第327話 神選組 沖田さんは可愛い女性です
俺もメルナも放浪癖というか、さらに性格はさっぱり系だ。
だからこそ好きになったのも理由の一つである。
ぶっちゃけゲームで知ってるアリシアなどとは全然違う。
この世界のアリシアは違うけど、ゲーム内のアリシアは表面上は平気な顔していても心の奥に嫉妬がドロドロたまって、たまにクウガが理不尽に刺されたりしていたからな。
あくまでゲームの中であって、実際のアリシアは違うけど。
とにかく、そんな好きなメルナが屋敷から動かないので俺も屋敷に滞在してる。
俺が薬を買いに行ってメルナが調合し、ムラマサ達に渡して飲ませる。多分だけど治るまでここにいるのかな?
ミーティアは冒険者ギルドに行っては監督官として経験を積んでる。
性格は早とちりで馬鹿だけど、他の冒険者に人気があって順番待ちらしい。若いし活発だし、無自覚エロだしな。
性格は馬鹿だけど。
そんな感じなので何日かメルナに言われて後を付けたけど、下心ある冒険者は返り討ちにしていた。
クウガの影になってるけど、ミーティアも強いからな。
俺は特にする事もないので、毎日飯屋を周り宅配を頼んでは仮住まいの自宅に戻る。
だって誰も料理しないから。
さらに言うとこの家の台所、かまどだし……。
俺だって米は炊ける。
なんだったらこの国に来て米食べた時ちょっと泣いたもん。
でもかまどはだめだ。
1人用でキャンプ飯でよければいいんだけど、あんな大きなのは論外。
だったら買うほうがいい。
仮住まいの自宅に戻ると次の工程に移る。
メルナが脱ぎ散らかした衣服を洗濯したり、メルナが夜食に食べた茶碗を片付けたり、メルナが破いた障子をはりかえた……いやメルナさん自堕落すぎない?
そりゃ薬を作るのは凄いけど、本当に1人で生きていけるのこの人。
指摘しなかったら風呂も全然入らないしな。
「…………廊下で茶飲んでいる所悪いが今日の薬が出来たのじゃ、離れにいる2人に。ワラワはもう寝る」
「うい」
廊下で薬を待っていた俺は師匠から薬を受け取りメルナを顔を見る。
「ひどく疲れてません?」
「…………じゃろうな」
「自覚あるんだったら休まないと」
「長くなればなるほど、ムラマサの足は悪くなるのじゃ」
「面倒見がいいっすね」
メルナが珍しく優しい。
「相手は子供だからか、子供っていいなぁ」
「心の声が漏れてるのじゃ。耳を貸せ」
メルナが手招きするので俺は耳を近づける。
「ぶっちゃけ、ワラワが目を離したすきに毒を盛られたのじゃ。多少は責任も」
「それは死んだら後味わるいっすね」
「だからロウ。内緒にしとくのじゃ」
静かにうなずくと廊下を歩く。
何を遠慮してるのかユキとムラマサは離れに住んでいて小屋の扉を軽くノックする。
「だれだっべ!」
扉が開くと、小さい子バージョンのユキが俺を見上げて来た。
大事なおっぱい要員が子供姿とはサービスが足りない。
いや、俺個人は師匠さえいればいいよ。
でも、別に他のお色気が嫌いではないって話。
「子供スタイルか……これ今日の分の薬。ムラマサは?」
「あの子は、おめえさんが持って来た物の値段を調べてるのじゃ」
「何のために?」
「知らねえべ」
入るぞ。といって靴を脱いで部屋に上がる。
車椅子にのったムラマサが筆と紙で色々数字を書いていた。
「よう、何してるの?」
「む! クロウベルか! この度は世話をかけるの!! 余は将軍じゃなくなったので何をすればいいかわからない。こうやって何か勉強を」
「…………ユキと一緒になるんだろ?」
「当り前だ! ユキとは散々話し合った。足が治ったら2人で海を越えようと思ってる」
じゃぁ勉強する事ないじゃん。
「別にユキに食わせてもらえばよくない?」
「将軍は辞めたが余は男だ! ユキに頼ってはだめになる」
「そういうもんかね? 俺はメルナにおんぶされるけど」
「クロウベル、それは男としてどうなのだ?」
どうって。
まぁ現代でいう紐。
でも、俺の稼ぎで師匠も飯食う時あるしお互い様かな?
「むらまさっさー難しく考える事ねえっべ。昼も夜も世話するべさ」
「だってさ、良かったなムラマサ」
「余を馬鹿にしてるのか?」
ユキは「怒るでねえべさ」とムラサマの手を握ると、ムラマサはまんざらでもないような顔になる。
これ以上俺がここにいても邪魔になるだろうから飯の時間だけ伝えて離れを後にした。
絶賛紐の俺は暇になる。
メルネは寝てしまったし、そう何度も部屋に行く事もない。
ミーティアは仕事だし、飯の手配もした。
門番係をしている人斬り五右衛門は腰痛でこの時間は針治療にいってるはずだ。
魔法や薬を進めたが針のほうがいいとかなんとか。
気持ちはわかる。
魔法って便利なんだけど……ちょっと胡散臭いからな。
針のほうが体に刺さってる分聞いてる気がする。
東方は魔法よりも気の力を重視するし。
「暇だ」
縁側に座ってぼーっとする。
「英雄メルギナス様のご自宅はここで会っているかな?」
もう一度言うと、俺は縁側に座ってぼーっとしている。
知ってる?
この家の縁側って外にある塀を超えないと入ってこれないんだよ?
つまりは庭付きの家。
門番は今いないとはいえ勝手に入る?
綺麗な声で髪は長髪にして後ろに縛っている。
刀は二本差しでまだら模様の男性用の羽織を着ている…………女性だ。
「違うよ」
「そ、そうか……知り合いにここにいると聞いたのだが。某、英雄メルギナス様がどこにいるか知らないかな?」
「知らない」
「ふむ、困ったな」
すごいな、この子。
俺が嘘を言ってるのに全く帰ろうとしない。
普通なら違うって言われた帰るよ。
「自己紹介が遅れた。私は神選組一番隊隊長沖田翔子」
「すぐ帰る人の名前を聞いても……」
「何を言う、これから君と英雄メルギナス様を探すんだ。名前ぐらい名乗るさ」
すげえ、話まったく聞いてない。
侍ってこんなのばっかりなの!?
しかもだ。
神選組ってあれよね。
1番隊から13番隊まである日本の男の子なら大好きな歴史上人物。
のゲーム版。
ほら著作権とかで名前使えないから……。
俺が知ってるのはモブだったんだけどな。
街中で『この街を守るのは我ら神選組だ!』っていうキャラがいた。
「お断わります」
「断るなんて、某は私に選ばれたんだ、さぁいこう」
「いかないって!」
「私はわかるんだ。某は強いのだろ?」
俺の目の前に刀が迫って来た。
避けないと死ぬなこれ。
あっいや、再生がある分死ぬわけじゃないんだろうけど……大騒ぎされても困る。
後痛いのは嫌。
初手、二手、三手と突きをかわした。
ぶっちゃけ三段突きって知らないと危ない攻撃だ。
「弱いよ?」
「ほら私の三段付きをかわした。私にはわかるんだ某は強い、じゃぁ英雄メルギナス様を探しに行こう」
さすがにここまで話聞かないと逆に面白い。
どうせ暇だし。
「ちょっと知り合いに声をかけてくるので待っていてくれ」
「わかった! ここにいる」
面白いのでメルナに一応聞いておくか。




