第316話 主人の命令により親衛隊隊長標的を捕まえる
ミーティアにたっぷりピーマントを入れた野菜炒めを食べさせた後、俺も風呂に入り汗を流す。
さっぱりした俺はそのまま寝室に入ると当然に誰もいない。
だってミーティアとは別室だ。
野宿や迷宮ならしょうがないけど建物の中でまで一緒の部屋で寝る事もないし仮にも女の子だしな。
アリシアは何考えてるかわからんけど、こういうのは普通女性冒険者に頼む事なのに……俺を信頼してくれいるのはいいけど、少し複雑でもある。
もしかして俺は師匠にしか興味ない男と思われているんだろうか……実際そうなんだけど、頑張れば他の女性でも興奮できるよ? しないだけで。
冷静になるとアリシアに色々言いたくなるが、さっさと師匠と合流して師匠に丸投げしよう。
「なんだかんだ言って先生って呼ばれるし、師匠は面倒見いいからな。教えるのも俺以外にはしっかり教えるし……ってか俺の時だけ酷い教え方だ。いいけどさーそれを特別だって思うから……あー」
寝る前にちょっとだけ起き上がった。
「何か違和感あるんだよなこの屋敷。地下の様子でも見てみるか……転移の門壊れていた。とかあったら困るし」
独り言を言いつつ廊下から地下への扉へ。
メモによるとこの地下にある転移の門で火の国にいけるとか、ヒノ国。火とも日ともとれるし。まぁゲーム内の日本みたいな所。
『忍術の巻物』というアイテムがあり、それをもって冒険者ギルドに行くと忍者にジョブチェンジできる。
盗賊、義賊、怪盗などの称号が無いとだめだけど。
ノラを強くさせる事が出来るアイテムであるが、お土産に持っていくか。
後は珍しいと言えばフジノヤマ。
雪スライムとかレア敵が出るぐらい。雪スライムの結晶は高く売れる。
そんな場所で師匠は何をしてるのか、まぁ帰ってこれないから手紙なんだろうけど……先に帰った師匠B曰く『男でもできたんじゃろ』って、それはない。
師匠攻略に数年かけた俺が言うんだから…………ない! あってほしくない!!
「いやまてよ。NTR物も興奮しないわけじゃない……本当に師匠が俺以外の男好きなら見守るけどさー」
地下の階段は手すり付き。
老後も安心設計……安心設計なんだけど、何だろうこの感じ。
照明も自動でつくし……足音を立てないように降りると、もう一つ大きな扉がある。
開けると言葉を失った。
大きな棺置いてある。
1階で大きな物音がし、俺は階段を走った。
玄関ホールでは、薄着のミーティアが赤竜の篭手を付けてバンバン炎を出しながら戦っていた。
「ミーティア!!」
「あ、変態ちゃん!! 大変! ミーティアちゃんのファンが沢山」
濁った眼をした人間のような奴が集団でミーティアを襲っている。
見た限り『ゾンビ系の何かです』
「本当にありがとうございました!!」
「変態ちゃん!? 突然何!?」
「俺も勢いで喋っただけだし、気にするなって数が多い!!」
あーサブマシンガンが欲しい。
もしくは無限ロケットランチャー。
そんな事を思いつつ、水槍で吹き飛ばす。
ミーティアのほうも襲ってきた奴の腕を強引ひっぱり壁へと打ち付けた。
ミーティアは壁を背に戦っていてさすがに場慣れしてる。
俺が助けることもなく敵を全滅させた。
「はぁはぁ……もう、寝ようと思ったら扉が壊されてミーティアちゃんが可愛いからって変態ちゃんが告白しに来たと思ったよ」
「それはない」
「即答されると傷つくのに!」
「じゃぁ次回から5分ぐらい考えてからいうよ。怪我は?」
ミーティアは仁王立ちからピースサインを出すと怪我はないのをアピールする。
水槍で串刺しにしたと言うのに魔物はまだ動いている。
アンジュの剣で動いてるやつの足を斬ってもまだうごめいている。
ゾンビかと思ったら口元が光っていて牙が見えた。
「うげ……これゾンビちゃんってやつ?」
「どちらかと言うと……」
俺が正解を言おうとすると、2階から階段を下りてくる音が聞こえた。銀髪で長身の男、顔はイケメンの部類に入るだろう。
「はっはっはっは我こそは真祖のヴァンパイア、ドラキュ様である」
「自称だろ?」
俺が言うとドラキュと言うやつはにらんできた。
「…………どういう意味だ餌のくせに」
「いや、そもそもヴァンパイアって別名吸血鬼とも言うんだけど真祖って自称するのが多いのよ。カーミラ、ドラキュラ、アルカート……アルカートは息子だっけか。その他にも神様の中でもいたしってか」
自称吸血鬼の真祖は俺を見て指をプルプル震わせている。
「お前あの時の!!」
何かすごい怒っているけど誰だ。
「変態ちゃんの友達? 友達いなさそうだもんね」
「うるせ! その言葉そっくり返すからな、アリシアもクィルも仕事仲間だろ? ミーティアお前の友達はどこにいるんだよ!?」
「ミーティアちゃん実家に帰ったら沢山友達いるし!!」
ミーティアの拳の先から炎が出始める。
それで殴ったら俺火傷するからね?
「こちらを無視するな! ええい! お前を倒すためだけに力を蓄え……迷宮と言う縛りを破壊し外に出たのだ!!」
だから誰。
外? 迷宮……迷宮ねぇ。
「あああああ! もしかして数年前に迷宮で倒した奴!?」
小さい冒険者ギルドで捜索願を出された冒険者を回収した時にいた迷宮ボスだ。
水の檻に閉じ込めて溺れさせて倒した、馬鹿な吸血鬼がいた。
その再生されるし、肝心の迷宮は立ち入り禁止になったし俺はもうその地方行ってないし忘れてた。
「懐かしいな。元気?」
俺は手を振るとドラキュのほうは下を向き始めた。
「震えるほど感動してるのか」
「変態ちゃん、違うと思うよ?」
「そうなの?」
「だって変態ちゃんを倒すとか今言ってたけど」
ああ、確かに言ってた。
「ってか。ここは師匠の家なんだけど師匠の代理でこれ以上ここにいるのならお前を倒す」
アンジュの剣を斜め下に構えた。
「ぬかせ!! この屋敷は代々ドラキュの物だ!! この真祖である私を怒らせたのはお前で2人目だ!! 今度こそ灰にしてやる!!」
「え?」
「どうだ。恐ろしくて声も出ないか!!」
ああ。そっか。
違和感がわかった。
師匠の家って聞いていたから変だなと思ったんだよ。綺麗すぎるし生活が便利すぎる。
階段に手すりはついてるし照明も自動、お湯は沸き続けるし、シーツだって洗濯したばっかりにみたいに。
師匠が生活していたならいくらゴミを燃やしたってもそりゃ汚いはずだし。
最近は綺麗にするように努力してるみたいだけど。
「さぁおとなしく眷属になれば命だけは助けてやる」
「いやそれもう命の意味ないからね?」
「交渉決裂だな、我が親衛隊よ! この馬鹿な人間を食い散らかせ!!」
ドラキュが命令すると、声だけが玄関ホールに響き渡る。
俺もミーティアも警戒しながら周りを見る。
「我が親衛隊よ!! 呼びかけに答えろ!! 親衛隊隊長ブルー」
俺もミーティアもその親衛隊がどこから来るのか待ってみた。
が、来ない。
ミーティアが俺の横腹を突いた。
「何?」
「変態ちゃん、親衛隊ってあれかな?」
「どれ?」
「最初に襲って来たので青い鎧を着たのがいたんだけど……」
ミーティアが指を差した方向には壁に埋まった青鎧が見えた。
胸の所に大きな穴が開いていて必死で壁から出ようとしてるが手足も破損しており埋もれて出れないようだ。
「おーい! ドラキュ、親衛隊ってあれ? って聞いてるけど」
「む!? うおおおおおおおお!? 我が血を分けた親衛隊隊長ブルーが!!」
あっミーティアの言う通りアレが親衛隊隊長なんだ。




