第326話 体だけの関係性?
「今後は将軍マサムネを軸とし、内政は家老衆が引き受ける!」
人斬り五右衛門が書状を大きな声で読み10人の家老がその書状を受け取った。
小さい将軍に大の大人が数十人平伏すると、将軍マサムネなぜか一緒に平伏した。
その様子を物陰から見ていた俺はそっとその場を後にする。
ここ数日寝泊まりしてる部屋に戻るとメルナに報告だ。
「と、言うわけでメルナの言う通りに収まりそうです」
「ん。まぁこんなもんじゃろ……奇跡的に死者は少ない」
「ですね」
死者はまぁ無い。とは言えない。
首謀者の事は除いてもなんだかんだと血なまぐさい結果になった。
まぁ俺としてはメルナやミーティア。あとおっぱい要因の妖怪ユキなどに危害が無ければそれでよし。
侍の1人や2人。
侍っていう職業なんだし命の危険ぐらいある。
「後はミーティアの帰りをもって……どうするです?」
「…………そもそも何しに来たのじゃ?」
ひどい。
これでもメルナの事が心配で心配で、師匠Bからメルナの魔力が無いって言うから急いで来たのにさ。
「メルナのおっぱいを見に」
「…………ロウ。考えてる事と本音が逆なのじゃ」
「うおっと」
俺は師匠の後ろに回り込む。
とりあえず肩を揉んでみた、メルナの吐息が小さく漏れた。
あれ。
いけそう?
「まぁ実際心配で、何してたんです」
「はぁ、あの馬鹿女……確かにワラワとワラワの姿形が同じ馬鹿女は数日に渡り戦ったのじゃ。魔力が切れて吹き飛ばれたのも事実。じゃが丁度この城にいた元将軍が襲われている所に出くわしての、そのまま客人としてここにいたのじゃ。ある程度魔力も戻りかけて来たしの……いつ帰ろうかと思っていた所にお主が飛んできたのじゃ」
そうなのか。
「それにしても、あの馬鹿女はよく素直に帰ったのじゃ……力づくでもロウを連れていく気満々じゃったのに……ロウが気が変わって向こうの世界に行くならそれも仕方が無し。とこっちに長くいたのじゃがな」
「ダイジョウブデシタ」
「喋り方が変じゃが?」
「そんな事ない! 無いから」
師匠Bと色々あった。とかバレたくはない。
世間一般では浮気になるのかもしれないが、並行世界でも同じ人だし浮気じゃない! と、俺は声に出して言いたい。
だが。
声にだすと、メルナに殺されそうだから黙るのだ。
「……そう! 血を沢山抜かれました」
「ほう。と言う事は魔道人造の研究を進めていたのじゃ」
「また物騒な名前で」
「人工の人間じゃよ。ワラワも研究していたのじゃが、血の提供先が困っての、いや血じゃなくてもいいのじゃが……」
実際搾り取られたのは俺の体液でしたね。
「その実験って成功したんです?」
「いや失敗じゃ。ナイの血を入れてみたのじゃが、会話不能なうえに山が消しとんたのじゃ……討伐するのに3年かかったのじゃ」
「ダメじゃん」
「ダメなのじゃ」
メルナが腕をまっすぐ前に出したので、今度は腕を揉む。
柔らかくて素晴らしい。
この世界魔力と言うチート能力性で筋肉が無くても重いものを持ったりできるので、メルナの腕は柔らかかったりする。
にの腕って確かおっぱいと同じ柔らかさとか。
俺はいっぱい揉む。
メルナは足を俺に突き出してくる。
ふむ。
これはもうOKって意味だよな。
足首から上にもみ始めると、突然襖が開いた。
「たっだいまああ! ミーティアちゃん華麗に参上」
俺はメルナの足で壁まで蹴飛ばされる。
足を組みなおしたメルナが何事もなかったように立ち上がるとミーティアに話しかける。
「早かったのじゃ」
「急いで帰って来たもん。メルさん見てみて、これギルドの証明書! って変態ちゃん頭から壁に倒れているけどどうしたの?」
「…………何でもない」
立ち上がりメルナが俺に紙を手渡して来た、覗き込んでみると監督評価Cとの文字が書いてる。
「AやSじゃないのか……」
「初めてなのにCもらえるのがすごいんだけどー!? そういうなら変態ちゃんもやればいいしー大変なんだよ? こっちは手を出したら減点になるし、危ない時だけ手を貸すの!」
それは面倒だ。
黙ってみすぎると全滅するだろうしな。
「あと数回同じような依頼じゃな。ロウ、面倒を見てやるのじゃ」
「うい」
「ほえ?」
ミーティアが間抜けな声をだしてメルナを見る。
次に俺の顔も見て来た。
「やるじゃん変態ちゃん!! メルさんから名前で呼んでもらって!! ミーティアちゃんの助言が役に立ったかな?」
「全然、逆に関係が壊れそうだったわ」
「おかしいな……アリ姉ちゃんは『クロウ君はもうそろそろ先生の事を名前で呼ぶべきよね』って」
受け売りかよ。
しかも、アリシアも恋愛マスターではない。
並行世界ではクウガとアリシアのカップルなのになぁ。なんでこっちではカップルなってないんだろ。
そういえば、一度「冒険者ギルドで彼氏募集の依頼だす?」って冗談で聞いた事あるけど、無言で微笑んできて終わったっけ。
「ロウ。これをもってギルドにいって適当な空き家を探してくるのじゃ」
袋を手渡してくれて中身は小判が沢山入ってる。
「移るんです?」
「客人じゃしな、家主が変わるんじゃ当たり前じゃろ」
俺は小判を数枚抜き取るとそのままミーティアに手渡す。
「じゃぁミーティア。ギルドに行ってこれで適当な空き家を」
「なんでミーティアちゃんが!?」
「ロウ……ドアホウに格下げなのじゃ?」
「冗談ですって、知りません? ヒノクニに伝わる中抜きシステム」
「知りたくもないのじゃ。別に長期に住むわけじゃないし部屋は3部屋、トイレと風呂は別ぐらいで探してくれなのじゃ」
仕方がない。
自分で行くか。
──
────
城下町の外れのほう、元商家の家を購入した。
なんと8DK。
別にいわく付きでもないし、ギルドにいってミーティアが一緒についていったら安く買えただけ。
今住んでいるのは俺と師匠とミーティア。
後はなぜかムラマサとユキ。家老を辞めて来た人斬り五右衛門も一緒に住んでる。
……いや、本当になんで!?
これじゃ俺はメルナとイチャイチャが出来にくい。
出来ないんじゃなくて出来にくいのだ!
夜も更けてくると、珍しくキセルをくわえたメルナが口から煙を出す。
「ロウ」
「なんです?」
「こう毎晩部屋に来るのは……まぁ百歩譲っていいじゃろう」
いいんだ。
《《半裸》》のメルナはなぜか不満顔だ。
「ロウとワラワの関係ってなんじゃ?」
「師と弟子…………ではないか。もう師匠って呼んでないし……え、じゃぁ」
恋人ですよね!!
「恋人でもないしのう」
「無いの!?」
「無いじゃろ、なし崩しでこんな関係になっておるのじゃが……」
「じゃぁ体だけの関係ですかね?」
それはそれでいいのか?
俺個人としては恋人と思っていたんだけど。
「じゃぁ恋人になりません?」
「ロウと?」
「あの、滅茶苦茶嫌そうな顔されるとショックなんですけど」
「ああ、すまんのじゃ。どうもすぐに死ぬ人間に告白されたのを思い出しての、あれだけ好きと言いながら10年もたつさっさと別な人間と子供まで作って。そういうのが多くて恋人は作らない主義なんじゃ」
もしかして人造人間作りも寂しさを埋めるのにだったりするのか。
「じゃぁ10年一緒にいましょう。10年一緒にいて俺が普通の人間みたいに年取ったら消えますんで」
「じゃったら今直ぐに消えてもらったほうがさっぱりするのじゃ」
あーうん。
メルナならそういうと思ったよ。
「消えませんけどね?」




