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負け悪役貴族に転生した俺は推しキャラである師匠を攻略したい  作者: えん@雑記


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第287話 変態ちゃんの部屋? 昨日は静かだったけど? (ミーティアの感想

 目が覚め柔軟体操や魔力のチェックをして部屋を出る。

 共同洗面所は空いていて俺以外がいない。

 顔を洗っていると、突然に肩を叩かれた、そのショックで俺の指が滑って危うく目玉に突っ込み失明する所に。



「馬鹿! あぶねええ!」

「おは……うえええ! ミーティアちゃん挨拶しただけで怒られた!?」

「怒られた!? じゃねえ。指が滑って目玉に入りそうだったの! 気を付けてよね!」

「なんで女喋り……それよりもメルさん知らない?」

「………………知らない。部屋で寝てるんじゃない? 俺はさっき起きたばっかりだしもう全くもって知らない」



 その……言えるわけがない。《《なんだかんだで師匠は俺の部屋で一晩泊まっていた》》なんて。

 起きたらいなかったけど。


 それに目の前には一番知られたくない奴が師匠を探している。


 だってミーティアは歩く拡声器だよ。


 ちょっと世間話で俺が教会の食事がしょっぱい。って言ったら翌日に見習いシスターが泣きながら「聖女様のお連れ様に、食べれないほどのしょっぱい料理を食べさせて申し訳ありませんでした」と謝りに来て、それを知ったアリシアが俺に注意してくる始末だ。


 話がどんどん膨れ上がってひどい事になる。



「えー! でも《《昨日の夜、メルさん部屋》》にいなかったよ!?」

「…………そ、外にでも出てたんじゃない?」

「む、怪しい……何か知って──」

「何が? ええっとタオルタオル。あったあった。何が怪しい? まったく怪しくない」

「だって普段ならメルさんがいなかったら凄い騒ぐじゃん」

「ソンナコトナイヨ」



 ミーティアが腕を組んで唸っていると手を叩いて俺を見る。



「わかった! メルさん、ミーティアちゃんたちに内緒でダイエットだ!」

「ふぅ馬鹿でよかった」

「む!? ド変態ちゃん何か言った?」

「何にも? まぁあれで《《師匠そこそこ重いし》》──」

「重くて悪かったのじゃ!」

「うおお!?」



 突然に師匠の声がしたので思わず叫んでしまった。

 タオルで顔を拭いていたから気づかなかった。



「…………えっと、おはようございます」

「…………おはようなのじゃ。ちょっと軽く走って来て風呂屋に行った所じゃ」

「そ、そう」



 俺も師匠も視線を合わせない。



「メルさん! セッケンのいい匂い! ミーティアちゃんも誘ってほしかった……そうだ。今日も暇ですよね!? 昨日言っていたクエスト手伝って。ミーティアちゃん一生のお願い!」

「はぁ……お主の一生は何度あるんじゃ」



 ミーティアは手を開いては指を折っていく。

 何度も『一生のお願い』を使ってるのだろう、普通そんなに一生は無いからね!?



「まぁいいじゃろ。魔導書探しじゃったな……ワラワも興味がある。ドアホウ」

「な、なんでしょう」

「ドアホウへの客人がベルフォートの宿に泊まってるぞ」



 それだけ言うと師匠とミーティアは共同洗面所から出ていく。

 え、いや……誰か言ってよ。

 ベイフォートの宿と言えば帝都の正門前ある大きな宿で高くて有名な所だ。


 もちろんサービスもいい。

 朝と晩はビッフェタイプで夜は演奏会などついていたりもする。


 と、まぁそんな宿なんだけどそこに泊まるような知り合いは思いつかない。

 ここまで来るのに貴族の人間は何人か知り合ったけど貴族はもっと高い所に行く……あくまでベイフォートの宿は庶民から中級の人間が泊まる宿なのだ。


 ミーティアも師匠もいなくなり、アリシアはお城に行った。


 教会に残っていても、この3人がいないと新米シスターからベテラン神父までめちゃくちゃに気を使って来る。

 喉渇いてませんか? とか、肩もみましょうか。ぐらいならまだいい。


 こっそり新米シスターはあちらの部屋で寝ているはずです。までささやいて来るやつまで。


 俺が冗談で『クウガじゃないんだし』って言うと『知っておられましたか!』と意味深な答えが返って来た事もある。

 年配の神父さんに『外出する』と短く言って街へと出た。


 昨日の内に帝国で武術大会再開のお知らせが発表され、少し街に活気があるようにもみえる。


 1時間ぐらい歩き問題の宿に着いた。

 カウンターに行くと笑顔で出迎えてくれる主人。



「いや、泊まりじゃないんだ……ええっと、クロウベル・スタン。俺に会いたいって人物が泊まってるとか聞いて」

「おや……貴方様でしたか。奥の部屋でお待ちを」



 言われるままに奥の部屋へと行くと、呼んできます。と主人が出ていった。

 高級そうな壺や皿を手にとっては戻し時間をつぶすと扉があく。



「おおおお! 元気そうだな!!」



 つるっぱげの初老のおっさんが俺を見ては笑顔を見せる。

 正直見たくない顔だ。



「申し訳ございませんでした!」



 俺はとりあえず土下座する。

 目の前にいた《《サンドベル・スタン》》の驚いた声が聞こえた。



「何をしている?」

「何って俺を怒りに来たんじゃ……」

「なぜだ?」

「いや、黙って勘当されたから」



 そう。

 スゴウベル経由で俺が勘当されたのは手紙で知らせた。

 が、俺の口から父であるサンドベル・スタンに家を出ます。と言った事はない。



「そんな理由で呼ばんわ! なぜならワシもお前に黙って家督をスゴウベルに譲ったしな」

「確かに! 普通兄弟でもめますもんね」



 俺も土下座をやめてさっさと椅子に座った。

 土下座して損した気分だ。



「お前はスゴウベルが領主になっても不満あげる気配なかったし、なんだったら外に出ようと訓練していた事も知ってる」

「なんで!? ああ……アンジュか」



 サンドベルの顔がちょっとゆがむ。



「もしかして俺がアンジュの事をアンジュって呼んだから怒ってる?」

「お、怒っておらんわ!!」

「めっちゃ怒ってるじゃん」

「少しばかり腕が立つと思って生意気な口を!!」

「俺がアンジュの事をアンジュさんって呼んだら気持ち悪いでしょ?」

「むむむむむ! このサンドベル。いまだ剣の腕は鈍ってはおらぬ!!」



 サンドベルが腰にある剣を抜きそうになるので、俺も剣を──。



「何してるんですか」

「あばー」



 女性の声と赤ん坊の声が聞こえた。

 振り返ると、アンジュで腕の中には赤ん坊を抱いている。



「え……アンジュ?」

「そうですが?」

「なんでメイド服!?」



 今日もメイド服が似合ってるね。

 じゃなくて、この場所でメイド服はもう意味がないだろ。



「メイドと言えばアンジュ。アンジュと言えばメイドですので」

「意味が分からん……もしかして服買うお金もない!? 父に代わって出そうか?」

「…………あります」



 俺が仕事も辞めたんだしメイド服は変でしょ。と、言おうとすると左手に光る物を発見した。



「指輪」

「気づかれましたか!? さすがクロウベル様です」

「いや、思いっきり見せつけてたよね。え?」



 慌ててサンドベルのほうを見ると横を向かれた。



「結婚した!?」

「いえ。してません」



 俺は危うくこける所だった。

 この流れは普通してるだろ。



「ワシもするって言ったのだが、頑なに拒んでな。たが指輪だけは受け取ってもらった」

「そう……まぁアンジュが良いなら良いけど……」



 俺に指輪を見せたアンジュは幸せそうなのでいいか。

 小部屋でそれぞれ座り話を聞く。



「アンジュじゃないがワシも王国軍を辞め旅行中だ、そしたら街中でメル殿を見つけてな……お前が近くにいるんじゃないかと思って聞いてみた所だ」

「流石はクロウベル様です。旅の途中で道中聖騎士部隊の副隊長様やとある場所でのヴァンパイア退治。一時は行方不明でしたのに」



 行方不明になった覚えはないが世間では1年たってたやつだ。



「それに、今度の武術大会に出るんだろ?」

「どこでそれを?」

「メル殿が言っていたが、出ないのか?」

「流石はクロウベル様です」

「あっそうだ! 俺はキエサリ草が欲しいだけで別に大会は興味ないんだけど……どこまで手に入ったりしない?」



 もう、こっちで手に入れば大会には出ない。



「懐かしいな。ワシも若いころはキエサリ草を使ってソニアに特別なイタズラをしてな、それをカナデに見つかり3人で──」

「スゴウベル様。その話初耳なんですが……あっ指輪お返しします」

「ち、違うんだアンジュ!! 行かないでくれ!!」



 どうして俺の家系の男はこうもスケベなんだ。

 父であるサンドベルは、必死にアンジュの腰にしがみつく。



「クロウベル様が真似しますので変な事はしないでください!」




 反応に困る。

 まったく同じことを俺は師匠にしてるからだ。 


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