行世界に飛んだ事がある、まぁあっちが正史なんだろうけど。


 過去に似たような体験をした俺はいたって冷静。

 そうアリシアのお腹に俺の子がいようとも冷静だ! 冷静だよ!?



「すぅーはぁーすぅーはぁー……あっ!」

「何かな? とりあえず家に入ろう?」



 アリシアに言われるままに家に入る。

 俺の記憶と違って、歯ブラシやマグカップ、食器などがカップル様になってるのが特徴的だ。


 カップにはアリシアと俺の名前が書いてある。夢じゃないか。




「ええっと……師匠。いや先生は?」

「先生……? ヒナタ先生の事?」

「違くて……メル、メルギナス……の事」

「うーん……クロウ君が浮気するのは良いんだけど、私以外の女性の名前だすのは複雑だな。後聞いた事が無いかも、本当に誰?」

「ごめん」

「もう、すぐに謝るのはクロウ君の悪い癖だね。まずは長旅お疲れ様、気分の良くなるお茶を出すね」




 アリシアはお茶の葉を探しながら尻を振ってる。

 振ってるわけじゃなくて無意識なんだろうけど、俺の知ってるアリシアよりも丸みがあるというか。



 正直にいうと可愛い。



 俺がメルナと出来てなかったら『もうこれでいいや』に間違いなくなる。 

 しかし師匠の存在も知らないかぁ。

 

 ってか俺も言うほどアリシアの事詳しくないしな。

 貴族の血を引いて駆け落ちした夫婦の子供ぐらいしか。

 何がどうなって、俺と結婚して妊娠してるんだ? ってかこの世界の俺の記憶はどこに行った。もしくはもう1人この世界の記憶をもった俺がいるのか?



「ちょっとここに来る途中に頭打ったらしくて……記憶が混乱してるんだ」

「ええええええ!!」



 アリシアがカップを落とす。

 カップが割れ音をたてた。



「おっと、俺がやるから……」



 アリシアの足元のカップを拾うと、とてもいい匂いがする。

 あれ。俺の知ってるアリシアよりも胸もでかいな。

 


 じゃなくて!



「記憶が混乱していてもクロウ君はクロウ君なんだね。フユーンの町でのお祭りで馬に乗ったクロウ君が私をひょいっと抱き上げて結婚してくれって」

「凄いな俺」

「うん。凄かったよ!」




 で。地位も捨ててここにいるわけだ。

 うわぁキラキラな目で俺を見ると罪悪感が思いっきり来る。



「アリシア、ダメだ正直に話す。真面目な話なんだけど聞いてくれ」

「何かな?」



 アリシアは俺の前に座りなおす。



「……………………」

「何かな?」



 アリシアは俺が喋りだすのを待っている状態だ。



「クロウ君?」

「………………」

「おーい。クロウ君ー」

「まって整理するから」



 俺がこの世界のクロウベルではない事。

 俺の知ってる世界ではない事をアリシアに話す事にした。


 別に嘘を言ってもいいんだけど、アリシアには嘘をつきたくない。というか……せめて俺が知ってる事を正直に話したほうがいい気がしたから。


 全部話し終わるまでアリシアは黙って聞いてくれる。



「……変と思っていたんだよね。前のクロウ君なら会った瞬間に押し倒してくるし。それがなかったんだもん」

「俺ってそうなの!?」

「そうだよ。でも別世界のクロウ君かぁ……体はこの世界のクロウ君なんだよね。心が間借りしちゃってるのかな?」



 さすがアリシアだ。



「ってか俺の言う事を信じるの? 多分アリシアの言う通りと思うんだ」

「うん。クロウ君変な事は言うけど嘘は言わないし……《《今のクロウ君の精神が消えたら前のクロウ君が出てくると思うの、早く消えてね》》」



 っ!?

 思ったよりも毒舌だ。

 よかった。勢いに任せて襲わなくて、襲った後に中身別人です。って話したら何されるかわからん。



「善処します」



 お茶を飲んでる間もアリシアは俺を見つめてくる。



「もう前のクロウ君に戻った?」

「い、いや……」

「早くしてね」

「うい」

「返事は、はいのほうがいいよ」

「は、はい」



 あの。怖いです。

 さっきまで聖母のようだ。って思っていただけに怖いです。



「あ、あの」

「何かな? 偽クロウ君」



 本物なんだけど、偽物に降格した。

 がんばれ俺! 泣きそう。



「ちょっと『羊亭』に戻って寝てきます。もしかしたらそれだったのかなぁって」

「ふーん」



 ふーん。って。



「偽クロウ君、私は怒ってはいないよ」

「本当に?」

「本当だよ? だからできる事があれば早くしてね」

「はいっ!」



 急いで家を出てファーストの町まで走る。

 全力で走り『羊亭』に飛び込むと、年を取った……いやこれが標準かヒナタさんが不思議そうな顔で俺を見る。



「もう1泊」

「それはいいけど……あんたあの子と喧嘩……」

「してない! してないけど緊急事態」



 2階にあがり寝室に鍵をかける。

 まだ間に合うはずだ。

 こういうイベントってのは失敗したら成功するまで繰り返しできたり……で来てくれ!


 無理やり目をつぶる。

 眠くないはずなのに睡魔が来ると俺は真っ暗な場所に立っていた。


 目の前には古びた孤児院。



「戻ってこれた……」

「おじさんなにしてるの?」

「おじさんじゃなくてお兄さんな…………てか。ちびアリシア。俺の事が見えるのか!?」



 ちびアリシアは俺を見て頷く。

 すぐに小生意気そうなちびクウガがアリシアを呼びに来た。



「あっ馬鹿! 連れてくな!!」


 ちびクウガのほうは声は聞こえないのか、ちびアリシアを連れて消えていった。

 慌てて後を追って次の回想シーンへ行く。


 食事イベントが始まった。

 表情の少ないちびアリシアに対してちびクウガがちょっかいをかける。


 …………長い。


 食事シーンが終わると今いた人間が消えていく。

 次のシーンは廊下で遊ぶ2人……うん。さっきみた。


 その後もながーい回想シーンを経て海のシーンへと来た。


 その途中でなんとクウガ溺れた。

 それを黙ってみてるアリシア。



「あっここだ……」



 周りの大人は全然クウガを見ていない。

 大きく息を吸う。



「アリシアアアアアアアアアアアア!!」



 俺が叫ぶと水辺にいたちびアリシアだけがビクっと体がはねた。

 こっちを見るちびアリシアに「クウガが溺れてる!!」と、叫ぶとアリシアの行動は早かった。


 若いヒナタさんの手を引っ張るとちびクウガを指さす。びっくりした若いヒナタさんは水辺の飛び込むと溺れてるちびクウガの手を握った。

 暴れるちびクウガ。



 これでクウガ生存ルートが出来た。


 でもさぁ……クウガをここで助けるじゃん。クウガとアリシアが夫婦なのは百歩譲ってわからんでもないけど、その場合俺ってどうなってるんだ?


 Aの世界。俺とアリシアが友人で孤児院を復興。

 Bの世界。俺とアリシアが夫婦で子供予定でクウガ死んでる。


 これってクウガだけを生き返らせてもだめな……いや、今は深く考えないでイベントを終わらせよう。


 次のシーンを見るとほら、誰も棺を持っていない。



 俺の意識がはっきりすると『羊亭』に戻って来た。

 階段を駆け足で降りて一先ずアリシアの家へと向かう。


 家の前には誰もいない。


 すぅーはぁー深呼吸をしてノックをした。



「どうぞ?」



 聞き覚えのある男の声。

 クウガだ! よし!! クウガは生きていた。



「よう。クウガ!! 元気だったか」

「その声はクロウ……やっぱりクロウだ。待っていたよ。この僕の思い受け止めてくれたんだね」

「はい?」



 クウガが俺の手を引っ張るとベッドに押し倒して来た。

 顔が近い。

 ってか顔を近づけながら上半身のボタンを脱いでいく。


 クウガの鼻息が荒く肌の露出も増えていく。


 俺はクウガの腹に膝蹴りを入れた。

 うっ! とうめくクウガから逃げ壁に背中を付ける。



「あっぶねぇ……クウガ。アリシアはどうした!!」

「アリ……シア……? そういえば昔孤児院に可愛い女の子が同じ名前だったような。でも事故で……それよりも僕が本当に好きだったのはクロウ。何時ものように愛し合おう!」



 全身から鳥肌が立つ。

 冗談じゃない!


 家から飛び出すと俺は『羊亭』に駆け込む。年取ったひなたさんが俺を見ていたが気にせず2階にいき部屋の鍵をかける。

 毛布にくるまって必死に眼を閉じた。


 こんな世界は嫌だ。

 こんな世界は嫌だ。



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