第314話 欲情なんてしない! しない!
「ねーねーねーねー」
うるさい。
ってか俺は姉ちゃんでもないし男だ。と煩いミーティアに言いたい。
でも、こういう時は無視するのが一番話が早く済む。
ミーティアだって子供じゃないんだ、18歳ぐらいだよ? もっと大人びていいとおもんだけどなぁ。
アリシアが18歳ぐらいの時ってもっと清楚で可愛かった。
「うっ!」
無視していたら背中からジャンプでおぶさって来た。
はぁ……これが師匠だったら嬉しいが。
「ねーねーねーねーねー」
「俺は猫じゃない。わかったから話聞く、聞くから何?」
「アリ姉ちゃんがね。クロウ君1人じゃ心配だからついてけって」
「そのアリシアに伝えてきてくれ。俺は1人で大丈夫だからって」
即答で返す。
初めのてのお使いじゃないんだから、しかも大人である俺が使いするのを、子供以下のミーティアが見守るっておかしいだろ。
「連れてってよー! アリ姉ちゃん怒ると怖いの知ってるでしょ?」
「知ってるよ。でも怒られるのは俺じゃないし」
「変態ちゃんが連れて行かなかったって言ったら、追いかけて怒るんじゃないの?」
「………………なんと!」
ありうる。
あのアリシアだ、聖女と言う権限使って追いかけて怒ってきそうだ。
たまに暴走するしな。
「へくちっ」
可愛らしいくしゃみが聞こえ、思わず体を向けるとアリシアがハンカチで鼻を押さえていた。
「アリシア!?」
「アリ姉ちゃん!?」
「ごめんね。風邪かな? 風邪は魔法では治らないからこまるんだよね……あっごめんね、クロウ君に言い忘れていた話あって走ってきちゃった。あのねお願いがあるの、聞いてくれないかな?」
下から見上げるように言うポーズ。
やっぱ可愛いんだよなぁアリシアって……じゃなくて!
あのアリシアが俺にお願い。とか……自分自身が死にそうになっても魔力が無くなっても魔物に襲われても。クウガと戦う事になってもお願いをしてこなかったアリシアが、《《正式に俺にお願い》》と言って来る。
「いいよ」
「もちろん断ってもいいんだけど、ミーティアちゃん連れて行ってくれるかな? 途中まででもいいか──」
もちろん即答だ。
喋りかけていたアリシアが固まるほど早く言う。
「いいの!? まだ私は何も理由言ってないよ!?」
「へきゅ。ミーティアちゃんの時と全然態度違う!!」
耳元で声がうるさい。
そりゃそうだろう。義妹ポシションのサブヒロインと正ヒロインの差は大きい。
「俺がアリシアの願い事断わる事ないでしょ」
「優しいね。クウガ君なんていつも断わるよ?」
「ほうほうほう」
「クウ兄ちゃん料理当番の時も何も手伝わないもんねー」
亭主関白に釣った魚に餌は上げないってやつか。
だから幼馴染ルート入らないんだよ……今度あったら説教……は辞めとくか。
クウガが何かに目覚めてアリシアに迷惑かけても困るしな。
「ミーティアちゃんっていつも私達と一緒だったでしょ? あの……他の冒険者さんと組んだ事なくて、ほら私は聖女で最近は忙しく、クウガ君もお城でいないしクィルさんも街を離れたし……」
「ああ。ぼっちなのか」
俺が正解を言うと耳にが引っ張られる。
「ミーティアちゃんはぼっちじゃ──」
「馬鹿! いてええ! 取れるとれ……あっ」
「あっ」
「あっ………………」
3人の『あっ』が同時になると、ミーティアが何かを落とした。
うん。耳に見える。
「いああああああいてええええええ!」
「ハイリザレクション!!」
拾った耳を傷口にあてアリシアが回復魔法をかけてくれた。
「ご、ごめんなさい」
「そこは謝れるんだな…………アリシアもありがとうな。俺の再生って命の危機に陥った時は凄いみたいんだけど骨折とか深爪とかは普通にダメージ残るのよ」
「うん。知ってるよ」
ああ、そういえば俺の心臓取り出したのもアリシアか。
じゃぁ知ってるか。
「ミーティアちゃん……」
「うう、アリ姉ちゃん怒らないで! わざとじゃないの!!」
「わざとで合ってたまるか」
「クロウ君に他の冒険者さんと一緒でも大丈夫か、もしくは1人でも大丈夫か確認してほしいかなって、先生を迎えに行くんだよね」
ゲームクリア後のミーティアは孤児院でドジっ子お姉ちゃんとしてクウガとアリシアを支えるんだけどな。
今のミーティアはただの貧乳狂暴お漏らしドジっ子だ。
「仕方がない……途中で捨てていいなら」
「ミーティアちゃん捨てられる!?」
「うん。しょうがないね、捨てるまででいいから」
「アリ姉ちゃんまで!?」
耳元でミーティアのツッコミが飛ぶ。と、いうかアリシアもなかなかに毒舌だ。
俺とアリシアは握手をすると、教会から来たシスターが走って来た。
アリシアにかけより、聖女のなんちゃらかんちゃらと頼み込んでいるのが聞こえてきた。
仕事だろう。
「見送りたいけど……」
「いいって。その無理はするなよ?」
「うん。ありがとう」
アリシアを見送って馬の放牧場所に残ったのは俺とミーティア。
ってかだ。
おかしくないか?
間違っても俺は男でミーティアは女だ。
それを2人っきりで旅させるって、いくら師匠に合うまで短いからっていってもだ。
「難しい顔してる」
馬を借りて俺が乗り前にミーティアを乗せる。
そのまま指定された転移の門の場所まで行く事半日。
途中で何もない場所に馬を止めさらに歩く。
「変態ちゃん怖いんだけど」
「大丈夫だ俺も怖い」
だって周りは薄暗い森の中。
魔物の気配は一切なくそれが逆に怖い、途中でフクロウのような声が聞こえると鳥が羽ばたく音が一斉に聞こえたりする。
ちびるよ。
「ってか腕にしがみつくな。これか……結界を解くから離れて」
「はーい」
ミーティアが離れて師匠Bからもらったメモ通りに歩く。
森全体が迷いの森になっており一定の手順を踏まないと先に進めないようだ。
正直道に迷いそう、だから迷いの森なんだろうけど。
その手順を踏んだ最後に突然に俺達の前に朽ち果てた洋館が出てきた。
「まるでゾンビ映画だな」
「えいが?」
「いや、何でもない。とりあえずここで一泊して移動は明日、夜中に動きたくないだろ? 中の物は好きに使って良いらしいから」
「はーい」
ミーティアが叫ぶとさっさと森の中に入って行く。
死亡フラグなんだよな。




