第285話 クロウベルの時代来る。すぐ終わる。
色々決まった後、アリシアの善意で教会に泊まった俺は深夜師匠の部屋にこっそりと行く。
と、いうのも『話があるから暇な時に部屋に来いなのじゃ』とお呼ばれしたから。
いよいよ俺の時代が来たかもしれない、そう師匠とのいろんな意味でのイチャイチャの時間だ。
部屋をノックして体を滑り込ませる。
「お待たせしました!」
「遅い……後声が大きいのじゃ!」
薄い寝間姿にガウンを羽織ってる師匠はもう見てるだけで俺が興奮する。
もう、師匠ったらそんな明るい時間から俺を待っていたんですか?
「適当に座れなのじゃ」
「では」
俺は師匠の隣に座った。
肩を回せばそのまま押し倒せる距離だ。
「話にくく無いのじゃ? まぁドアホウがいいならいいのじゃが……で、『祈りの指輪』とは何じゃ? この世に存在しないはずじゃぞ」
「…………あっそっち?」
まぁ冷静に考えるとそうだよね。
でもさぁ。
数日前に『ダンジョンを出たら誘ってOK』みたいなサイン出していたじゃん。
色々終わって夜に部屋に来いって言ったら俺でもそりゃ期待するよ。
「そっちとはなのじゃ?」
「いえ。やっぱり話つらいので座る場所変えますね」
俺の一人暴走で師匠なんて全然その気が無いのが伝わってくる。
「うむ。どうせワラワの匂いを嗅ぐとかそんな事じゃろと思ったのじゃが」
もっと先の事でしたけどねー!
と、は口に出さない。
ここで師匠を怒らせると二度と関係もてなくなりそうだし。
「ええっと、俺も詳しく知らないんですけどエルフ……じゃなくて長寿族の里ってのがあるらしいんですよ。そこに行くのに結界を通るんですけどキエサリ草で結界を通るとかなんとか」
「祈りの指輪の効果はなんじゃ?」
「基本的には魔力回復何ですけど、1歩歩く事に1回復みたいな」
「常時吸収型の装備品じゃな。ワラワが思っている物と一緒であるのじゃ……問題はその製造方法じゃな」
「師匠不器用っすもんね」
魔力を扱うのはうまいくせに。ずぼらな性格故何もできない。
「ぬあ!?」
「いや、そこが可愛くていいと思うんですけど」
「………………ふん」
師匠が横を向いて怒ってしまった。
「まぁまぁそう怒らずに」
「お、怒ってなど……いや怒った事にしておくのじゃ。そもそもワラワの同胞など滅多に会う事もない。ワラワはまだ完成品を見た事がないのじゃ」
レアアイテムだしなぁ。
一応データーとしてはある、ただどこかのゲームのパクリじゃね? って事で実装は後に回された感じだ。
「俺も耳が長い種族は師匠含め2人だけっすね」
1人はギースだ。
ヒーローズの町にいるらしいが元気かな、たまには顔でも見に行くか?
「昔は里はあった事もあるが1人減り2人減りで消えていく。その場所に行ってみたいのじゃが、その場所の地図はかけるのじゃ?」
この流れはまずい。
だって、師匠1人で行く来なパターンだ。
「ええっと、俺大会あるんですよね」
「知っとるのじゃ。だからワラワが1人で──」
「いーやーだー! 一緒に行きましょう! 一緒に!!」
「一緒に行く意味あるのじゃ?」
ド正論である。
そう、別に一緒に行く意味はない。
でもだ!
「そんな露骨に嫌な顔しないでほらタイミング合わせれば一緒に行けるでしょ!」
「ワラワに場所だけ教えてくれれば先に行くこ……む、誰か来てるのじゃ」
師匠の言葉が止まると部屋がノックされる。
俺が師匠の代わりに開けると眠そうなアリシアの顔が俺と部屋にいる師匠をみて「夜遅くごめんね」と、挨拶してきた。
「え、どうしたの? アリシアも部屋に入る?」
「ううん……クロウ君と先生の事だから大丈夫って説明したんだけど……他のシスターさんが興奮して私を起こしに来たの」
「なんで? あっごめん、うるさかった?」
「うーん皆には誤解だって説明しとくね」
アリシアは「じゃぁ先生にクロウ君、おやすみなさい」と言って扉を閉める。
別にうるさいってもそんな大きな声は出してな……あっ。
「師匠。この話は明日にしません?」
「なんでじゃ?」
「俺も少し眠いし。じゃっ」
慌てて部屋を出て行って与えられた部屋へと戻る。途中で少し開いていた他の部屋の扉が閉まった。
まぁそういう事だよね、俺達の言葉が悪かったに違いない。
それを説明する気にもならないので毛布をかぶって無理やり寝る事にした。
──
────
寝不足気味でも朝になったら起きるわけで、柔軟体操や魔力チェック、装備品のチェックなど行っては顔を洗いに部屋を出る。
何人かのシスターが俺を見ては赤面している事以外は別に変りない朝だ。
「変態ちゃんおはよー!」
「朝から元気だな……おはよう」
「どうしたの!? 寝不足なの!?」
「心配ありがとうよ、アリシアは?」
「先にご飯食べてお城いったよー、大会の打ち合わせ。ほら聖女が居ると怪我人出た時に対処とかなんとか?」
なるほど。
本当に力試しを目的とした大会なのか。
それであればアレキ皇子への味方を変えたほうがいいかもな。
てっきり虐殺まで込みの非道な見世物かと思ったがアリシアがいるなら死人は少ない。
「明確に殺しって表現なかったもんな」
「変態ちゃん朝から怖い事いう、それよりも昨夜はお楽しみでしたね!」
「……誰から聞いた?」
「えー誰からってミーティアちゃんの耳がきいたもん! すごかったよ、もう『イクとか』うげっ!」
「お前が犯人か!!」
俺が怒ると同時にミーティアの頭上に杖が降り注ぐ。
師匠が欠伸をしながらの攻撃だ。
「下らん事を広めるななのじゃ。ドアホウの知識で行ってみたい場所があっただけじゃ」
「夜の!?」
懲りないミーティアは再び頭を杖で叩かれる。
「びええええ! ミーティアの頭が悪くなる! 変態ちゃん頭にこぶ出来てない!?」
「ごめん、顔洗っていて手離せないわ、後元々悪いだろ」
「がーん! ミーティアちゃんに味方がいない」
自業自得だよ。
俺は俺で城下町で用意する物もあるし忙しい。
「師匠顔洗ったらデートしませんか?」
「しないのじゃ」
この即答である。
「ぷっくっくっく。ド変態ちゃん振られてるー」
「うるせ!」
「で、どこに行くのじゃ?」
っ!?
「少し訓練を」
「…………ふむ」
さすがに俺だって大会にでるんだったらちゃんと勝ち残りたい。ってかだ。
ここで『キエサリ草』が欲しいって皇子にお願いしてるのに1回戦はさすがに勝つとして2回戦で負けたら、今までの『祈りの指輪』の話はなんだったんだってなる。
さすがの俺も途中で負けたら帝国城に忍び込む覚悟で挑むし、帝国城に忍び込むって普通に考えると死罪扱いだからね。
「ようは魔法で相手を場外に飛ばせば、いいわけで師匠に少し魔法を見てもらおうかと」
なんてよい作戦だ。
「ド変態ちゃん……魔法の使用は制限されてるにょ」
「え?」




