第301話 緊急会議と特訓相手集合
「第1回現状報告と大会に向けての作戦会議ー!」
俺が宣言すると、アリシアもミーティアも拍手で答えてくれた。
場所は教会にある個室。
アリシアが司祭から借りてくれて俺が司会役。
ミーティアはなぜかついてきた。まぁ関係者でもあるしいてもいいか。
「まず、アリシアの唇を奪ったクウガは、クウガであってクウガじゃありません!」
「ぎょええええええ! クウ兄ちゃん、強引すぎるよ!?」
「はい、ミーティア減点1。だからこっちのクウガじゃないって言ってるだろ。並行世界のクウガであって……なぜか俺を恨んでいるらしく殺しに来た」
俺が説明すると、アリシアは「そうなんだ」と言って。
ミーティアは「そうなんだ?」と疑問形だ。
馬鹿な女の子ほどかわいい。って言うけど馬鹿すぎるのはちょっとな。
「む! ミーティアちゃん残念な目で見られるっぽい!?」
「見てるからな。さて話を続ける。まぁ俺もクウガの1人や2人退治してもいいんだけど」
「クロウ君は優しいからね」
優しくはない。
本当に優しかったらアリシアを振らないだろうし、優しいのはアリシアだ。
俺の事を好きだって言ってくれたのに、その後もこうして付き合いがある。
余計に俺は俺の幸せをつかまないとアリシアに悪い。
「はいはーい! 変態ちゃん質問!」
「はいどうぞ」
「クウ兄ちゃんが今この世界に2人いるって事だよね?」
指を折りながら聞いて来る、俺の説明を聞いていたら2人だな。
あんなクウガが3人も4人もいたら俺は本気で斬ってる…………かもしれん。
「そうだな」
「1人欲しい!!」
「ん?」
「だってクウ兄ちゃん。他の女性ばっかりと付き合うし、ねぇ大事に育てるから。好き嫌いも言わないし、雨降ったら小屋にもいれるから!」
あいつは犬か。
「ミーティアちゃんダメだよ? 別世界のクウガ君は帰る場所があるからね」
「えーでも! そうだアリ姉ちゃん半分こしようよ」
あいつはケーキか何かかな?
「私はいらないかなぁ……クウガ君とは幼馴染なだけだし」
「ほら……もうアリ姉ちゃんの幸せってなんなのさ!」
あっそれは俺も聞きたい。
あえて口で突っ込まず黙って聞いてる。
「皆の幸せだよ? 並行世界……そっちにいる私の幸せはわからないけど。この世界にいる私は皆が幸せになるのがいいと思ってる。夢物語なのはわかってる、だから手の届く範囲を精一杯回復するの」
「あーなにかごめん」
「何で謝るのかな? 謝るぐらいなら先生との子供を早くみたいかも」
「善処します」
アリシアが口には出してないけど、俺の相手が師匠だから手を引いた。と言ってるようだ。
ミーティアがアリシアと俺の顔を交互に見ては、何かを察知して声を出していない。
「なんで、変態ちゃんとメルさんの子供の話が出てくるの!?」
あっ、たんに空気が読めてないだけだった。
「なんでだろうな。さて話をつづけるぞ。並行世界から来たクウガなんだけど面倒なのでクウガBと呼ぶ、そのクウガBの後ろにいるのが師匠Bなんだこれが。師匠Bは色々省くけど俺の首を持って帰りたいって、サイコパスかな? 師匠VS師匠B それと、俺VSクウガB という構図が出来るわけだ」
黒板にチョークで分かりやすく書いていく。
「で。俺は戦う交換条件として武術大会でなら剣を交える。って約束をして今に至るわけだ。ちなみにアリシアを呼び戻せって言ったのは師匠で、その師匠は現在行方不明、何か質問は?」
「ん---事情はわかった。先生が私を呼んだって事はそういう事なのかな」
「どういう意味で?」
「特訓だよ!」
はい?
アリシアは椅子から立ち上がり俺に指をさしている。
ミーティアですら呆気に取られてる顔だ。
「だから特訓だよ! 本番でクロウ君が負けたら大変だもん。私はクロウ君の傷をいくらでも治せるし特訓」
「アリ姉ちゃん嬉しそう……」
「俺の相手いないけど?」
自慢じゃないけど、友達もいない。
だって冒険者ギルドに登録してないから友達なんてできることはない。
いっその事、冒険者ギルドに『友達募集』の依頼を出してもいいぐらいにいない。
「はいはいはいはいー!」
「却下」
「まだミーティアちゃん何も言ってないんですけどー!!」
「どうせ、ミーティア自身が相手っていうんだろ?」
「違うよ! ミーティア変態ちゃんの相手呼んで来る!!」
席を立ちあがって突然部屋から出ていった。
「…………誰を?」
しばらく開けられた扉を見たがミーティアは帰ってくる様子はない。
アリシアがそっと席を立つと扉を閉めて座りなおした。
「誰だろうね……で、クロウ君は並行世界のクウガ君になんで殺されるほど恨まれてるの?」
「何だでだろうな」
「こっち見てくれるかな?」
う。
圧がすごい。
「はぁ……いや、並行世界の俺って実はもう死んでるんだ」
「え!?」
「で、結構馬鹿な性格でさ……アリシアを強引に襲おうとしてクウガ達に殺されるわけだ。で、ちょっとした事情があって並行世界に俺が迷い込んだ事があって……その結果こうなった」
近くのテーブルに座ってアリシアに話すと、アリシアは黙って話を聞いてくれた。
「クロウ君らしいかな」
「真面目な話をすると、アリシア……クウガの事は『まだ』好きじゃないのか?」
「幼馴染としてだけだよ? きっと並行世界の私はクウガ君の事が好きなんだろうね」
だろうな。
正史ルートで動いてるはずだ。
「あれ?」
「どうしたの?」
「いや……何か聞こえないか? 笛というか」
「何も聞こえないけど……あっ!!!」
アリシアが驚いたので俺はアリシアを凝視した。
「な、なに!? 緊張してもらした?」
「…………クロウ君?」
圧がすごい。
「もう、わざと嫌われるような事しなくてもいいのに。ミーティアちゃんが呼びに行った相手わかったかも」
「そうなの? あまり変な奴とは戦いたくないけど……」
俺が感想を言うと扉が開いた。
「たっだいまー!! 呼んできたよーーミーティアちゃん大天才!」
うるさいのが帰って来た。
「うるさ! 呼んできたって誰をだよ」
「僕だよ……困った事があったら、いや緊急時には『笛を使って呼んでくれ』って言ったよ? 言ったけど、君の特訓相手で呼ばれるとは僕も安く見られたものだよ。これでも古代の竜の血を引いてるんだし、世の中が間違っていたら竜の王だよ?」
竜人であり今は人型のナイがげっそりとした顔で部屋に入ってくる。
「なんだ、ナイか」
「ひどくないか君? こうみえて最近は魔力の変動がおかしい日が続いて調査もしてるのに」
「じゃぁ帰っていいよ」
「じゃぁ帰るよ」
お帰りはあちらへ。と俺は手をむけて、ナイのほうも欠伸をしながら軽く手を振り廊下に出ようとする。
「2人とも、本当に帰るのかな?」
アリシアの声色はとても綺麗で優しいのに見えない怒りが見えそうだ。
「びえええ! アリ姉ちゃん怒ってる!?」
「ううん。怒ってないよ? でもこれほどの好条件なのにどうしてクロウ君はナイ君を帰すのかなって? でナイ君はどうして呼ばれたのに用事をしないで帰るのかなって、聞いてみたの」
怖い。
「やだな。冗談だって、なぁナイ」
「当り前じゃないか! 竜の笛で呼ばれたんだ。呼ばれたからには依頼を受けるよ」




