第33話 やっぱ正攻法が一番ですよ、その1
大会当日。
俺たちは会場となる浜辺に来ている、参加者待合室。
もうそこは女の楽園。
水着を着た少女達が10人ほど緊張したり雑談したりと、俺の兄スゴウベルが子の光景を見れば喜ぶだろうなぁ。と思うぐらい。
俺が思うのは師匠の水着がみたかったなぁ。と思うぐらいだ。
女装した俺が一緒の部屋でいいのか? とおもったが特に何も言われずに同じ部屋に通された。
「クウ姉さん……絶対に喋ったらだめだからね」
「おっ……」
黄色い色の上下別れた水着を着たノラに注意をされる。
外見は女性でも声までは中々。
この水着大会。
1回戦は外見。
2回戦は特技。
3回戦で投票。
ノラが調べてくれ1回戦で半分ほど落される。
2回戦の特技が重要で歌ったりダンスをしたり自分の得意な事をひろう。
俺はその2回戦で剣を使った動きをして、点数を稼げ。とのこと。
当初の色物大作戦は一度見送りになった、俺があまりにも似合っているから仕方がない。
とにかくインパクトを稼ぐのじゃ! と言われたけど勝てるのかねぇ……。
師匠から人数は多いほうがいいじゃろ、とフレンダも参加する予定であったが、なぜか普段よりも締め切りが4日も早くなり出れなかった、今頃は浜辺で師匠と2人で俺達を応援している。と、思う。
そんな事を考えていると部屋がノックされた。
ケーキや飲み物を持った男がテーブルに『ご自由にどうぞ』と言っては置いていく。
なるほど、緊張をやわらげるための料理だろう、女性受けが良さそうな可愛いケーキだ。
参加者の一人が、表通りのなんちゃらの店のケーキだ。など言うとあっという間にケーキの数が少なくなっていく。
飲み物のほうも、小さい小瓶に入っておりダイエットなんちゃらなど、聞こえた瞬間に殺到する。
「クウ姉さんまっててね」
ノラはそういうと、女性達の隙間をぬってケーキ&小瓶ドリングを2セットもって来た。
「はい、どうぞ。返事はいいからね」
「ん」
俺はケーキを食べる、チョコクリーム系のケーキで久々に甘い物を食べた気がする、ビンのフタをあけると形は違うがラムネを思い出す。飲んでみると少し甘めの水でいくらでも入りそうだ。
これで痩せるというのなら女性には大人気だろうな。
ノラも「じゃぁボクも頂くね」と口にしようとすると扉が大きく開かれた。
「オーッホッホッホっ食べましたわね庶民共」
ええっと……俺達に因縁をつけたフランシーヌお嬢様だっけかな。
赤ベースの水着を着ており、あれだけ師匠に文句を言っていたのに子供体系である。まぁ子供だから仕方がないか。
「美味しかった……うぐっ」
「あら、男性の声が聞こえたかと思いましたかまさかですわね」
俺がお礼を言うとノラに横腹を叩かれた。
だって普通お礼いうじゃん。
「フランシーヌさんだよね! 先日はごめんね。フランシーヌさんも食べる?」
ノラは自分の分を差し出そうとしている、なんて偉いんだ。
「水着売り場で騒いでいた人でしたわね、本当に女の子なんですの……要りませんことですわ。そうそう……気をつけたほうがいいですわね。南通りのヒューレン菓子店。同じく南通りのキューで出ているダイエット飲料。どちらも今朝作ったやつに強力な下剤が仕込まれましたの」
辺りの空気がざわっとした。
「なっ!?」
「なんでも数滴で5キロは痩せるという下剤らしいですわね、まぁ皆様太っていらっしゃるのですし丁度いい。と思いますが、勝負は正々堂々としたいですわね。わたくし達の家フリク家の力で犯人は捕まえましたけど……皆様まさか食べたのですか?」
なっ!
にっこりと笑うフランシーヌ。
俺は慌ててノラを見るとノラの顔が蒼白だ。
「ご、ごめんクローにい……食べないで!」
「もう遅い……」
あちこちから悲鳴と怒声、腹のぎゅるぎゅる音が聞こえてくる。
「おかしいですわね皆様。これから会場ですわよ? どこにいくんでしょうですわ」
誰がどうみても犯人はお前じゃー! と突っ込みたいが女性達は恨みがましい目でみるだけだ。
「あら、わたくしを見ても犯人を捕まえただけですわ。それとも……フリク家がかかわっていると思っていますの? 庶民の皆様」
貴族の力と言うか、それを言われると睨んでいた女性達が顔を背け始めた。
それ所が時間たつにつれてぎゅるぎゅると音が大きくなる。
俺も腹が痛くなってきた。
「まぁフリク家は慈悲深いですから……そうですわね。野外にトイレを増設しておきましたわ。同じ女性として別にもらす所を見たいわけじゃないですし」
わーい、アフターケアーもばっちりだ!
って違うわ! 思わず、そこまでする? って思ったがそこまでするらしい。
1人の女性が「棄権します……」というとどんどん棄権していった。
「クウにい、クウ姉さん棄権したほうがいいよ」
「で、でもノラ」
「貴方はたべなかったんですの? 運がいいですわね」
「もう少し遅かったら食べたかもね……」
フランシーヌは「来るのが早かったですわね」と小さく喋る。
何て野郎だ。
いやなんて女だ!
「ふふ、幸運な方ですわね。しかしその幸運もここまでですわ」
「ど、どうちで……」
先ほどからぎゅるぎゅるとお尻にギュッと力をいれる。
「それはもう審査員は、このフランシーヌを応援する人ばかりですので……もっとも観客までは動員できませんでしたけど、貴方とわたくしなら結果をみるまでもありませんわ、わたくしのほうがプロモーションが素敵ですわ」
思わずノラとフランシーヌを見比べる。
確かにノラよりは出る所はでているが寸胴鍋というか魅力がない。
「フランシーヌさん、それは卑怯じゃないかな?」
「卑怯もなにも、差し入れを食べたのはあなた達であって審査員だって偶然の産物ですわ、せっかく教えてあげたのですし感謝されたいぐらいですわね」
そこまでする? と2回目の感想だ。
まぁ貴族ならするか、フユーンの街でもスタン家以外の貴族がよく特権を使い暴れていたし。
「入場の準備ができま……あれ、3人しかいませんね」
係の人間が出場者を呼びに来た。
さっきまでは沢山いたけどね。
「とりあえず、3人ともステージの方にお願いします」
俺は椅子から立ち上が…………あ、だめだこれ。
「まぁ大変! 大変ですわ! そこの係の人、この方を外に連れて行くのです」
フランシーヌが俺の側にくると、ぎゅるぎゅるなっている腹を力強くさすって来た。
「ここが痛いんですの!? それともこっちですか!? えい!」
「のおおおおおお!?」
「嫌ですわね、男みたいな野太い声を出して」
「フランシーヌさん! 辞めて!」
ノラがフランシーヌの手をパシンっと叩いた。
「痛っ! なんです! このフランシーヌの手を叩くとか。言いつけますよ!」
「ノ、ノラ……」
「クロー姉さん。敵はうつよ」
「す、すまん」
ノラはあまりできない事はいわない。結果的に出来なかった時はあるけど……そんなノラが敵をうつ。
それだけで俺は安心して、お尻から色々と出そうになる。
「お、おれ……いやわたしも棄権します……」
よろよろと内股であるき係員の後について行く、外には簡易トイレボックスが沢山並んでいて俺はその個室に入って扉を閉めた。
「ぜってたい復讐してやる……」




